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Carlisle
医療関連感染情報季刊誌より
Vol.5 No.3 Autumn 2000

1999年リンドバーグ賞
3%過酸化水素による織物のグラム陽性菌の消毒

Neely, A. N and Maley, M. P,
THE 1999 LINDBERG AWARD
3% Hydrogen Peroxide for the Gram-Positive Disinfection of Fabrics
at 10 and 20℃.
J. Burn. Care Rehabil, 20:471-477,1999.

近年、多くの細菌で抗生剤に対して耐性化が進み、特に火傷・外傷病室でのグラム陽性多剤耐性菌であるVRE、MRSA、MRSEが問題となっている。これら細菌の制御は、抗生剤を使用した撲滅以上に接触感染制御や適切な環境消毒が大切であると考えられる。また、これらグラム陽性菌は乾燥状態でも長時間生存している。 そこで、さまざまな患者が出入りする院内または診察室にある織物の細菌汚染防止のため、利便性、安全性、経済性の面から1)適切な消毒剤の選択、2)常用織物への消毒剤噴霧によるグラム陽性菌に対する殺菌効果、3)実際に院内にあるカーテンなどで効果的な消毒ができるかどうかを検討した。環境に使用する消毒剤として、6種の消毒剤を検討したが、安価で、利便性があり、織物を脱色せず、しかも健康と可燃の危険がないことから、3%過酸化水素(HP)が選択された。この実験は、試験管内での実験と実際の病棟での実験の2つに分けて検討した。
 まず、実験室内では、抗生剤耐性菌を含む30株のグラム陽性菌(ブドウ球菌11種、腸球菌19種)を使用し、対象とした織物は、院内で常用されている 100%綿(衣類)、100%綿(タオル)、60%綿・40%ポリエステル混紡(病衣)、100%ポリエステル(カーテン)の4種類とした。各細菌(105~106CFU/10μL)は4種の織物に接種され、3%HP噴霧5分、10分、2時間経過後の残存菌を調べた。ブドウ球菌の11株は、3%HP 噴霧により10分で死滅したが、腸球菌は10分の接触で5株が綿に、5株は綿・ポリエステル混紡、5株はポリエステルに残存した。
 次に、実際に病室のカーテンを対象に、11病室の仕切カーテンの高さの異なる場所、2ヵ所(床から2mと1.3m)から菌を採取したところ、さまざまなグラム陽性、陰性菌が検出されたが、ほとんどが1.3mの高さからで、患者やスタッフが接触すると思われる部分に局在していることが明らかとなった。これらの接触部分に3%HPを濡れるまで噴霧し、2時間後乾燥したカーテンからは、全く細菌が検出されなかった。これらの結果から、火傷センターや他のヘルスケア機関などの臨床の場で3% HPによる消毒は、直ちに適用できるものと考えられた。

(訳:白石 正)

Carlisle Vol.5 No.3 p8-10 Autumn 2000

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