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Y’s English
感染管理担当者のための英文読解ガイド
Article 5

Guidelines for Preventing the Transmission of Mycobacterium tuberculosis in Health-Care Facilities, 1994
MMWR October 28, 1994 / Vol. 43 / No. RR-13, extract*
医療施設における結核菌伝播の予防のためのガイドライン
MMWR、1994年10月28日発行43巻RR-13号、抜粋**

英文

Although microorganisms are ordinarily found on walls, floors, and other environmental surfaces, these surfaces are rarely associated with transmission of infections to patients or HCWs. This is particularly true with organisms such as M. tuberculosis, which generally require inhalation by the host for infection to occur. Therefore, extraordinary attempts to disinfect or sterilize environmental surfaces are not indicated. If a detergent germicide is used for routine cleaning, a hospital-grade, EPA-approved germicide/disinfectant that is not tuberculocidal can be used. The same routine daily cleaning procedures used in other rooms in the facility should be used to clean TB isolation rooms, and personnel should follow isolation practices while cleaning these rooms. For final cleaning of the isolation room after a patient has been discharged, personal protective equipment is not necessary if the room has been ventilated for the appropriate amount of time .

邦訳と解説

この英文は米国CDCの結核伝播予防ガイドラインから、環境消毒に関する部分(P105)を抜粋したものです。

Sentence 1
Although microorganisms are ordinarily found on walls, floors, and other environmental surfaces, these surfaces are rarely associated with transmission of infections to patients or HCWs.
 
微生物は壁、床、その他の環境表面から常に検出されるが、これらの表面が患者や医療従事者への感染症の伝播に関連することはまれである。

environmental surfaces:環境表面

HCWs (health-care workers):医療従事者

Sentence 2
This is particularly true with organisms such as M. tuberculosis, which generally require inhalation by the host for infection to occur.
 
このことは結核菌のような微生物の場合、特に当てはまる。結核菌は感染を発生させるのに宿主により吸入されることが通常必要だからである。

inhalation:吸入

host:宿主

M. tuberculosis:結核菌

inhalationは息を肺まで吸い込むことを指し、aspirationは水などを誤って肺などに吸引することを指します。hostは微生物が感染するヒトまたは動物を指します。

# 文法アドバイス
whichはM. tuberculosisを先行詞とする関係代名詞で、which以下はM. tuberculosisについて説明する従属節となっています。
 
for infection to occurはrequire・・・にかかる不定詞句で、「感染が発生するために・・・を必要とする」と目的を示します。ここでfor以下のinfectionはoccurの 意味上の主語にあたります。
 
He opened the door for her to enter.
「彼は彼女が入れるようにドアを開けた」
Sentence 3
Therefore, extraordinary attempts to disinfect or sterilize environmental surfaces are not indicated.
 
従って、環境表面を特別に消毒または滅菌する試みは指示されない。

disinfect:消毒する

sterilize:滅菌する

Sentence 4
If a detergent germicide is used for routine cleaning, a hospital-grade, EPA-approved germicide/disinfectant that is not tuberculocidal can be used.
 
日常清掃に殺菌成分を含む洗浄剤が用いられている場合には、EPAの承認した病院用の殺菌剤/消毒薬で殺結核菌性の無いものを用いればよい。

detergent germicide:殺菌(成分を含む)洗浄剤

EPA (Environmental Protection Agency):米国の環境保護局

tuberculocidal:殺結核菌性の

Sentence 5
The same routine daily cleaning procedures used in other rooms in the facility should be used to clean TB isolation rooms, and personnel should follow isolation practices while cleaning these rooms.
 
結核隔離病室の清掃には、同施設内のその他の一般病室に使用されるのと同じ毎日の日常的清掃手順を使用するべきであり、職員は結核隔離病室を清掃する際に遮断策手順を守るべきである。

isolation:隔離、遮断策

日本語で隔離というと病棟や病室を別にすることをイメージしますが、isolationという言葉はより広く、何らかの方策により微生物の伝播を遮断すること全般を指します。従って、マスクやガウンの着用などもisolationに含む場合が多いことに注意が必要です。

ここでisolation practicesと言われているのは、陰圧の維持やN95マスクの着用などを指します。

Sentence 6
For final cleaning of the isolation room after a patient has been discharged, personal protective equipment is not necessary if the room has been ventilated for the appropriate amount of time .
 
患者が退院した後の隔離病室の最終清掃においては、十分な時間換気空調が行われた部屋の場合であれば、個人保護具の必要はない。

ここでpersonal protective equipmentはN95マスクなどを意味します。

☆ステップアップのためのヒント☆
米国の感染対策ガイドラインを読んでいて戸惑うことのひとつとして、消毒薬の承認制度が日本と異なることがあります。これについて自力で調べるのは大変ですので、知っておくと便利な要点を解説します。
 
最近の米国制度では、主に医療用セミクリティカル器具に用いる高水準消毒薬や滅菌薬(sterilant)をFDA(食品医薬局)が承認し、ノンクリティカル器具や環境に用いる低~中消毒薬をEPAが承認しています。ただしややこしいことにEPAが承認した高水準消毒薬や滅菌薬も存在します。人体に適用する生体消毒薬(antiseptics)はFDAが承認しますので、EPA-approvedという表現があれば、それだけで非生体消毒について述べられていると解ります。
 
EPAが承認する低~中水準消毒薬は、病院向けのグレードとそれ以外のグレードが区別される場合がありますが、病院感染対策のガイドラインで言及されるものはもっぱら病院向けグレードを意味します。
 
EPAが承認する低~中水準消毒薬は、基本的なもの(低水準)と殺結核菌性のあるもの(中水準)に大別されることが多く、前者は主に第四級アンモニウム塩製剤などを指し、後者は主にフェノール系製剤、アルコール系製剤、次亜塩素酸系製剤などを指します。
 
したがってEPA-approved disinfectantは日本における塩化ベンザルコニウムなどに相当し、EPA-approved tuberculocidal disinfectantは日本における0.5~1%クレゾール石ケン液、消毒用エタノール、70%イソプロパノール、1,000ppm以上の次亜塩素酸ナトリウムなどに相当します。ただし日本においては、クレゾール石ケン液などフェノール類に排水規制があり、また独特な臭気もあるため、あまり繁用されません。
 
なお、米国のガイドラインでは、次亜塩素酸ナトリウムをbleach(漂白剤の意)と呼ぶことも多く、bleach原液は多くの場合5.25%(52,500ppm)の次亜塩素酸ナトリウムを含みます。
 
以上のことから今回の英文を日本の文脈で言い換えると、結核病室の環境をクレゾール石ケン液などで消毒する必要はなく、もしも塩化ベンザルコニウムなどを環境清掃に用いているのであればそれで良い、という意味になります。ただし、一般病室の環境清掃に塩化ベンザルコニウムなどを使用する必要があると述べられているのではありません。

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