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Carlisle
医療関連感染情報季刊誌より
Vol.1 No.2 May 1996

ナーシングホーム居住者の鼻腔黄色ブドウ球菌の完全除菌のためのムピロシン軟膏とクロルヘキシジン清拭併用効果

Watanakunakorn,C.,Axelson,C.,Bota,B.&Stahl,C.
XMupirocin ointment with and without chlorhexidine baths in the eradication of Staphylococcus aureus nasal carriage in nursing home residents.
Am.J.Infect.Control,23:306-309,1995.

ナーシングホームの居住者の中にはMRSAを含むS.aureusの鼻腔保菌者がおり、長期のMRSA保菌者では、しばしばS.aureus感染を呈することが見出される。さらにMRSA鼻腔保菌者は他の病院などに転院したとき、MRSA伝播者になりかねない。ここ数年、S.aureus鼻腔保菌者の根絶のため抗菌剤の全身的あるいは局所的療法が行われているが、効果の評価にへだたりが認められる。ムピロシン軟膏は鼻腔S.aureusの除菌に効果をあげているが、再増殖が生じることが知られている。そこで今回、ナーシングホームでのS.aureus鼻腔保菌者の根絶に、ムピロシン軟膏単独の効果とクロルヘキシンジン(CHG)全身清拭併用処置での効果を比較した。

2%ムピロシン軟膏はS.aureus保菌者の鼻前庭部および傷の開口部に1日2回5日間塗布した。CHG液はその最初の3日間、首から下の全身を、特に腋の下、鼠径部を注意深く清拭した。細菌培養は処置前と処置1日目、そして1、4、8、12週間後に行い検討した。ナーシングホーム4施設からのS.aureus鼻腔保菌率は平均28.2%(59人/209人)であった。治療対象となったムピロシン軟膏単独群27人、CHG併用群29人のうち、腋の下および鼠径部からのS.aureusの検出は処置前(0/27、3/27と0/29、2/29)でもごく僅かで、観察12週間中も両群に変化はほとんど認められなかった(0/25、0/25と併用群:0/27、2/27)。鼻腔保菌の除菌は両群ともに明らかに効果的であったが、処置後、再び検出例が生じ、12週間後でムピロシン単独群は24%(6人/25人、うち3例がMRSA)、CHG併用群で15%(4人/27人、うち3例はMRSA)となり、再検出率は両群とも低く、有意差は認められなかった。

以上の結果、ムピロシン軟膏の長期使用により耐性菌発現が考えられることから、短期使用が望ましい。多くの要素を加味した感染防御対策が、一般病院同様、長期療養型施設においてもMRSA感染防止のために明らかに必要である。(訳:仲川義人)

Carlisle Vol.1 No.2 p8-10 May 1996

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