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Carlisle
医療関連感染情報季刊誌より
Vol.5 No.1・2 Spring/Summer 2000

接触隔離対策の逆効果

Kithryn KB, Weinstein JM, et al..
Adverse effects of contact isolation.
Lancet, 354:1177-1178,1999.

接触隔離対策が広く普及し、CDCの推薦があるにもかかわらず、耐性菌による病院感染伝播予防における、手袋やガウン着用の効果についてはまだ良く判っていない。
そこで、医療従事者と患者の、接触の頻度と時間、手洗いの遵守状況について手袋やガウンを着用する隔離対策の効果を計測した。
調査は、米国、ノースカロライナ州のDuke University Medical Centerの内科集中治療室(medical ICU)で7ヵ月間実施された。このICUには、手洗い設備のある個室が16室ある。1時間単位で合計35時間の観察期間(接触隔離対策下の患者14時間、接触隔離にない対照患者21時間)中、1名の観察者が、接触隔離対策を適用しているかどうか、医療従事者の入室回数、患者や器具に医療従事者が直接接触したかどうか、手洗いをしたかどうか、いつ手洗いをしたか、ガウンや手袋を着用したかどうかについて記録した。有意性検定には、スチューデントのT検定とχ2検定を用いた。
219回の入室が記録され、うち117回(53%)に、患者との直接接触がみられた(平均3.3回/時)。患者に接触した医療従事者の60%は、接触前または接触後に、9%は接触前後に手洗いを実施していた。男女では差がなく、医師は他の職種と比べて手洗い頻度が少なかった。患者接触の前または後で手を洗っていたのは、医師では12回中、2回(17%)であったのに対して、他の職種では105回中、67回(64%)であった(p=0.003)。
接触隔離下の患者をケアしていた医療従事者の方が、対照患者をケアしていた医療従事者よりも手洗いを遵守していたが、そのほとんどが、患者接触後の実施であり、接触前の手洗い実施は2回のみであった。
ガウンと手袋の着用は、接触隔離下では90%であった。対照患者に手袋を着用していたのは88回中38回(43%)であった。これらの医療従事者は手袋を着用していない医療従事者の約2倍の頻度で手洗いを実施していた(RR2.1, 95%CI:1.3-3.3)。接触隔離下の患者では、対照患者と比べて、医療従事者の入室頻度が少ない傾向があり、直接接触頻度も有意に少ないものの、在室時間には差がなかった。
接触隔離患者の平均在院日数は46日であった。接触隔離対策遵守率を90%とすると、2,070枚のディスポーザブルガウンと4,140組のラテックス手袋が1名の入院中に使用されることになり、1入院患者あたり、約1,627USドル掛かる計算となる。しかし、何より、患者接触の後ではなく前に手洗いを実施することの方が、病院感染の伝播防止には効果的であるにもかかわらず、本研究の結果では117回の患者接触中15回しか実施されておらず、医療従事者は病院感染防止というよりもむしろ自己防衛の方策として手洗いをしていることが示唆された。
接触隔離下では訪室頻度が約半分であったが、濃密なケアが必要なICUでは、患者の精神面だけでなく、医療アウトカムへの悪影響が懸念される。
本研究の結果より、接触隔離対策は患者の予後へ悪影響を及ぼす可能性が示唆された。今後、接触隔離対策を適用することで、耐性菌による感染伝播防止における効果が、手洗いのみの場合とくらべてどのくらい増すかについて証明されるまでは、アウトブレイクの場合は別であるが、一律に適用することについて再検討すべきである。

(訳:西岡みどり)

Carlisle Vol.5 No.1・2 p8-10 Spring/Summer 2000

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