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Y’s English
感染管理担当者のための英文読解ガイド
Article 6

Guidelines for Preventing Opportunistic Infections Among Hematopoietic Stem Cell Transplant Recipients
MMWR October 20, 2000 / Vol. 49 / No. RR-10, extract*
造血幹細胞移植患者における日和見感染の予防のためのガイドライン
MMWR、2000年10月20日発行49巻RR-10号、抜粋**

英文

HSCT transplant recipients with recurrent Sta. aureus infections should undergo extensive evaluation for persistent colonization, including cultures of nares, groin, axilla, and ostomy sites (e.g., tracheostomy or gastrointestinal tube). For patients with recurrent MRSA infection, elimination of the carrier state should be attempted by applying a 2% mupirocin calcium ointment to the nares, although this strategy has been only marginally effective in certain institutions (278). High-level mupirocin-resistant MRSA has been reported in Europe, the Middle East, and South America (279–283) but is uncommon in the United States. As with any antibiotic, incorrect or overuse of mupirocin can result in mupirocin-resistant Staphylococci; therefore, mupirocin use should be reserved for infection control strategies only (279,280).

邦訳と解説

この英文は米国CDCの造血幹細胞移植における感染予防ガイドラインから、ムピロシンに関する部分(P38)を抜粋したものです。

Sentence 1
HSCT transplant recipients with recurrent Sta. aureus infections should undergo extensive evaluation for persistent colonization, including cultures of nares, groin, axilla, and ostomy sites (e.g., tracheostomy or gastrointestinal tube).
 
黄色ブドウ球菌による回帰感染のある造血幹細胞移植患者は鼻腔、鼠径部、腋窩、瘻造設術部位(気管切開、胃腸挿管など)からの検体培養を含め、持続的保菌について詳細な調査を受けるべきである。

HSCT (hematopoietic stem cell transplant):造血幹細胞移植

Sta. aureus:黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus

recipient:受血者、被移植者、(臓器・骨髄)被提供者、移植を受ける人

recurrent infection:回帰感染

culture:培養

nare:鼻腔

groin:鼠径部

axilla:腋窩

ostomy:瘻造設術

tracheostomy:気管切開

gastrointestinal:胃腸(の)

回帰感染は、ある微生物により無症候性に感染・保菌していた人が、感染防御機能の低下などにより、感染を発症する場合を言います。ヘルペスウイルスによる回帰感染は健常人でもしばしば発生します。

Sentence 2
For patients with recurrent MRSA infection, elimination of the carrier state should be attempted by applying a 2% mupirocin calcium ointment to the nares, although this strategy has been only marginally effective in certain institutions (278).
 
MRSAによる回帰感染のある患者においては、2%ムピロシンカルシウム軟膏を鼻腔に適用することにより、保菌状態の除去を試みるべきである。ただしこの方法はいくつかの施設においては、わずかにしか効果がなかった。

MRSA:メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(methicillin-resistant Staphylococcus aureus

メチシリンやオキサシリンに耐性を示す黄色ブドウ球菌をMRSAと言い、通常、オキサシリンのMIC値が4 µg/mL以上の場合を指します。

carrier:キャリアー、保菌者、保有者、持続感染者

キャリアーは持続的に微生物を保菌・保有している人を指します。ウイルスの場合はしばしば持続感染者とも言います。

# 文法アドバイス
strategyは通常、戦略、計略と訳されますが、最終的な目的に向けて良く考案された計画のことを指します。医学論文では予防計画、治療計画などを指す場合が多いと思われます。典型的には、当面不利益と思われるような事項でも、より大きな目的を達成するため、敢えて積極的に行うような計画を指します。
 
marginalはなかなか意味のわかりにくい言葉です。大きな全体の中の端の方という意味で、例えば既存の予防法の有効率が70%であり、ある方法を追加することで71%に増加したとき、その効果はわずか1%であり、そのような小さな差をmarginalと表現します。
Sentence 3
High-level mupirocin-resistant MRSA has been reported in Europe, the Middle East, and South America (279–283) but is uncommon in the United States.
 
ムピロシン高度耐性のMRSAが欧州、中東、南米で報告されているが、合衆国においては一般的でない。
Sentence 4
As with any antibiotic, incorrect or overuse of mupirocin can result in mupirocin-resistant Staphylococci; therefore, mupirocin use should be reserved for infection control strategies only (279,280).
 
抗生物質と同様、ムピロシンの不適正使用、過剰使用はムピロシン耐性ブドウ球菌の発生をもたらす可能性がある。したがって、ムピロシンの使用は感染管理戦略だけのために温存しておくべきである。

この部分ではStaphylococciと固有名詞として表記されていますが、多くの場合、staphylococciと表記されます。

☆ステップアップのためのヒント☆
PubMedで文献(280)を調べてみましょう。

(280) Schmitz FJ, Lindenlauf E, Hofmann B, et al. Prevalence of low- and high-level mupirocin resistance in staphylococci from 19 European hospitals. J Antimicrob Chemother 1998;42:489–495. [PubMed]

すると、「Free full text ~」というアイコンが出ています。これは発行元により全文が無料で公開されていることを示します。このアイコンをクリックして指示のとおりたどっていくと
http://jac.oupjournals.org/cgi/reprint/42/4/489.pdf
で全文を閲覧することができます。

その表を見ると、この研究に参加した19施設が欧州内のどの国の施設なのか知ることができます。全文を読み通さなくても、原著の表を見ることで多くの情報を得ることができます。

欧州内でも国により抗菌薬耐性の傾向が異なる場合があるので、 欧州内の平均的データをすべての欧州諸国に当てはまると予断することは不正確な場合があります。例えばMRSAの検出頻度はオランダやドイツなどとイタリアや英国などとの間で大きな差異があります*。

* EARSS: Annual Report EARSS 2000. 2001.
http://www.earss.rivm.nl/PAGINA/DOC/report2000/repearss2000.pdf

さて、上記のアイコンに「Free~」と明記されていない場合には、さらにクレジットカードの詳細などを入力して料金を支払わないと全文を閲覧できない場合が多くあります。 ただしPubMed上に「Free full text ~」と表示されていない文献の場合でも、その発行元のホームページを検索して調べると、その文献が無料で公開されている場合も多くあります。

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