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病院感染対策のポイント

第3章 診療科別の予防策

No. 11 透析室における予防策 -血液に対する厳密な標準予防策-

慢性透析患者のための透析室ではどのような予防策を取ったらよいでしょうか?

慢性透析患者のための透析室においては、多くの患者に対して血液に直接接触する器具を用いた処置を頻繁に行い、血液が処置台などに付着する頻度が多いため血中ウイルスの伝播する可能性が特に高く、一般病棟におけるよりも血液に対して厳重な標準予防策をすべての患者について行う必要があります8、83)。医療従事者の手指、処置に用いるノンクリティカル器具、処置台などの周辺環境における血液汚染が関与して血中ウイルスが患者間で伝播したと示唆される例が報告されています84)

したがって処置をする場合や患者周辺に接触する場合には常に手袋を着用し、処置後手袋をはずして手洗いを行います(表13)。ベッドチェア、カウンターテーブル、透析機器表面などベッド周辺の環境表面には血液が付着している可能性があるため、はっきりと目に見える汚染がなくても、患者毎に十分な清拭・清掃を行い、また聴診器などのノンクリティカル器具をアルコールで清拭します。目に見える血液汚染がある場合には一般病棟におけるのと同様念入りに清拭し、仕上げとして次亜塩素酸ナトリウム(ごく小範囲にのみ適用)またはアルコールを用います。透析室に持ち込まれた物品は、使い捨てもしくは同一患者のみに使用し、持ち込んだ物品を共通の清潔区域に戻す、または他の患者に使用する前に清拭・洗浄を行います。直接血管内に挿入する注射針を再利用しないことや輸液を原則として患者間で共用しないことは一般病棟においても同様です8)

表13 透析室における標準予防策

予防策の種類 手袋の着用と手洗い ノンクリティカル器具、頻繁に接触する
周辺物品・環境の清拭・洗浄・清掃
標準予防策 処置をする場合や患者周辺に接触する場合には常に手袋を着用し、処置後手袋をはずして手洗いを行う ・聴診器などのノンクリティカル器具は患者毎にアルコールで清拭する
・ベッドチェア、カウンターテーブル、透析機器表面などベッド周辺の環境表面は、はっきりと目に見える汚染がなくても、患者毎に清拭・清掃する
・目に見える血液汚染がある場合には一般病棟におけるのと同じ

また、慢性透析患者は血中ウイルス感染する可能性が通常よりも高いため、定期的にHBV、HCV検査を行います。米国のガイドラインは8)HBs抗原陽性の慢性透析患者は専用の病室と透析機器において処置を行い、担当の医療従事者は他のHBV感受性患者の処置を行わないという厳重な予防策を勧告しています。ただしHIV感染については、透析においてはほとんど感染例がないとしてHIV検査の実施は勧告していません。

なお、透析機器に関連する細菌感染も報告されています85)。透析回路は血流回路と透析液回路が微生物の通過できない透析膜で遮断されており、何らかの理由でリークが発生しないかぎり血流回路側の無菌性は確保されています。ただし透析液回路側は無菌ではなく透析機器の回路構造になんらかの欠陥がある場合や細菌汚染によりエンドトキシン濃度が高い場合などには、患者に血流感染や発熱などの影響をもたらす可能性があります。したがって透析液回路側は定期的に消毒と洗浄を行うことが一般的です。消毒・洗浄方法の詳細は透析機器により異なるので各説明書を参照します。

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