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Carlisle
医療関連感染情報季刊誌より
Vol.9 No.2 Summer 2004

空調システム汚染に関連した外科患者における侵襲性アスペルギルス感染症のアウトブレイク

Lutz, B.D., Jin, J., Rinald, M.G., et al.
Outbreak of invasive Aspergillus infection in surgical patients, associated with a contaminated air-handling system.
Clin. Infect. Dis., 37:786-793, 2003.

Aspergillus(アスペルギルス)種は、直径2~4μmの非常に多くの分生子を産生する耐熱性の糸状菌であり、いたるところに存在する。これらの小さなサイズの菌胞子は、即座に気流に散乱し、人の肺胞に沈着する。しかしながら、通常は日常的にこれらの菌胞子を吸入しても、アスペルギルス感染症を起こすことはまれである。アスペルギルス感染を最も起こしやすいのは、免疫不全状態の患者における肺疾患である。傷口からの感染はめったに生じないが、心臓や腹部の手術後に生じたとの報告はある。通常、病院におけるアスペルギルス感染症は、建築や修繕の期間に生じることが多いが、アスペルギルスによる環境汚染の増加によって生じることもありうる。空気汚染によるものが多く、空調システムの直接的な汚染によるものはまれである。そこで、今回、手術室の空調システムの汚染が原因であることが明らかとなった、術後患者における侵襲性アスペルギルス感染症の発現について紹介する。

 三次救急病院において、1999年3月から2001年3月までの2年間に、診療録より6例のアスペルギルス感染症の発現が確認された。切除傷、腹膜炎、同種移植片腎炎、縦隔炎の42~72歳(男性2例、女性4例)の患者であり、アスペルギルス種(Aspergillus fumingatus 4例、Aspergillus flavus2例)による感染が確認されている。これらの患者において、最初にアスペルギルスが培養されたのは2000年10月29日、最後に培養されたのは2001年2月21日であったが、いずれの症例も、2000年10月13日から25日までの12日間に手術を受けた患者であった。

 そこで、手術室の空気の質を評価するために、アスペルギルス分生子に対する代理マーカーとして、粒子数が測定された。その結果、多くの手術室において、3μm以上のサイズの分子が、通常の3倍から1,000倍の濃度に増加していることが観察された。さらに、ビデオカメラによる観察で、通気管や最終フィルターの可変空気流量ユニットの遮断部分において、湿気や汚染が確認された。

 今回、手術室における空調システムを改善した後では、さらなる侵襲性アスペルギルス感染症は確認されず、このアウトブレイクは可変空気流量ユニットにおける遮断材料の劣化によるものであることが示唆された。

(訳:渡辺裕子、木津純子)

Carlisle Vol.9 No.2 p8-11 Summer 2004

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