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病院感染対策のポイント

第2章 感染起因微生物と予防策

NOTE1 感染症予防法などの法的制度について

(2018.11.26追記)
*ご注意ください:本内容は最新の感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律の情報ではありません。届出等に関する情報は 厚生労働省のホームページを参照ください。

日本における感染症全般の予防に関する基本的な法的制度は1998年制定の感染症予防法68)とその関連政令・省令69、70)など、および2003年の法改正によって、一ないし五類感染症、新感染症、指定感染症などに分類され規定されています。感染症予防法の制定に伴い、1897年制定の伝染病予防法、1948年制定の性病予防法、1989年制定の後天性免疫不全症候群の予防に関する法律は廃止されました。ただし結核については1951年制定の結核予防法52)とその後の法改正や関連政令・省令などが基本的な制度を規定しています。これらの現行制度を遵守することは医療機関の法的責任としてはもちろん、適正な病院感染対策を行う上でも重要な事項です。

感染症予防法の骨子は表11に示したとおりです。対象となる感染症に関して、すべての医師、指定届出機関などに保健所など衛生当局を経由して知事に届出を行う義務が課せられており、一類感染症に関する感染症指定医療機関への入院勧告規定、二類感染症に関する準用規定、一類・二類・三類感染症について感染症患者などに対する一定の就業制限規定などが定められています。また結核予防法により52)、結核に関しては、すべての医師に2日以内の届出を行う義務が課せられており、公衆に結核を伝染させるおそれがある業務について結核患者に対する一定の従業禁止規定や結核療養所などへの一定の入所命令規定などが定められています。また学童の出席停止については感染症予防法の制定に対応した学校保健法施行規則による規定があり、その内容は表12のとおりです71)。感染症予防法においては感染症患者の人権にも配慮して、入院や就業、休暇は感染症患者自身の同意や自発により行われることが基本とされています72)

医療従事者についてもこれらの法的制度が規定する一定の就業制限に該当する場合には就業を制限することが当然必要ですが、医療従事者から患者への病院感染を予防するためには、就業制限に関する法的制度がない感染症の場合も含め、各医療機関の判断においてさらにきめ細かく就業を制限することが適切です。医療従事者の就業制限については、Summary (3) を参照ください。

1999年4月1日の感染症予防法の施行以降の統計は、感染症情報センターの感染症発生動向調査週報(IDWR):http://idsc.nih.go.jp/kanja/index-j.htmlと結核予防会結核研究所の結核発生動向調査月報報告:http://www.jata.or.jp/tbmr/tbmr.htmで見ることができます。感染症予防法において特定感染症予防指針を作成するとされた感染症は、インフルエンザ、後天性免疫不全症候群、性器クラミジア感染症、性器ヘルペスウイルス感染症、尖形コンジローム、梅毒、淋菌感染症で、既に指針が公表されています73~75)

感染症予防法に基づく消毒と感染症患者の搬送に関しては、1999年に厚生科学研究費補助金、新興・再興感染症研究事業による「消毒と滅菌のガイドライン」7)、2000年に「感染症患者の搬送ガイドライン」76)が厚生省監修により刊行されています。また特定感染症指定医療機関(新感染症、一類感染症、二類感染症を担当)、第一種感染症指定医療機関(一類感染症、二類感染症を担当)、第二種感染症指定医療機関(二類感染症を担当)などの施設基準に関しては、同新興・再興感染症研究事業による施設基準に関する手引きが2001年に出版されています77)。

なお食中毒に関しても食品衛生法によりすべての医師に24時間以内の届出(文書、電話または口頭)を行う義務が課せられており78)、たとえば腸管出血性大腸菌による食中毒の場合には保健所などに感染症予防法に基づく届出と食品衛生法に基づく届出を行う制度となっています。感染症予防法においては無症状病原体保有者でも腸管出血性大腸菌が検出された場合には届出が行われますが68、79、80)、食品衛生法においては食中毒またはその疑いがあると診断した場合に届出を行うと規定されています。食中毒の場合には食品衛生法に基づき保健所が関連する届出をまとめて調査し知事へ報告します。伝染病予防法の廃止に伴い1999年、食品衛生法施行規則における食中毒の病因物質としてコレラ菌、赤痢菌、チフス菌、パラチフスA菌が追加されました81)。その結果、食中毒の病因物質は以下のように分類され、保健所が知事に報告することとなりました。これらの統計は厚生労働省のホームページ:http://www.mhlw.go.jp/topics/syokuchu/index.htmlで見ることができます。

1.サルモネラ属菌
2.ぶどう球菌
3.ボツリヌス菌
4.腸炎ビブリオ
5.腸管出血性大腸菌
6.その他の病原大腸菌
7.ウエルシュ菌
8.セレウス菌
9.エルシニア・エンテロコリチカ
10.カンピロバクター・ジェジュニ/コリ
11.ナグビブリオ
12.コレラ菌
13.赤痢菌
14.チフス菌
15.パラチフスA菌
16.その他の細菌
17.小型球形ウイルス
18.その他のウイルス
19.化学物質
20.植物性自然毒
21.動物性自然毒
22.その他
23.不明

日本における予防接種に関する基本的な法的制度は、1948年制定の予防接種法82)とその後の法改正や関連政令・省令によって規定されています。ただし結核に関連するBCG接種やツベルクリン反応検査は、結核予防法52)とその後の法改正や関連政令・省令などが基本的な制度を規定しています。詳しくはNOTE 2を参照ください。

表11 感染症予防法における感染症の分類 (太字は2003年11月5日の法改正施行による)

感染症の分類 感染症の種類




医師がただちに届出

就業制限(飲食物の製造、販売、調製又は取扱いの際に飲食物に直接接触する業務、他者の身体に直接接触する業務)

消毒等の対物措置
(例外的に、建物への措置、通行制限等の措置も適用対象とする)

エボラ出血熱、クリミア・コンゴ出血熱、ペスト、マールブルグ病、ラッサ熱
重症急性呼吸器症候群、痘そう




医師がただちに届出

就業制限(飲食物の製造、販売、調製又は取扱いの際に飲食物に直接接触する業務、多数の者に接触する業務)

消毒等の対物措置

急性灰白髄炎、コレラ、細菌性赤痢、ジフテリア、腸チフス、パラチフス




医師がただちに届出

就業制限(飲食物の製造、販売、調製又は取扱いの際に飲食物に直接接触する業務)

消毒等の対物措置

腸管出血性大腸菌感染症




医師がただちに届出

就業制限なし

媒介動物の輸入規制

消毒、ねずみ等の駆除等の措置

E型肝炎、ウエストナイル熱、A型肝炎、エキノコックス症、黄熱、オウム病、回帰熱、Q熱、狂犬病、高病原性鳥インフルエンザ、コクシジオイデス症、サル痘、腎症候性出血熱、炭疽、つつが虫病、デング熱、ニパウイルス感染症、日本紅斑熱、日本脳炎、ハンタウイルス肺症候群、Bウイルス病、ブルセラ症、発しんチフス、ボツリヌス症、マラリア、野兎病、ライム病、リッサウイルス感染症、レジオネラ症、レプトスピラ症









医師が7日以内に届出

就業制限なし

感染症発生状況の収集、分析とその結果公開、提供

アメーバ赤痢、エキノコックス症、急性ウイルス性肝炎(E型肝炎及びA型肝炎を除く)急性脳炎(ウエストナイル脳炎及び日本脳炎を除く)、クリプトスポリジウム症、クロイツフェルト・ヤコブ病、劇症型溶血性レンサ球菌感染症、後天性免疫不全症候群、ジアルジア症、髄膜炎菌性髄膜炎、先天性風しん症候群、梅毒、破傷風、バンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌感染症、バンコマイシン耐性腸球菌感染症









指定届出機関が翌週の月曜日に届出
*印は翌月の初日に届出)
就業制限なし

感染症発生状況の収集、分析とその結果公開、提供

●小児科のある病院または診療所
RSウイルス感染症、咽頭結膜熱、A群溶血性レンサ球菌咽頭炎、感染性胃腸炎、水痘、手足口病、伝染性紅斑、突発性発しん、百日咳、風しん、ヘルパンギーナ、麻しん(成人麻しんを除く)、流行性耳下腺炎

●小児科または内科のある病院または診療所
インフルエンザ(高病原性鳥インフルエンザを除く)

●眼科のある病院または診療所
急性出血性結膜炎、流行性角結膜炎

●産婦人科・産科・婦人科、性病科、または泌尿器科・皮膚科・皮膚泌尿器科のある病院または診療所
性器クラミジア感染症*、性器ヘルペスウイルス感染症*、尖コンジロー*、淋菌感染症*

●300床以上の病院で内科および外科を含むもの
クラミジア肺炎(オウム病を除く)、細菌性髄膜炎、ペニシリン耐性肺炎球菌感染症*、マイコプラズマ肺炎、成人麻しん、無菌性髄膜炎、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症*、薬剤耐性緑膿菌感染症*




一類感染症に準ずる 知事による応急対応、または政令による要件指定
国も必要な指示をすることができる
(人から人に伝染すると認められる疾病であって、既に知られている感染性の疾病とその病状又は治療の結果が明らかに異なるもので、当該疾病にかかった場合の病状の程度が重篤であり、かつ、当該疾病のまん延により国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがあると認められるもの)




一類・二類・三類感染症に準ずる
(政令で指定する)
政令による1年を限度とした時限指定
(既に知られている感染性の疾病であって、国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがあるもの)

感染症予防法68)と関連政省令69、70)、その後の改正(2003年11月5日施行)より作成。
詳細については関連法令の原文を参照。

 

伝染病の種類 出席停止期間(注)


エボラ出血熱
クリミア・コンゴ出血熱
ペスト
マールブルグ病
ラッサ熱
急性灰白髄炎
コレラ
細菌性赤痢
ジフテリア
腸チフス
パラチフス
治癒するまで


インフルエンザ
百日咳
麻疹
流行性耳下腺炎
風疹
水痘
咽頭結膜熱
結核
解熱した後二日を経過するまで
特有の咳が消失するまで
解熱した後三日を経過するまで
耳下腺の腫脹が消失するまで
発疹が消失するまで
すべての発疹が痂皮化するまで
主要症状が消退した後二日を経過するまで
病状により学校医その他の医師において伝染のおそれがないと認めるまで
 
ただし、病状により学校医その他の医師において伝染のおそれがないと認めたときはこの限りでない。


腸管出血性大腸菌感染症 
流行性角結膜炎
急性出血性結膜炎
その他の伝染病
病状により学校医その他の医師において伝染のおそれがないと認めるまで

学校保健法施行規則71)(2002年10月現在)より作成。
詳細については関連法令の原文を参照。

(注)第一種もしくは第二種の伝染病患者のある家に居住する者またはこれらの伝染病にかかっている疑いがある者については、予防処置の施行の状況その他の事情により学校医その他の医師において伝染のおそれがないと認めるまで。第一種または第三種の伝染病が発生した地域から通学する者についてはその発生状況により必要と認めたとき、学校医の意見を聞いて適当と認める期間。第一種または第二種の伝染病の流行地を旅行した者についてはその状況により必要と認めたとき、学校医の意見を聞いて適当と認める期間。

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