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Y’s English
感染管理担当者のための英文読解ガイド
Article 8

Guidelines for Prevention of Nosocomial Pneumoniae
MMWR January 3, 1997 / Vol. 46 / No. RR-1, extract*
病院内肺炎の予防のための勧告
MMWR、1997年1月3日発行46巻RR-1号、抜粋**

英文

Devices used on the respiratory tract for respiratory therapy (e.g., nebulizers), diagnostic examination (e.g., bronchoscopes and spirometers), and administration of anesthesia are potential reservoirs and vehicles for infectious microorganisms. Routes of transmission might be from device to patient, from one patient to another, or from one body site to the lower respiratory tract of the same patient via hand or device. Contaminated reservoirs of aerosol-producing devices (e.g.,nebulizers) can allow the growth of hydrophilic bacteria that subsequently can be aerosolized during use of the device. Gram-negative bacilli (e.g., Pseudomonas sp., Xanthomonas sp., Flavobacterium sp., Legionella sp., and nontuberculous mycobacteria) can multiply to substantial concentrations in nebulizer fluid and increase the risk for pneumonia in patients using such devices.

邦訳と解説

この英文は米国CDCの病院内肺炎予防ガイドラインから、器具に関する解説(P21)を抜粋したものです。

Sentence 1
Devices used on the respiratory tract for respiratory therapy (e.g., nebulizers), diagnostic examination (e.g., bronchoscopes and spirometers), and administration of anesthesia are potential reservoirs and vehicles for infectious microorganisms.
 
呼吸療法(例:ネブライザー)のために気道に用いられる装置、診断検査(例:気管支鏡、肺活量計)、そして麻酔投薬は、感染性微生物の感染源および媒介物となる 可能性がある。

device:装置、機器、器具

respiratory tract:気道

nebulizer:ネブライザー

diagnostic:診断の

bronchoscope:気管支鏡

spirometer:肺活量計

administration:投薬

anesthesia:麻酔

reservoir:感染源

vehicle:媒介物

機器、器具一般を表す用語としては、deviceの他に、instrument、equipmentがあります。一般にreservoirは貯蔵所・貯水槽、vehicleは乗り物を指しますが、感染に関する記述においては上記の意味となります。なおvectorは節足動物など媒介となる動物(ベクター)を指します。

Sentence 2
Routes of transmission might be from device to patient, from one patient to another, or from one body site to the lower respiratory tract of the same patient via hand or device.
 
伝播径路は、装置から患者へ、ある患者から他の患者へ、またはある部位から同じ患者の下気道へと、手指または装置を介して伝わるというものかもしれない。

route of transmission:伝播経路

Sentence 3
Contaminated reservoirs of aerosol-producing devices (e.g.,nebulizers) can allow the growth of hydrophilic bacteria that subsequently can be aerosolized during use of the device.
 
霧状飛沫を発生させる装置(例:ネブライザー)の貯水槽が汚染されると、そこで親水性細菌が増殖する場合があり、それらの細菌は装置使用時に飛沫として放出されることがある。

aerosol:エアゾール化する、エアゾールにして散布する

aerosolは典型的には噴霧器から発生するような液体の飛沫を指し、直ぐに落下する大きな飛沫から、しばし空中に浮遊する小さな飛沫までを含むと思われます。

hydrophilic bacteria:親水性細菌

Sentence3でのreservoirは、普通の用法に近い「貯水槽」の意味と思われます。なぜなら「汚染された感染源」というのは過剰で不自然な表現だからです。ネブライザー装置内の加湿水などの貯水槽が感染源となることを意味していると思われます。

# 文法アドバイス
Sentence3でのcanはどちらも「~できる」(能力)というよりも、「~がありうる」(可能性)という意味です。mayは「~してもよい」(許可)の他に、「~かもしれない」 (不確実な推量)という意味でも用いられます。さらに、これらの表現を和らげるため、could、mightといった過去形が用いられることもあります。助動詞はこれらの多義性に注意して、文脈に応じて読み分ける必要があります。
 
また、Sentence3の意味を読み取ることができても、それを和文として書き留め、他の人に読んでもらう場合には、文脈を考えて少し表現を工夫する必要があります。 この英文は直訳的に和訳すると、例えば
 
「霧状飛沫発生装置の汚染された貯水槽は、その後の装置使用時に飛沫化されうる親水性細菌の増殖を許すことがありうる」
 
となります。間違ってはいないのですが、あまり解りやすくありません。英文和訳においては、文法的な読み回しや辞書的な訳語に忠実にこだわる必要はなく、普通の言い回しに直してみることが得策です。ただし、原文の趣旨を変えてしまわないように注意する必要があります。
Sentence 4
Gram-negative bacilli (e.g., Pseudomonas sp., Xanthomonas sp., Flavobacterium sp., Legionella sp., and nontuberculous mycobacteria) can multiply to substantial concentrations in nebulizer fluid and increase the risk for pneumonia in patients using such devices.
 
(シュードモナス属、ザントモナス属、フラボバクテリウム属、レジオネラ属など)グラム陰性桿菌(と非結核性抗酸菌)はネブライザー液の中でかなりの濃度に増殖し、そのような装置を使用した患者の肺炎リスクを増大させることがある。

Gram-negative bacilli:グラム陰性桿菌 (bacilliはbacillusの複数形)

nontuberculous mycobacteria:非結核性抗酸菌

pneumonia:肺炎

病院感染において重要な細菌であるStenotrophomonas maltophilia は以前シュードモナス属に分類され、またキサントモナス属に分類されたこともありました。 このように細菌の分類と正式名が変更されることもあります。

細菌は正式にはラテン名で表記されますが、それをそのままローマ字読みして発音またはカタカナ表音すれば 、多くの場合一般的な呼び方となります。例えば米国では、”i”を「イ」でなく「アイ」としばしば発音しますが(例:E. coli(大腸菌)はイーコーライと発音)、 それに従ってカタカナ表音する必要は通常無いと思われます。ただし、Pseudomonasのように語頭に”ps”のある語は、 多くの場合”p”を省き、「シュードモナス」などと発音・カタカナ表音します。 なお国内で必ずしも発音・表音が統一されているわけではありませんが、一般的なカタカナ表音を調べる際には、日本細菌学会の用語集が参考となります(Article 1参照)。

さて、Sentence4の原文にはひとつ誤りがあり、訳文ではそこを修正してあります。それはnontuberculous mycobacteriaがGram-negative bacilliの一部であるようにシュードモナス属などと同一括弧内書かれている点です。抗酸菌はGram-positive bacilli、つまりグラム陽性桿菌です。このようにCDCガイドラインであっても、 ごくまれに誤植やケアレスミスがある場合があります。

そのような場合でも、全体の文脈、参考文献の範囲、背景となる基礎的な知見などを念頭に良く考察すれば、それが何らかの単なる間違いであると推定できる場合があります。

☆ステップアップのためのヒント☆
このガイドラインは、2002年12月現在改訂作業中であり、その草案が既に示されています。詳しくは次のリンクをご覧下さい。
http://www.yoshida-pharm.com/information/dispatch/dispatch10.html

このガイドラインは呼吸器系装置をセミクリティカル器具と位置づけ、患者間では滅菌または高水準消毒が、同一患者においても頻繁な消毒が必要であると勧告しています。ただし、具体的な滅菌法・消毒法は あまり詳しく示していません。

その消毒法について詳しく調べてみる時にも、PubMedで検索してみることは有益です。例えば”nebulizer disinfection”(間はスペース)と キーワードを入力してみると、以下の文献を含むいくつかの論文が検索されます。

Jakobsson BM, Onnered AB, Hjelte L, Nystrom B: Low bacterial contamination of nebulizers in home treatment of cystic fibrosis patients. J Hosp Infect 1997;36:201-207. [PubMed]

この文献を読むと、熱水や薬剤などによりネブライザーを消毒しても、それを水道水ですすいでしまうと、かえって再汚染されてしまう場合のあることが解ります。また、熱水を用いた場合には、すすがずにそのまま乾燥させることが良いことも解ります。したがって、熱水を用いることができない場合には、揮発性があり残留性のほとんど無い消毒薬 、例えば次亜塩素酸ナトリウムやアルコールを用いることが有力な代替策と考えられます。残留毒性が無視できない消毒薬を何かの理由があってネブライザーに用いる場合には、滅菌水ですす ぐことが望ましいと思われます。

PubMedを上手く利用すれば、意義深い研究成果を多く知ることができます。 世界中の研究者がこのような調査法を活用していると思われます。キーワード検索は上手にキーワードを選択しないと絞込み不足や検索漏れにつながりますが、いくら検索しても無料ですから、インターネット接続さえ出来れば、気軽に何回でも試行錯誤できます。

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2003.04.03 Yoshida Pharmaceutical Co.,Ltd.

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