Y's Square:病院感染、院内感染対策学術情報 > 感染対策学術情報 > 感染管理担当者のための英文読解ガイド(Y’s English) > Article 2
Y’s English
感染管理担当者のための英文読解ガイド
Article 2

Guidelines for the Prevention of Intravascular Catheter-Related Infections
MMWR August 9, 2002 / Vol.51 / No.RR-10, extract*
血管内カテーテル関連感染の予防のためのガイドライン
MMWR、2002年8月9日発行51巻RR-10号、抜粋**M/span>

英文

Recommendations for Placement of Intravascular Catheters in Adults and Children, VII – F
Do not use topical antibiotic ointment or creams on insertion sites (except when using dialysis catheters) because of their potential to promote fungal infections and antimicrobial resistance.
 
Peripheral Venous Catheters, Including Midline Catheters, in Adult and Pediatric Patients, III
Do not routinely apply prophylactic topical antimicrobial or antiseptic ointment or cream to the insertion site of peripheral venous catheters.
 
Central Venous Catheters, Including PICCs, Hemodialysis, and Pulmonary Artery Catheters, in Adult and Pediatric Patients, II – I
 
Use povidone-iodine antiseptic ointment at the hemodialysis catheter exit site after catheter insertion and at the end of each dialysis session only if this ointment does not interact with the material of the hemodialysis catheter per manufacturer’s recommendation.

邦訳と解説

この英文は米国CDCの 血管内カテーテル関連感染ガイドライン勧告部分(P13-18)から、軟膏の適用に関する勧告を抜粋したものです。

Sentence 1
Recommendations for Placement of Intravascular Catheters in Adults and Children, VII – F
Do not use topical antibiotic ointment or creams on insertion sites (except when using dialysis catheters) because of their potential to promote fungal infections and antimicrobial resistance.
 
成人および小児における血管内カテーテル留置のための勧告、7節F項
(透析カテーテルを使用する時を除き)挿入部位に局所適用の抗生物質軟膏やクリームを使用してはならない、なぜなら真菌感染や抗菌薬(抗微生物薬)耐性を促進する可能性があるからである。

intravascular catheter:血管内カテーテル

topical:局所適用の

insertion site:挿入部位

この条文は血管内カテーテル全般に関するものです。antibioticやantimcrobialについて、Article1を参照下さい。

#1 文法アドバイス
このDo notからの文は命令文であり、主語がありません。Do not+動詞原形で「~するな」という禁止命令になります。
 
because of theirのtheirはointment or creamsを指し、because ofは理由を示してそれまでの文全体にかかります。
Sentence 2
Peripheral Venous Catheters, Including Midline Catheters, in Adult and Pediatric Patients, III
Do not routinely apply prophylactic topical antimicrobial or antiseptic ointment or cream to the insertion site of peripheral venous catheters.
 
成人および小児患者における、中間ラインカテーテルを含む末梢静脈カテーテル、3節
末梢静脈カテーテルの挿入部位に、予防的に局所適用する抗菌薬または生体消毒薬の軟膏またはクリームを漫然と規則的に適用してはならない。

peripheral venous catheter:末梢静脈カテーテル

routinely:お決まりの日常的手順として・・・漫然と習慣的に

prophylactic:予防の

antiseptic:生体消毒の

Do not routinely do ~はCDC勧告においてよく見られる表現です。いかなる場合にも行ってはならないという意味ではなく、特に理由もなく漫然と習慣的に行ってはならないという意味であり、行うことが適切な場合もありうることを含意しています。

Sentence 1でほぼ全面否定されているのは抗生物質軟膏の予防的局所適用であり、ここで通常必要ないが適切な場合もありうると想定されているのは、おそらく生体消毒薬軟膏の適用のことだと思われます。ただし、末梢静脈カテーテルの場合、生体消毒薬軟膏の適用が適切な場合は限られているというニュアンスです。

Sentence 3
Central Venous Catheters, Including PICCs, Hemodialysis, and Pulmonary Artery Catheters, in Adult and Pediatric Patients, II – I
Use povidone-iodine antiseptic ointment at the hemodialysis catheter exit site after catheter insertion and at the end of each dialysis session only if this ointment does not interact with the material of the hemodialysis catheter per manufacturer’s recommendation.
 
成人および小児患者における、末梢挿入中心カテーテルを含む中心静脈カテーテル、血液透析カテーテル、肺動脈カテーテル、2節I項
血液透析カテーテル穿刺部位には、カテーテル挿入後および各回の透析終了時に、ポビドンヨード生体消毒薬軟膏を適用する。ただし、この軟膏が血液透析カテーテルの素材と相互反応しない旨、製造業者の推薦に述べられている場合にのみ行う。

central venous catheter:中心静脈カテーテル

PICC(peripherally inserted central catheter):末梢挿入中心カテーテル

pulmonary artery catheter:肺動脈カテーテル

hemodialysis catheter exit site:血液透析カテーテル穿刺部位

このように血液透析の場合には、ポビドンヨード生体消毒薬軟膏の局部適用が積極的に勧告されています。

では中心静脈カテーテルの場合はどうなのでしょうか? 抗生物質軟膏を局部適用することはSentence 1でほぼ全面否定されていますが、中心静脈カテーテル挿入部位への生体消毒薬軟膏の適用については、肯定的にも否定的にも何も勧告されていません。ガイドライン前半の解説においても詳しく言及されていないことを考えると、肯定する根拠も否定する根拠もまだ明確にはなっていないため、特にどちらとも勧告されていないのだと思われます。このことは中心静脈カテーテル挿入部位への生体消毒薬軟膏の適用を行うべきとも、廃止するべきとも、このガイドラインは勧告していないことを意味すると思われます。

#2 文法アドバイス
ここでper ~はas per ~と同じ意味で、「により、~のとおり」という参照・依拠を意味します。
 
only if ~は、言葉のとおり「~である場合にのみ」の意味で、そこまでの文全体にかかります。ここでの訳は文脈が分かり易くなるよう、ふたつの文として訳しました。
 
なお余談ですが、If ~ onlyは次のような意味になります。
If I only knew the fact!
「その事実を知ってさえいれば(良かったのに)!」

このように原文を良く読んでみると、簡潔な邦訳では表現の難しい部分について詳しく知ることができます。ふと疑問に思った事項について、ガイドラインの原文を読んでみることは有益な作業です。

☆ステップアップのためのヒント☆
公的なガイドラインの多くは、科学的に正確な用語と表現によって、論理的かつ平易に書かれています。CDCによるガイドラインの場合、原文がインターネットで無料閲覧でき、優れた訳書も多数出版されていますので、医学英語を独学する上での格好の教材であるとも言えます。

今回取り上げた部分では抗微生物作用を持つ軟膏の中での、antibiotic、antimicrobial、antisepticの区別が重要でした。また、短い訳文ではニュアンス表現の難しい部分もあり、書かれていない事項が何かということにも意味がありました。

antimicrobial agents(抗微生物薬)という用語は、多くの場合に注射薬や経口薬として用いられるantibacterial agents(抗菌薬)を指しますが、antimicrobial soap(抗微生物性石けん)という用語は、もっぱら消毒薬配合スクラブを指します*。外用の抗微生物性薬剤に関する記述において、抗微生物、抗菌、antimicrobialなどの用語に出会った場合には、それが主に抗菌薬と消毒薬のどちらを意味するのか少し考えてみることが必要です。

そのためには、まず全体的な文脈を考え、できれば原文の関連箇所を読み、場合によってはそこで引用された文献が抗菌薬に関するものなのか消毒薬に関するものなのか取り敢えず題名だけでも調べてみることが有益と思われます。

病院感染に関するCDCの主なガイドラインについては、Y’s Square内のLibraryに紹介記事、原文へのリンク、また場合により訳書の書誌を掲載しています。

* Boyce JM, Pittet D, et al: Guideline for Hand Hygiene in Health-Care Settings. MMWR 2002;51(RR-16):1-45. [紹介記事]

Prev | Return | Next

2004.10.18 Yoshida Pharmaceutical Co.,Ltd.

関連サイト