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病院感染対策のポイント

第4章 処置部位別の予防策

No. 15 血流感染の予防策 -血管内留置カテーテル挿入部位の処置-

血管内留置カテーテル挿入部位の処置はどのように行えばよいでしょうか?

病院における血流感染の多くは血管内留置カテーテルに関連しているといわれます。血管内留置カテーテル関連の血流感染の発生率はカテーテルの挿入部位や診療科によって大きく異なりますが、血管内留置カテーテルの留置期間が重要なリスク要因であるため、通常1,000 catheter-days(カテーテル留置期間1,000日)あたりの感染率に注目してサーベイランスが行われます注)。末梢静脈カテーテルよりも中心静脈カテーテル(CVC)に関連する血流感染の発生率が高く注意が必要です119)。米国のICUにおけるデータによれば中心静脈カテーテル関連血流感染率は診療科により2.9~9.7/1,000 central line-daysとなっています120)。その死亡率(attributable mortality)は12~25%ともいわれており119)、重大な病院感染症のひとつです。血管内留置カテーテル関連血流感染の予防にはカテーテルの選択、挿入時や留置中の予防策などさまざまな事項が関連しますが、ここでは主に中心静脈カテーテル挿入部位の挿入時の処置と留置中のケアについて述べることとします。その他の事項については各ガイドライン1、119、121)を参照ください。

血管内留置カテーテル関連感染起因菌の侵入経路としては、(1)血管内留置カテーテル挿入部位からの侵入、(2)ルート接合部からの侵入、(3)輸液自体の汚染が考えられます。このうち血管内留置カテーテル挿入部位の皮膚に存在する常在菌や医療従事者の手指などから伝播した通過菌が、カテーテルの外壁を伝わって血管内に侵入する経路は最も重要な侵入経路で、この経路を遮断するためには生体消毒薬の適用を含む挿入部位の皮膚ケアが重要です。

血管内留置カテーテル挿入部位の皮膚の前処置は、末梢血管への挿入であっても念入りに行うことが必要で、特に中心静脈カテーテルの挿入時には手術部位の皮膚に準じた前処置を行う必要があります。この場合に用いる生体消毒薬としては、10%ポビドンヨード液、0.5%クロルヘキシジンエタノール液などがあります。複数の無作為制御臨床試験をメタアナリシスによって分析した研究によると、クロルヘキシジンを用いた場合のリスク比はポビドンヨードを用いた場合の0.49、中心静脈のみの場合は0.51であるといわれています122)。ただしクロルヘキシジンの濃度や対象患者の年齢などにより2剤に有意差が認められた場合と認められなかった場合があります123)。日本においては、クロルヘキシジンエタノール液を内頸静脈穿刺部位に用いてアナフィラキシーショックが発現したとする報告が存在し適用時には注意が必要です124)。また認可された適用部位や濃度に制限があることにも注意が必要です。なお、生体消毒薬を適用する前にアセトンを用いて皮膚を脱脂することはかえって皮膚を刺激し感染率を高めるおそれがあるといわれています125)。中心静脈カテーテルの挿入操作は、厳重な手洗いを行い滅菌手袋を着用の上、長い袖の滅菌ガウン、マスク、帽子、大きな滅菌覆布などマキシマムバリアプリコーションによって行います119)

カテーテル挿入期間中における挿入部位のケアにはさまざまな方法がありますが、何が最善の方法であるかについてはいまだ不明の部分があります。挿入部位の被覆にガーゼを用いた場合、透明フィルムを用いた場合、ポビドンヨード含有の透明フィルムを用いた場合の菌陽性率を比較して差がなかったという報告もあり126)、これらドレッシング材の選択によって感染率が変化するという明確な証拠はいまだありません。また、ドレッシング材は週に1回程度から、毎日交換する場合までありますが、頻繁に交換することが感染率を低下させると立証されているわけではありません。末梢静脈カテーテルは72~96時間で交換するといわれていますが119)、中心静脈カテーテルでは交換期間と感染率には特に関連がなく定期的に交換するべきでないといわれています。カテーテルの挿入部位に抗菌薬や生体消毒薬の軟膏を適用する場合がありますが、必ずしもこれによって感染率が低下するとは限らないので、CDCガイドライン119)は抗菌薬軟膏を漫然と定期的に適用するべきではないとしています。また末梢静脈の場合は生体消毒薬軟膏についても漫然と定期的に適用するべきでないとしています。ただし、血液透析用カテーテルの場合にはポビドンヨードゲルの適用に効果があるとの報告を参照し127)、適用を推奨しています。

輸液と血管内留置カテーテルを結ぶルートにはさまざまな接合部があり、これらの接合部が医療従事者の手指などにより微生物汚染を受けて、輸液ルート内に微生物が侵入する場合もあります。したがってルート操作前には手洗いを行い、接合部の無菌的操作を行う必要があります。また市販の輸液は無菌であることが保証されていますが、病院内におけるさまざまな操作を経て輸液自身が微生物により汚染されることがあります。輸液の混注操作は薬剤部により無菌的に行うことが望ましく、同一容器の輸液を患者間で共用する、または多数回使用することは原則として避けるべきです。

注:
ICUなどにおける感染率が5/1,000であっても、その月のcatheter-daysが600日(20床×30日)であれば3例、200日(6~7床×30日)であれば1例、1,200日(40床×30日)であれば6例の感染症が認められたことを意味する。

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