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Point
病院感染対策のポイント

はじめに

近年は日本においてもエビデンス、つまり科学的根拠に基づいた病院感染対策という考え方が主流を占めるようになり、旧来からの慣習的な感染対策について、効果に関する根拠のない対策や患者や医療従事者の安全をそこねる対策は廃止して、科学的で合理的な対策に努力を集中することが多くの医療機関において推進されるようになりました。2002年2月には日本においてはじめてのエビデンスに基づく包括的な感染制御の勧告*が刊行され、広くすべての医療機関において適切な感染対策を実施するための指針が示されました。

しかしながら、個々の感染対策についてその効果を明確に確認した臨床的研究の数はいまだ限られていることも事実であり、根拠に基づく感染対策をマニュアル、つまり規則書として普遍的に示すことは容易ではありません。臨床的効果があると確認されている対策、臨床的効果がない、もしくはかえって臨床に問題があると確認されている対策もありますが、臨床的効果があるとは確認されていないが基礎的な知見から合理的と判断される対策や実務的な配慮からコンセンサスを得た対策も存在し、多くの事項について今なお国際的な議論が進行中です。また、感染対策マニュアルは個々の医療機関ごとにその状況に応じた実務的なものとすることが必要であることは言うまでもありません。

本書は、病院感染における基本的な感染予防策についてQ&A形式で解説を行い、根拠のある対策とは何か、合理的な対策とは何か、各医療機関に判断をゆだねられた事項は何かについて整理を試みるものです。感染制御の方法には原因微生物の殺滅、感染経路の遮断、一般媒介物の管理、抗微生物薬の予防的投与、ワクチン接種による免疫化、その他感染防御機能の増強などがありますが、ここでは主に原因微生物の殺滅と感染経路の遮断による予防策について消毒を中心に述べます。感染制御に携わる医療機関のみなさまが科学的で実務的な予防策を考察する上で一助となれば幸いです。

 

2002年11月 
NTT東日本関東病院 名誉院長 小林 寛伊 
NTT西日本東海病院 外科部長 大久保 憲 
吉田製薬株式会社 代表取締役 吉田 俊介 

*小林寛伊,吉倉廣,荒川宜親編集:エビデンスに基づいた感染制御.メヂカルフレンド社, 東京, 2002.
 
追記: 本コーナーは小林寛伊、大久保憲ほか.病院感染対策のポイント.協和企画,東京,2004.の全文(一部の表を除く)を著者、出版社の了解を得て転載するものです。

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