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Carlisle
医療関連感染情報季刊誌より
Vol.4 No.2 Summer 1999

教育病院における手洗いの実施状況

Pittet,D. et al.
Compliance with handwashing in a teaching hospital
Ann. Intern.Med.,130:126-130,1999.

医療従事者の手指から微生物が伝播することは、病院における交差感染の主な原因であり、これは手洗いの実施で予防することが可能である。そこで本研究では、通常の患者ケア中に手洗いを行わない場合(noncompliance)の予測因子を特定することを目的とした。

1994年12月に、ジュネーブ大学病院の48病棟(総病床の70%を占有)で、20分間の直接観察による調査を実施した。

5名のICNがケア中の手洗いすべき場面とその実施状況について、看護婦(66%)、医師(10%)、看護助手(13%)、その他の医療従事者(11%)を対象に調査した。データは各病棟から24時間、無作為に収集し、複数の調査者による同時観察を実施して信頼性を確認した(κ=0.92)。分析にはロジスティック回帰分析を用いた。

観察された2,834回の手洗いすべき場面のうち、平均実施率(average compliance)は48%であった。多変量解析の結果では、非実施率(noncompliance)は看護婦よりも、医師(OR2.8[95%IC、1.9 to 4.1])、看護助手(OR1.3[95%IC、1.0 to 1.6])、その他の医療従事者(OR2.1[95%IC、1.4 to 3.2])の方が高かった。また、平日よりも週末の方が、非実施率は低かった(OR0.6[95%IC、0.4 to 0.8])。非実施率は、内科よりも外科(OR1.26[95%IC、1.0 to 1.6])やICU(OR2.0[95%IC、1.3 to 3.1])の方が高かった。処置の汚染リスクのレベル別では、非実施率は中等レベルの処置よりも高レベルの処置を実施していたときの方が高かった(OR1.8[95%IC、1.4 to 2.4])。また、ケアの密度が高い方が非実施率は高かった。すなわち、ケアの回数が1時間に20回以下の場合より、21-40回(OR1.3[95%IC、1.0 to 1.7])、41-60回(OR2.1[95%IC、1.5 to2.9])、61回以上(OR2.1[95%IC、1.3 to 3.5])であった方が非実施率は高かった。

本研究より手洗いの実施状況は中程度であることが判った。病棟や職種間を越えて調査したことで、焦点を絞った教育プログラムの有用性が示唆された。また、今回の観察データが因果関係を実証しないとしても、非実施率とケアの密度の関係は、医療従事者の配置不足が患者ケアの質を低下させている可能性があることを示唆した。

(訳:西岡みどり)

Carlisle Vol.4 No.2 p8-10 Summer 1999

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