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Carlisle
医療関連感染情報季刊誌より
Vol.9 No.3 Autumn 2004

メチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症における市中型と病院型の比較

Naimi, T.S., LeDell, K.H., Como-Sabetti, K., et al.
Comparison of community-and health care-associated Methicilline-Resistant Staphylococcus aureus infection.
JAMA, 290:2976-2984, 2003.

 メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)は、1960年代に病院感染の病原菌として認識され、手術、長期療養施設への滞在、透析、カテーテル留置など特定の危険因子を有する入院患者に発症する病院型病原菌と考えられてきた。しかしながら、最近では、そのような危険因子を有しない、病院外(市中)の患者においても、発症がみられるようになってきており、これらを市中型MRSA症例と呼んでいる。今回、市中型MRSA症例について、疫学的、微生物学的特性について、病院型MRSA症例と比較検討した。

 2000年1月1日~12月31日に、ミネソタ州中央検査機関12箇所において特定されたMRSA感染症患者における前向きコホート研究を行った。MRSA感染者1,100人中、市中型MRSA症例は131人(平均年齢23歳)、病院型MRSA症例は937人(68歳)であり、32人は情報不足のため分類不能であった。市中型の臨床所見では、病院型と比較し、皮膚および軟組織の感染症が多かった(75%対37%。OR, 4.25;95%信頼区間2.97-5.90)。微生物学的特性としては、市中型MRSA分離株は、4種類の抗菌薬に対し感受性を有するものが多かったが(補正後OR, 2.44;95%信頼区間1.35-3.86)、市中型症例の多くは、感染株が感受性を有しない抗菌薬で治療開始されていた。また、市中型MRSA分離株は、一変量解析、多変量解析ともに、パルスフィールドゲル電気泳動による2つのクローン群の、いずれかの1群に属することが多かった。さらに、市中型MRSA分離株は、通常、病院型MRSA分離株と異なる外毒素遺伝子特性(例;Panton Valentine leukocidin遺伝子)を示すことが認められた。

 以上より、市中型MRSA症例と病院型MRSA症例では、人口統計学的特性および臨床像が異なっていることが認められた。また、その分離株も微生物学的に明らかに異なっていた。このことは、大部分の市中型MRSA菌株は医療施設に由来したものではないことを示唆しており、その微生物学的特性が市中における感染症発生に関与していると考えられる。今後、臨床医は、ブドウ球菌が原因菌と考えられる感染症に罹患した重症の外来患者の治療には、もはや経験的治療法としてのβラクタム系抗菌薬による治療には頼れない、ということを認識しておくべきであろう。

(訳:木津純子)

Carlisle Vol.9 No.3 p8-11 Autumn 2004

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