Y's Square:病院感染、院内感染対策学術情報 > 海外の感染対策情報 (各機関週報より) > イギリス(HPA-HPRより) > 2002 > 多剤耐性結核の病院感染
UK Update
イギリス(HPA-HPRより)
2002/10/17

多剤耐性結核の病院感染

PHLS. CDR Weekly October 17, 2002;12(42).
PHLS: Hospital acquired multi drug resistant tuberculosis.CDR Weekly 2002;12(42).の要旨
http://www.hpa.org.uk/cdr/PDFfiles/2002/cdr4202.pdf

2002年2月、ケントの病院に40代の多剤耐性結核の男性患者が入院し、陰圧管理された病室に入室した。この患者はその感染状態にもかかわらず他者への伝播予防に必要な合理的な予防策をとることを拒否したため、公衆衛生法に基づき感染症病棟内に留置する措置がとられた。

その後、この措置期間に同じ病棟に入院していた他の一人の男性患者が多剤耐性結核と診断され、その結核菌をRFLPタイピングにより調べたところ前述の患者のものと区別不能であった。現在、関連した他の300名以上の患者と医療従事者について結核検査が行われている。

協力的でない患者に留置措置を行うことは、実務的にも倫理的にも多くの困難が伴う。

<訳註>

結核菌は活動性肺結核など感染伝播性のある結核症例の呼気中の飛沫核(5μm以下)に乗り、室内空気中に長時間浮遊し伝播します。したがってそのような症例が陰圧管理された結核病室や独立した建屋である結核病棟からその他の室内に移動する場合には、外科用マスクなどろ過効率の高いマスクを着用する必要があります1)。ただし外気中に放出された結核菌を含む空気は、直ちに別の室内に流入しないかぎり、急速に希薄化するため問題とはなりません2)

日本においても結核予防法により、感染伝播性のある結核症例について職業による一定の従業制限措置や結核療養所などへの一定の入院措置が法的に規定されています。しかしその強制的な実施には慎重な倫理的配慮が必要であると思われ、通常は医師の助言に基づく患者自身の自発的な行動として受け入れ体制の整った医療機関に入院または転院することが基本であると思われます。また他者への感染伝播を予防するための患者への適切な指導と、患者自身による協力が重要と思われます。

現代における抗結核菌薬療法の発達により、治療中の結核患者の呼気に感染伝播性がある期間は短縮され、隔離を目的とする入院期間も短縮されました。しかしながらそのことがかえって服薬コンプライアンスの低下による不完全な抗結核菌薬療法をもたらし、多剤耐性結核を発生させるという新たな問題が近年国内外で発生しています3)。多くの場合イソニアジドとリファンピンの両方に試験管内耐性を示す結核菌による結核を多剤耐性結核(MDR-TB)と呼びますが、1997年の日本における調査では、結核の初回治療において0.8%、再治療において19.7%がMDR-TBであったと報告されています4)。このような背景もありWHOは多剤投与を含む直接観察療法を提唱しています5)

<参考>

  1. 小林寛伊,吉倉廣,荒川宜親編集.エビデンスに基づいた感染制御.メヂカルフレンド社,東京,2002.
    http://www.yoshida-pharm.com/information/guideline/evidence.html
  2. CDC: Guidelines for Preventing the Transmission of Mycobacterium tuberculosis in Health-Care Facilities, 1994. MMWR 1994;43(RR13):1-132.
    http://www.yoshida-pharm.com/library/cdc/guideline/tb.html
  3. Iseman MD: Treatment of Multidrug-Resistant Tuberculosis. N Engl J Med 1993;329:784-791.
    http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi?cmd=Retrieve&db=PubMed&list_uids=8350889&dopt=Abstract
  4. Abe C, Hirano K, Wada M, Aoyagi T: Resistance of Mycobacterium tuberculosis to four first-line anti-tuberculosis drugs in Japan, 1997. Int J Tuberc Lung Dis 2001;5:46-52.
    http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi?cmd=Retrieve&db=PubMed&list_uids=11263516&dopt=Abstrac
  5. WHO. What is DOTS. 1999.
    (WEB公開資料 August 30, 2002: http://www.who.int/gtb/publications/whatisdots/pdf/whatisDOTS.pdf)
CDR Weekly: 2002.10.17/Yoshida Pharmaceutical Co Ltd: 2002.10.21

関連サイト