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Carlisle
医療関連感染情報季刊誌より
Vol.6 No.4 Winter 2002

優先研究課題プロジェクト:2000
これからの感染制御と病院疫学の方向性の確立

Lynch, P., Jackson, M., Saint, S.
Research priorities project, year 2000:Establishing a direction for infection control and hospital epidemiology.
Am J. Infect. Control, 29(3):73-78, 2001.

感染制御の分野は、病院のみならずナーシングホームなど病院以外の医療施設での感染対策にまで広がっており、重要性が増している。1990年に、 APIC(Association for Professionals in Infection Control and Epidemiology)は、APIC研究財団として感染制御や病院疫学についての研究や教育を行うための財団を設置したが、最近、ヘルスケア関連の合併症を予防するための調査財団に名前が変更された。

本研究の目的は、この新しい財団がどのような方向性を持ち、優先的に研究していくべきかを調査することであり、Delphi technique*を用い、50人の専門家に対して3回の調査が行われた。

第1回の調査では、102の項目があげられ、調査をくりかえすことにより、第3回の調査で21の優先研究課題にしぼられ、これらに順位づけがなされた。さらに第4回APIC会議の出席者に対し同じ質問がなされ、21の優先研究課題に対し新たに順位づけがなされた。50人の専門家の大部分が、医師で占められているのに対し、会議の出席者は、看護婦が多数含まれていた。

会議において上位に挙げられたのは、標準予防策など感染対策に関するコンプライアンスの改善、抗生物質の使用や、耐性菌の管理の改善に関する研究、感染制御に介入する価値と経済効果の評価、感染症サーベイランスの実施などであった。そのなかで、感染率の低下に効果的な感染予防および感染管理プログラムと医療施設におけるスタッフの配置における大切な要素を特定し実行する、という内容が、専門家のランクでは第6位にランクされていたが、会議においては1位に選ばれた。

これらの結果を踏まえ、最も重要な優先研究は(1)感染予防への介入による経済効果の評価、(2)抗生物質の使用や耐性菌の管理の改善に関する研究、(3)感染対策に関するコンプライアンスの改善、(4)入院だけでなく外来患者に対する医療まで広げた病院感染におけるサーベイランスの実施、(5)人工呼吸器などが原因となる肺炎など特定の部位における感染予防対策の評価とした。

(訳:山本仁美)

*Delphi technique:一定の課題について、専門家の見解を集約するための質問調査方法の一つで、まず1回目の質問調査を行い、その結果を示した上で再度同じ質問調査をくりかえすことにより、軌道修正を行う。不確定要素の多い事項の調査に利用されることが多い。(南山堂;医学大辞典、1998より引用)

Carlisle Vol.6 No.4 p8-10 Winter 2002

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