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Y’s English
感染管理担当者のための英文読解ガイド
Article 1

Staphylococcus aureus Resistant to Vancomycin – United States, 2002
MMWR Weekly July 5, 2002 Vol. 51 / No. 26 p565-7, extract*
バンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌-合衆国、2002年
MMWR週報、2002年7月5日発行51巻26号、565-7ページ、抜粋**

英文

Staphylococcus aureus is a cause of hospital- and community-acquired infections. In 1996, the first clinical isolate of S. aureus with reduced susceptibility to vancomycin was reported from Japan. The vancomycin minimum inhibitory concentration (MIC) result reported for this isolate was in the intermediate range (vancomycin MIC=8 µg/mL) using interpretive criteria defined by the National Committee for Clinical Laboratory Standards. As of June 2002, eight patients with clinical infections caused by vancomycin-intermediate S. aureus (VISA) have been confirmed in the United States. This report describes the first documented case of infection caused by vancomycin-resistant S. aureus (VRSA) (vancomycin MIC >32 µg/mL) in a patient in the United States. The emergence of VRSA underscores the need for programs to prevent the spread of antimicrobial-resistant microorganisms and control the use of anti-microbial drugs in health-care settings.

邦訳と解説

この英文は米国の基準におけるバンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌の世界で初めての臨床分離を報告した記事の冒頭部分(P565)です。 ひとつひとつの文に区切って読んでいきます。

Sentence 1
Staphylococcus aureus is a cause of hospital- and community-acquired infections.
 
黄色ブドウ球菌は病院(獲得)感染と市井(獲得)感染のひとつの原因である。

Staphylococcus aureus:黄色ブドウ球菌

学名(菌種名)はこのように固有名詞として大文字で始め斜体(イタリック体)で表示します。Staphylococcus のように菌属名も大文字で始め斜体にします。しかしstaphylococci(複数形)のようにブドウ球菌一般を指す時は多くの場合、普通名詞として扱い小文字で始め斜体にはしません。

hospital(-acquired) infection:病院感染

community(-acquired) infection:市井感染

病院内で伝播した(接種された)微生物による感染を病院感染(hospital infection)、病院外、つまり市井で伝播した(接種された)微生物による感染を市井感染(community infection)と言います。この定義を明確にするため、このようにacquired(獲得された)を挿入する場合も多くあります。

Sentence 2
In 1996, the first clinical isolate of S. aureus with reduced susceptibility to vancomycin was reported from Japan.
 
1996年、バンコマイシンに低感受性を示す黄色ブドウ球菌の初めての臨床分離株が日本から報告された。

clinical isolate:臨床分離株

患者の検体から検出された菌株を指します。同じ菌種、例えば黄色ブドウ球菌のなかでも、菌株によりしばしば抗菌薬感受性が異なります。試験管内で得られたVRSAは1992年に報告されていましたが*、試験管内での遺伝子的操作などにより得られた菌株は臨床分離株ではありません。なお抗菌薬評価などにおける共通供試菌株として、標準菌株(standard strain)が制定されています。

* Noble WC, Virani Z, Cree RG. Co-transfer of vancomycin and other resistance genes from Enterococcus faecalis NCTC 12201 to Staphylococcus aureus. FEMS Microbiol Lett 1992;93;195–8. [PubMed]

susceptibility:感受性

ここでは細菌の抗菌薬に対する感受性を指します。reduced susceptibilityとは感受性が低下した、つまり抗菌薬が効きにくい状態を指します。感受性ではないが耐性(resistant)とは限らない、つまり中等度(intermediate)の場合も含めた非感受性(non-susceptible)の傾向を広く表現しています。なお、ある微生物に対して免疫などを持たないヒトをその微生物にsusceptibility、感受性があると言うこともあります。

Sentence 3
The vancomycin minimum inhibitory concentration (MIC) result reported for this isolate was in the intermediate range (vancomycin MIC=8 µg/mL) using interpretive criteria defined by the National Committee for Clinical Laboratory Standards.
 
この分離株について報告されたバンコマイシン最小発育阻止濃度(MIC)試験結果(vancomycin MIC=8μg/mL)は臨床検査標準全国委員会(NCCLS)が定める判定基準によれば中等度の範囲にあった。

interpretive criteria:解釈上の基準・・・判定基準、判定分類

最小発育阻止濃度(MIC)や米国の臨床検査標準全国委員会(NCCLS)については細菌検査学の教科書などを参照ください。ところでNCCLSによるバンコマイシン中等度の範囲はMIC=8~16 µg/mLです。ですから、”(vancomycin MIC=8 µg/mL)”とあるのは当該分離株のMIC値を記載したものと考えられます。なおNCCLSによるバンコマイシン耐性はMIC=>32µg/mL、バンコマイシン感受性はMIC=<4µg/mLと定義されています。

#1 文法アドバイス
文法アドバイスでは英文法的な説明を行います。そのためには英文法用語を用いざるを得ませんので、かえって難しく感じる場合があるかもしれません。そのような部分は読み飛ばしてください。英文法を知識として理解することは、実践的な英文読解のために必ずしも必要とは思われません。様々な読解法の中の、ひとつの方法にすぎないと考えて下さい。  
 
どんなに長い英文も、” . “(ピリオド)、” ? “(疑問符)、” ! “(感嘆符)で区切られる個々の文(sentence)から構成されています。文は構造上、(1)主語+述語動詞という構造を1つだけ含む単文、(2)2つ以上の節(clause:文の一部でありながら、それ自身のうちに主語+述語動詞の構造をもつもの)から構成される重文や複文があります。重文とは、2つ以上の節(等位節)が等位接続詞(and, or, but, forなど)により接続されたもの、複文は接続される節が主節と従属節という関係にあるもので、いずれも単文と違い、主語+述語動詞の構造が1つの文の中に複数見出されることになります。
 
英語を読むときには、どこからどこまでが1つの節なのかを把握し、その節においてどの単語 (word:以下「語」と言います)が動詞なのかを見つけること、それからどの語または 句(phrase:2つ以上の語が意味の1単位を形成するもので、主語+述語動詞の形を取らないもの)が主語なのか見つけることが基本のひとつです。その際、主語になる語あるいは句とは、名詞や代名詞、または名詞相当語句だということが重要です。例として次の単文をご覧下さい。
 
He played the game.
(Heが代名詞で主語。playedが述語動詞)  
 
The young man played the game.
(The young manが名詞相当語句で主語。manという名詞1語を主語と呼ぶこともあります。playedが述語動詞)  
 
To play the game is fun.
「そのゲームをすることは楽しい」
(To play the gameが名詞句(名詞用法の不定詞)で主語。isが述語動詞)  
 
先に掲げたSentence 3も単文であり、主語+述語動詞の構造は1つだけなのですが、その中にはreported, was, definedなどの動詞の活用形がいくつも出てくるので 、どれが主語に対する述語動詞にあたるのか戸惑います。動詞に活用語尾としてedがついている場合、それが述語動詞でないことがあるので要注意です。例えば、動詞playは過去形も過去分詞も同じ形のplayedであるため、主語の直後にplayedがある場合は、述語動詞としての過去形である場合と、主語を修飾する形容詞の働きをする過去分詞の場合があり、そのどちらであるかを判別しなければなりません。
 
He played the popular game.
(Heが主語。playedは過去形で述語動詞)  
The game played by him was popular.
(The gameが主語。wasが述語動詞)
(playedは過去分詞。played by himが形容詞句となってThe gameを修飾する)
 
 
一方、be動詞の現在形、つまりI am ~、You are ~、It is ~などのam、are、is、ならびに過去形、つまりI was ~またはYou were ~などのwas、wereは動詞としてのみ用いられます。
 
このように文法的に考えたり、もしくは文脈を把握していくと、この文は以下のような構文であることが判ります。
 
The ~ result reported for this isolate(下線部が主語)
「この分離株について報告された~結果は」
(reportedはreportの過去分詞で、主語であるThe ~ resultを修飾する)
 
was(述語動詞)in the intermediate range
「中等度の範囲にあった」
 
using interpretive criteria defined by ~.
「~により定められた判定基準によると」
(definedはdefineの過去分詞で、interpretive criteriaを修飾する)  
 
現在分詞であるusingは分詞構文を構成しています。分詞構文については、Article 7で触れます。
Sentence 4
As of June 2002, eight patients with clinical infections caused by vancomycin-intermediate S. aureus (VISA) have been confirmed in the United States.
 
2002年6月現在までに、合衆国においてはバンコマイシン中等度黄色ブドウ球菌(VISA)による臨床感染例が8例確認されている。

patients with clinical infections:臨床感染例

患者の検体から細菌が検出されても、単なる保菌(colonization)である場合と感染(infection)である場合があります。また感染が成立していても無症候である場合があります。この8例は臨床的診断を伴う感染症例であったため、patients with clinical infectionsと表現されています。

Sentence 5
This report describes the first documented case of infection caused by vancomycin-resistant S. aureus (VRSA) (vancomycin MIC >32 µg/mL) in a patient in the United States.
 
本報告は合衆国の1症例においてバンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌(VRSA) (vancomycin MIC>=32µg/mL)によって引き起こされた感染症の初の報告例がどのようなものであったのかを説明している。

describe:言葉で述べる・・・記述する、説明する

document:証拠書類を提出する・・・(事実を文章で公に)報告する

case:症例

Sentence 6
The emergence of VRSA underscores the need for programs to prevent the spread of antimicrobial-resistant microorganisms and control the use of anti-microbial drugs in health-care settings.
 
VRSAの発現により、抗微生物薬耐性微生物の拡散防止と医療現場における抗微生物薬使用管理のためのプログラムの必要性が改めて強調される。

underscore:下線を引く・・・強調する

antimicrobial-resistant microorganism:抗微生物薬耐性微生物

anti-microbial drug:抗微生物薬、抗菌薬

microorganismsは細菌だけでなく真菌、ウイルスなどを含み、微生物全般を指します。

anti-microbial drug、antimicrobial agent、antimicrobialsは正確には抗微生物薬ですが、多くの場合もっぱら抗菌薬を指すため、文脈により抗菌薬と訳されることもあります。抗微生物薬を対象微生物の種類により区別する場合には、抗菌薬(抗細菌薬)をantibacterial agent、抗真菌薬をantifungal agentまたはantimycotic agent、抗ウイルス薬をantiviral agentなどと呼びます。antibioticsは 微生物が産生する化学物質である抗生物質のみを指し、合成抗菌薬(synthetic antibacterial agent)を含みません。

health-care settings:医療現場

直訳すると「健康管理の現場」ですが、病院感染対策の文脈においては臨床的な医療が行われている現場、つまり多くの場合、病院・診療所などの入院・外来の医療現場 を指します。ですから「健康管理」という広い意味の訳語よりは、「医療」という狭い意味を持つ訳語の方が適切な場合が多いようです。

ただし、米国におけるhealth-careという用語は、感染対策の文脈において、在宅医療(home care)、長期療養施設(long-term-care facilities)でのケアを包含します。したがって、日本における在宅医療 、老人保健施設などでの保健行為も相当します。

なお、施設としての病院や長期療養施設などを指す場合にはhealth-care facilitiesと言います。

#2 文法アドバイス
~ underscores the need for programs to prevent ~ and control ~
 
preventは動詞の原形ですが、to prevent ~は不定詞句(to+動詞で構成される)で、ここではprogramsを修飾します。つまり、「~を防止するための計画」という意味です。
 
controlも動詞ですが、programを修飾する不定詞句の中においてandによりpreventと並列された動詞と解釈し、「~を管理するための計画」と読みます。もしcontrolがandによりunderscoresと並列された動詞であるならば、controlsと3人称単数主語に対応するためのsが付くはずですし、しかもそれでは文全体の意味が通じなくなるので、そうではないと判ります。

久しぶりに英語を読んだ方、お疲れ様でした。

☆ステップアップのためのヒント☆
英語で医学文献を読む場合でも、基本的な英単語はごく普通の英和辞典で調べることができます。しかし、医学的な専門用語は普通の英和辞典にはあまり収録されていないため、なんらかの医学向け英和辞典が身近にあると便利です。とはいえ、大きな医学英和辞典は大きくて重く、しかも安価ではありません。一方、手軽な小辞典は収録語数などが限られています。

ところで手元の辞典に収録されていない医学用語に出会った場合に案外と便利なのは、インターネット上の無料検索エンジンです。これは英語の医学用語の場合でも同じで、意味を知りたい英単語を入力し、日本語サイトをページ検索すれば、かなり多くの場合その意味を知ることができます。
 
ただ、サイトによっては正式でない訳語を使用している場合もあります。正式な訳語を確認したい場合、たとえば学会発表の準備をするような場合には、以下のような学会公認の英和用語辞典や用語集を調べることになります。
 
・ 日本医学会医学用語管理委員会編.日本医学会 医学用語辞典 英和.南山堂,東京,2001.(14,000円+税)
・ 日本化学療法学会編集委員会編.英和 和英 化学療法用語集.篠原出版,東京,1999.(3,000円+税)
・ 日本細菌学会用語委員会編.英和・和英微生物学用語集.菜根出版,東京,1992.(5,340円+税)
 
とはいえ、これらの辞典や用語集をすべて手元に常備しておく必要のある場合は、それほど多くはないと思われます。必要があるときに、図書館などで利用することで十分な場合も多いと思われます。

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