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UK Update
イギリス(HPA-HPRより)
2002/05/16

英国におけるバンコマイシン低感受性黄色ブドウ球菌

PHLS. CDR Weekly May 16, 2002; 12:20.
Staphylococcus aureus with reduced susceptibility to vancomycinの要旨
http://www.hpa.org.uk/cdr/PDFfiles/2002/cdr2002.pdf

46才の長期重篤な血管炎および腎移植患者からglycopeptide-intermediate Staphylococcus aureus(GISA)が分離された。これまでスコットランドとブリストルにおいてヘテロ耐性GISAの分離例はあったがイングランドでGISAが分離されたのは初めてである。この患者の症状は執拗なMRSA菌血症であり、日常的なディスクディフュージョンテストにおいてはバンコマイシン感受性が示され、バンコマイシンの単独投与を受けていたが、ゲンタマイシンとリファンピシンの追加投与を受けてはじめて血液培養陰性となった。しかし敗血症状は消えず、分離株がGISAと判明してリネゾリド、ゲンタマイシン、リファンピシンの3剤投与を受けた後快方にむかった。この間GISAに対する伝播予防策が取られ、患者は陰圧個室に隔離された。その後患者は死亡したが死因は感染症ではなかった。すべての患者と医療従事者がスクリーニングを受けたが、バンコマイシン低感受性黄色ブドウ球菌は検出されなかった。

<訳註>
GISAまたはVISAはこれまでに日本、米国、フランス、英国、ドイツで分離報告がありましたが、本報告はPHLSがGISAと確認したものとしてイングランドではじめての分離報告です。ヘテロ耐性GISAについてはさらに多くの分離がスペイン、香港、ギリシャ、エジプトなどからを含め報告されていますが、その臨床的な意義についてはいくつか異なる見解が示されています。
またGISAの試験方法や判定基準についても諸説がありますが、この報告は臨床的な難治症状を考慮して米国より低めのブレイクポイント(resistant MIC=>8mg/L)を規定した英国化学療法学会の基準を支持しています。米国のNCCLSおよび日本における判定基準はintermediate MIC=8~16 mg/L, resistant MIC=>32mg/Lであり、この判定基準に従いこれまでに分離された低感受性株はすべてVRSAではなくVISAまたはGISAと呼ぶことが一般的です。なお腸球菌において検出されているバンコマイシン耐性遺伝子、vanAvanBvanCは未だGISAから検出されていませんが、これらの遺伝子、特に高度耐性をもたらすvanAが黄色ブドウ球菌に伝播する可能性について憂慮が表明されています。バンコマイシン療法において難治なMRSA患者の場合にはGISAの検出感度が高い感受性検査法の適用を考慮します。
なおGISA患者について陰圧個室隔離が必要であるかは議論のあるところです。英国においては歴史的にMRSAのair-borne伝播に関する関心が高く、今回GISAの重要性に鑑み念のための措置をとったものと想像されますが、日米においては通常のMRSA患者隔離において陰圧管理を行うとする勧告は出されていません。GISAが分離された場合には厳密な接触予防策を行うことが肝要です。
<参考>

  1. CDC. Reduced Susceptibility of Staphylococcus aureus to Vancomycin — Japan, 1996. MMWR July 11, 1997.
    http://www.yoshida-pharm.com/1997/us0711a/
  2. CDC. Update: Staphylococcus aureus with Reduced Susceptibility to Vancomycin — United States, 1997. MMWR September 5, 1997.
    http://www.yoshida-pharm.com/1997/us0905a/
  3. Tenover FC, Biddle JW, Lancaster MV. Increasing resistance to vancomycin and other glycopeptides in ylococcus aureus. Emerging Infectious Diseases 2001; 7: 327-32.
    http://www.cdc.gov/ncidod/eid/vol7no2/tenover.htm
  4. Johnson, A. P. Intermediate vancomycin resistance in Staphylococcus aureus: a major threat or a minor inconvenience? J. Antimicrob.Chemother 1998; 42:289-291.
    http://www.yoshida-pharm.com/carlisle/0401/review01.html
  5. Trish, M. et al. The threat of vancomycin resistance. Am. J. Med 1999; 106(5A): 26S-37S.
    http://www.yoshida-pharm.com/carlisle/0403/review05.html
CDR Weekly: 2002.05.16/Yoshida Pharmaceutical Co Ltd: 2002.05.20

関連サイト