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病院感染対策のポイント

第2章 感染起因微生物と予防策

No. 8 インフルエンザに対する予防策 -飛沫予防策-

入院患者のなかにインフルエンザと思われる症例が発生しました。どのような予防策を取ったらよろしいでしょうか?

インフルエンザは世界的に流行を続けている市井感染であり、インフルエンザウイルス(Influenza virus)によって主に冬期に流行します。インフルエンザウイルスにはA(H1N1)型(ソ連型)、A(H3N2)型(香港型)、B型などがあり、さらにその抗原性によりいくつもの系統に分類されます。発熱、上気道炎症状、全身倦怠感などをもたらし通常は約1週間で自然治癒しますが、高齢者や糖尿病などの基礎疾患を持つ症例においては肺炎など重篤な感染症となりやすく、時に死因となることもあるため、病院感染起因微生物のひとつとして重要です。インフルエンザウイルスは咳などにより感染患者から排出される気道分泌物の飛沫により伝播するため学校や職場などで集団発生しますが、老人施設や病院において集団発生し重大な事態に発展することがあるため、施設内・病院内における伝播を予防する必要があります。インフルエンザの病院感染を予防するためには、日常的な標準予防策に加えて飛沫予防策を行うことが必要です。しかし、流行期に病院内で対策を実行することは決して容易ではありません。

飛沫(直径5μmより大)は最大で1m程度の範囲で落下しそれ以上の範囲には及ばないといわれています。したがってインフルエンザ感染の疑われる症例は、個室隔離または集団隔離を行うか、ベッド間にパーティションを設置する、または2m以上ベッド間隔をとるなどの飛沫予防策をとります(表8)。患者から1m以内に接近する場合にはサージカルマスクを着用し、患者が移動する場合には患者自身にサージカルマスクを着用させます。その他の点ではほとんど通常の標準予防策を行うことで対応し、特別な環境消毒などの必要はありません1、3)。吸引カテーテルなど気道粘膜に触れる器材を原則使い捨てとし、ネブライザーや加湿器の湿気・水分が通過・貯留する部分は少なくとも、熱水(80℃10分)、次亜塩素酸ナトリウム(100ppm、1時間浸漬)、場合により消毒用エタノールを用いて頻繁に消毒し、患者間においては原則として高水準消毒または滅菌することは、インフルエンザ症例に使用したかどうかにかかわらず日常的な標準予防策です7、41)

表8 飛沫予防策のポイント

予防策の種類 病室隔離 マスクの着用
飛沫予防策 個室隔離または集団隔離を行うか、ベッド間にパーティションを設置する、または2m以上ベッド間隔をとる ・患者から1m以内に接近する場合にはサージカルマスクを着用する
・患者が移動する場合には患者自身にサージカルマスクを着用させる

ノンクリティカル器具や物品・環境表面を経由したインフルエンザウイルスの集団発生は報告されておらず特別な消毒の必要はありませんが、インフルエンザ症例の気道分泌物で物品が高度に汚染された場合など消毒を行う場合にはアルコール(場合により200~1,000ppm次亜塩素酸ナトリウム液)を用います。インフルエンザウイルスはエンベロープのあるウイルスでアルコールによる消毒が有効です。ウイルスはエンベロープのあるウイルスとエンベロープのないウイルスに区別することができ、一般にエンベロープのあるウイルスは消毒薬抵抗性が比較的弱いといわれています6、7)

インフルエンザの予防方法としてはこのほかに、高齢者や医療従事者に対するインフルエンザワクチンの接種や抗インフルエンザウイルス薬の予防的投与などがあります。NOTE 2を参照ください。

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