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Carlisle
医療関連感染情報季刊誌より
Vol.5 No.4 Winter 2001

保健医療スタッフによる手洗いの遵守
使いやすいアルコール基剤擦式消毒剤の導入効果

W. E. Bischoff, et al.
Handwashing Compliance by Health Care Workers. The Impact of Introducing an Accessible, Alcohol-Based Hand Antiseptic.
Arch Intern Med., 160:1017-1021,2000.

病院感染防止における手洗いの重要性は、多くの感染防止ガイドラインに記載されているが(3~5mLの消毒液を10~15秒間使用)、保健医療スタッフによる手洗いの遵守は、残念ながら低いことが指摘されている。日常業務中の手洗い実施の改善には、スタッフの手洗い行動の変化や使用しやすい手指消毒器の提供にあると考える。そこで今回、728床の第三次医療と教育施設を有しているバージニア医科大学病院で、1997年7月1日~12月31日の間に内科 ICU(MICU:12床)、心臓外科ICU(CSICU:10床)、一般内科病棟(27床)で手洗い状況の調査を実施した。
 120時間以上の監視の結果、手洗い回数は1,575回であった。MICUスタッフの手洗い割合は、患者ケア前10%、ケア後22%、CSICUでは患者ケア前4%、ケア後13%で、これらのスタッフに手洗い遵守の教育を行った後でも、手洗い実施率に著明な改善は認められなかった。しかし、MICUにおいて60%アルコールゲル剤の擦式消毒剤(ABHA:Purell, Gojo Industries, Akron, Ohio)を導入した後では、手洗いの実施が有意に増加した。すなわち、4床に1個(4:1)のABHA手指消毒器を設置した場合、患者ケア前19%、ケア後41%、1床に1個(1:1)のABHA手指消毒器の設置では、患者ケア前23%、ケア後48%であった。手洗い実施は、患者と接する前では職種間に差はなかったが(看護婦・その他9%、医師13%)、患者と接した後では医師の手洗い率が高かった(看護婦・その他16%、医師46%)。しかし、医師が手洗いを実施する機会は全体の約5%であった。
 石鹸、クロルヘキシジン(CHG)、ABHAの使用状況の調査では期間中、298,884回の手指消毒器が使用され、MICUスタッフの使用回数は、石鹸126回、CHG17回、CSICUでは石鹸109回、一般内科病棟では石鹸34回、CHG4回であった。手洗い教育介入後では、MICUの使用回数は増加したが、CSICUおよび一般内科病棟では低下した。ABHAの紹介により、手指消毒回数は増加したが、4:1および1:1ディスペンサーの違いによる全体の手洗い回数には差が認められなかった。しかし、使用回数の頻度は、4:1で石鹸75%、CHG11%、ABHA14%。1:1では石鹸68%、 CHG6%、ABHA26%(p<0.05)であった。
 また、一般内科病棟の全患者に手洗いの重要性を知らせ、6週間観察したが、患者の認識に変化は認められなかった。手洗い教育と患者認識プログラムは、手洗い励行の改善にならなかったが、簡便なABHAの導入は医療スタッフの間で、有意に高い手洗い効果を示した。

(訳:白石 正)

Carlisle Vol.5 No.4 p8-10 Winter 2001

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