Y's Square:病院感染、院内感染対策学術情報 > 海外の感染対策情報 (各機関週報より) > 世界保健機構(WHO-WERより) > 2003 > 重症急性呼吸器症候群伝播地域からの渡航者のための措置勧告
WHO Update
世界保健機構(WHO-WERより)
2003/04/04

重症急性呼吸器症候群伝播地域からの渡航者のための措置勧告

WER April 4, 2003 No.14 Vol.78
WHO: WHO recommended measures for persons undertaking international travel from areas affected by Severe Acute
Respiratory Syndrome (SARS).
http://www.who.int/docstore/wer/pdf/2003/wer7814.pdf
4月2日、WHOは香港と中国広東省への重要でない渡航を延期することを勧告した。この勧告の適用においては、各国がその政策や状況に配慮することもできる。SARS伝播地域の渡航者において少数ながらSARSが発生しており、渡航によりこの疾病が世界的に拡散するリスクが懸念される。
WHOはSARS伝播地域からの渡航者における空港でのスクリーニング、SARS症状の疑われる乗客が発生した場合の航空機内および到着後の措置、同乗者・乗務員への措置などについてガイドラインを発行する。
<訳註>

これはWHO Update2003.03.28(http://www.yoshida-pharm.com/who/2003/030328.htm)の続報です。SARSが一時的で地域限定的な感染症として収束するのか、世界的な感染症として拡散してしまうのかについて、まだ見通しを立てることは不可能であり、憂慮が表明されています1)
SARSは多くの場合、医療従事者や家族など近接者に限って伝播することが観察されていますが、香港では、より広く同じホテルや集合住宅に滞在・居住している人々の間でも集団感染が発生しており、なんらかの環境媒介物が伝播に関与する可能性も疑われています。香港のある大規模高層集合住宅街において、 200名を超える症例が発生し、香港当局はその集合住宅に対して隔離的な措置を行いました。そこで階層を垂直的にまたがる集団発生も観察されたため、汚水排水も調査の対象になっています2)
SARSの伝播経路として飛沫感染や接触感染が強く疑われていますが、空気感染の可能性も否定できません3)。しかし、上述のように伝播力が強いと観察された場合と、そうではない場合があり、この点が謎となっています4)。一般にコロナウイルスは気道分泌物のみならず糞便からも検出され、エアロゾル化された場合にはある期間、感染性を保持したまま空中を漂い、環境表面でも数時間、感染性を保持します(WHO Update2003.03.28参照)。
4月5日現在、2002年11月からの中国を含めたSARS報告累計数は、18カ国からの89名の死亡を含む2,416例で、伝播地域はトロント、シンガポール、広東、香港、上海、台湾、ハノイとされています5)6)。ただし、この累計数には、既に治癒し退院した例も多く含まれています。
SARSを日本の感染症予防法における新感染症として取り扱うことが4月3日通知されています7)。米国でも4月4日、SARSが強制入院措置などの可能な伝染病として指定されました8)。なおWER4月4日号は、4月1日付で改訂されたSARS判定基準と報告様式を掲載しています9)。正式には厚生労働省の発表を参照下さい。また、外務省は4月3日と4日に、以下の渡航情報(危険情報)を出しています10)
「渡航の是非を検討して下さい(不要不急の渡航については延期をおすすめします)」
香港、中国広東省
「十分注意して下さい」
中国山西省、台湾、マカオ、シンガポール、ハノイ、トロント

1)Gerberding JL: Faster . . . but Fast Enough? – Responding to the Epidemic of Severe Acute Respiratory Syndrome. N Engl J Med 2003:electric publication on 2 April 2003.
http://content.nejm.org/cgi/content/abstract/NEJMe030067v1

2)WHO: Update 21 – Flash report: new data from China as Ministry of Health begins daily electronic reporting, 4 April 2003.
http://www.who.int/csr/sarsarchive/2003_04_04/en/

3)Poutanen SM, Low DE, Henry B, et al: Identification of Severe Acute Respiratory Syndrome in Canada. N Engl J Med 2003:electric publication on 31 March 2003.
http://content.nejm.org/cgi/content/abstract/NEJMoa030634v1

4)Drazen JM: Case Clusters of the Severe Acute Respiratory Syndrome. N Engl J Med 2003:electric publication on 31 March 2003.
http://content.nejm.org/cgi/content/abstract/NEJMe030062v1

5)WHO: Cumulative Number of Reported Cases of Severe Acute Respiratory Syndrome (SARS): from: 1 Nov 2002 to: 5 Apr 2003, 17:00 GMT+2.
http://www.who.int/csr/sarscountry/2003_04_05/en/

6)WHO: Affected Areas – Severe Acute Respiratory Syndrome (SARS), 5 April 2003.
http://www.who.int/csr/sarsareas/2003_04_05/en/

7)厚生労働省健康局結核感染症課長.ハノイ・香港等における原因不明の「重症急性呼吸器症候群」の集団発生に伴う対応について(第5報) 健感発第0403001号 平成15年4月3日.2003
http://www.mhlw.go.jp/topics/2003/03/tp0318-1b14.html

8)STATEMENT BY TOMMY G. THOMPSON, Secretary of Health and Human Services Regarding Executive Order on Quarantinable Diseases, 4 April 2003.
http://www.hhs.gov/news/press/2003pres/20030404a.html

9)WHO: Global Surveillance for Severe Acute Respiratory Syndrome (SARS). WER 2003:78;100-110.
http://www.who.int/wer/pdf/2003/wer7814.pdf

10)外務省.海外安全ホームページ.
http://www.pubanzen.mofa.go.jp/

WER: 2003.04.04 / Yoshida Pharmaceutical Co Ltd: 2003.04.07

関連サイト