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WHO Update
世界保健機構(WHO-WERより)
2003/03/21

重症急性呼吸器症候群(SARS)

WER March 21, 2003 No.12 Vol.78
WHO:Severe acute respiratory syndrome(SARS).の要旨
http://www.who.int/docstore/wer/pdf/2003/wer7812.pdf
病因不明の非定型肺炎である重症急性呼吸器症候群(SARS)の集団発生について、3月19日現在、9例の死亡を含む264例の疑い例(suspect cases)および可能性例(probable cases)がWHOに報告されており、SARSの国内伝播はカナダ、香港、シンガポール、台湾、ベトナムにおいて確認されている。
現在WHOは、これらの国々および中国広東省に渡航する人々は、帰国後10日間発症に注意するよう勧告している。ハノイと香港におけるSARSの資料によると、潜伏期間は2~7日、通常は3~5日であり、患者のケアを行った医療従事者に対する伝播率(attack rate)は56%未満である。
SARS疑い例の診断基準は1)38℃を超える発熱、2)咳、息切れ、呼吸困難などの呼吸器症状、3)発症前10日以内のSARS症例への近接または伝播地域への旅行歴の3要件であり、可能性例は疑い例において胸部X線検査による肺炎あるいは呼吸窮迫症候群の診断がある場合、または原因不明の呼吸器疾患で死亡し剖検で呼吸窮迫症候群とされた場合を指す。
初期症状の主なものは、発熱(100%)、疲労感(100%)、悪寒(97%)、頭痛(84%)、筋肉痛(81%)、めまい(61%)、硬直(55%)、咳(39%)、咽喉痛(23%)、鼻水(23%)であり、その後、呼吸補助や集中治療を要する症例も存在する。胸部X線所見は、典型的には片肺の小さな陰影に始まり、1~2日で両側において拡大する。抗菌薬療法は奏功していないが、抗ウイルス薬療法の一部には効果があった可能性がある。
ドイツと香港における初期調査によると、パラミクソウイルス様の粒子が電顕で観察され、ポリメラーゼチェーン反応による試験も陽性である。しかし原因の究明にはさらなる調査が必要とされている。WHOは各国当局と世界的な報告・協力体制を構築しつつある。
<訳註>

これはWHO Update2003.03.14(http://www.yoshida-pharm.com/who/2003/030314.htm)の続報です。SARSに関する厚生労働省およびWHOからの情報・勧告・通知などは、厚生労働省のホームページ (http://www.mhlw.go.jp/topics/2003/03/tp0318-1b.html)に掲載されています。そこにはWHOおよび厚生労働省によるSRSA診断基準、管理方針、病院感染対策に関する勧告・通知が日本語で詳しく掲載されていますのでご参照ください1)
日本においても3月19日午前までに3例の疑い例が報告され、判定中とのことです2)。3月22日現在、欧米諸国を含む15の国と地域から11例の死亡を含む386例の疑い例または可能性例がWHOに報告が行われていますが3)、国内伝播の確認された地域は、カナダのトロント、シンガポール、中国の広東省、香港、台湾、ベトナムのハノイとのことです4)
病因がパラミクソウイルス科ウイルスと断定されたわけではありませんが、中和抗体反応が発見され、これが診断に結びつくことが期待されています。また、カナダからはパラミクソウイルス科のmetapneumovirusが病因かもしれないとの報告があります5)
パラミクソウイルス科には、RSウイルス、パラインフルエンザウイルス、ムンプスウイルス、麻疹ウイルスなど多様なウイルスがあり、それらの中には飛沫感染のみならず、接触感染、空気感染するものも存在します。既知の主なmetapneumovirusには、トリのTurkey rhinotracheitis virusとヒトのHuman metapneumovirus(HMPV)があります。HMPVは2001年オランダで発見されたウイルスで上気道疾患、重症な細気管支炎・肺炎の原因ですが、遡及的な血清学的調査により少なくとも50年前からヒトに流行してきたと言われており6)、その後オーストラリア、カナダ、米国、英国、フィンランドでも分離されています7)。パラミクソウイルス科ウイルスはエンベロープを有するウイルスであり、比較的良好な消毒薬感受性を示すのが一般的です。

1)厚生労働省健康局結核感染症課長.ハノイ・香港等における原因不明の重症急性呼吸器疾患の集団発生に伴う対応について(第4報) 平成15年3月18日 健感発第0318002号.
http://www.mhlw.go.jp/topics/2003/03/dl/tp0318-1b7.pdf

2)厚生労働省健康局結核感染症課.我が国における「重症急性呼吸器症候群(SARS)」の報告状況について 事務連絡 平成15年3月19日.
http://www.mhlw.go.jp/topics/2003/03/tp0318-1b8.html

3)HO. Cumulative number of reported suspect and probable cases (SARS), From: 1 Feb 2003 To: 22 Mar 2003, 14:00 GMT+1.
http://www.who.int/csr/sarscountry/2003_03_22/en/

4)WHO. Affected Areas – Severe Acute Respiratory Syndrome (SARS), 22 March 2003.
http://www.who.int/csr/sarsareas/2003_03_22/en/

5)WHO. Severe Acute Respiratory Syndrome (SARS) multi-country outbreak – Update 7. 22 March 2003.
http://www.who.int/csr/sarsareas/2003_03_22/en/

6)van den Hoogen BG, de Jong JC, Groen J, Kuiken T, de Groot R, Fouchier RA, Osterhaus AD: A newly discovered human pneumovirus isolated from young children with respiratory tract disease. Nat Med 2001;7:719-724.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi?cmd=Retrieve&db=PubMed&list_uids=11385510&dopt=Abstract

7)Osterhaus A, Fouchier R: Human metapneumovirus in the community. Lancet 2003;361:890-891.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi?cmd=Retrieve&db=PubMed&list_uids=12648965&dopt=Abstract

2003.03.26追記

3月24日米国CDCは、SARSの原因がコロナウイルス科に属する未知のウイルスかもしれないと表明しました8)。Human coronavirusは、ヒトにおけるかぜ症候群の主な原因ウイルスとして知られており、また小児における病院感染起因ウイルスでもあります9)。主な感染部位は上気道ですが、下気道に至る場合もあり、また糞便からもウイルスが検出されます。

8)CDC: CDC Lab Analysis Suggests New Coronavirus May Cause SARS. March 24, 2003.
http://www.cdc.gov/od/oc/media/pressrel/r030324.htm

9)Gagneur A, Sizun J, Vallet S, Legr MC, Picard B, Talbot PJ: Coronavirus-related nosocomial viral respiratory infections in a neonatal and paediatric intensive care unit: a prospective study. J Hosp Infect 2002;51:59-64.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi?cmd=Retrieve&db=PubMed&list_uids=12009822&dopt=Abstract

WER: 2003.03.21 / Yoshida Pharmaceutical Co Ltd: 2003.03.26

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