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Carlisle
医療関連感染情報季刊誌より
Vol.9 No.3 Autumn 2004

航空機における重症急性呼吸器症候群(SARS)の伝播

Olsen, S.J., Chang, H.L., Cheung, T.Y., et al.
Transmission of the severe acute respiratory syndrome on aircraft.
New England J. Medicine, 349:2416-2422, 2003.

 重症急性呼吸器症候群(SARS)はSARS関連コロナウイルス(SARS-CoV)に感染した患者が航空機を利用し遠方へ行ったことが最大の原因で、世界中に急速に広がった。感染患者の多くは通常の航空機で旅行するが、航空機によるSARSの伝播の危険性については、明確にされていない。

 われわれは、少なくとも1人以上のSARS患者を運んだ3機の飛行機(フライト1:2003年2月21日ボーイング777-300便、香港発台北行き、乗員乗客315人。フライト2:3月15日ボーイング737-300便、香港発北京行き、乗員乗客120人。フライト3:3月21日ボーイング777-300便、香港発台北行き、乗員乗客246人)のうちの1機(フライト2)について、後日少なくとも10日間にわたって乗員乗客に対する追跡調査を試みた。指標となった全ての患者はSARSが疑われるため、世界保健機関(WHO)の判定基準に照らし合わされ、指標となったケースまたは二次伝播ケースは逆転写ポリメラーゼチェーン反応または血清学的試験でSARS-CoVが陽性であることを確認した。

 SARSの兆候を示した人(1人)およびその他119人の乗員乗客を運んだフライト後、16人がSARSになったことが実験室で確認され、2人がSARSの確定診断を受け、そして4人がSARSに感染したことが報告されたが、追跡調査はできなかった。22人の患者のフライトから症状が出るまでの平均時間は4日間(2日から8日間の範囲)であり、フライトの前後でSARS患者との接触は認識していなかった。乗客の中でSARSに罹るのは、SARS患者との物理的接近度に関係した。すなわち、SARS患者の前3列の23人中8人がSARSに感染したのに対して、それ以外の席の88人中10人がSARSに感染するという差異が認められた(相対リスクは3.1であり、95%信頼区間は1.4と6.9であった)。

 逆に、4人のSARSの兆候を示した人々を運んだフライト3では、せいぜい1人へのSARSの伝播が認められただけであり、また、SARSの症状が出る前(潜伏期間)の人を運んだフライト1では乗員乗客の中にSARSに感染した人は認められなかった。

 以上のことから、SARS患者が病気の症状が出ているときに航空機で移動した場合、他の乗客らにSARSが伝播し、感染することがわかった。航空機内での伝播のリスクを低減する手段(たとえば、ヘパフィルターによる機内の換気等)により、SARSの伝播防止がある程度保証されると考えられる。

(訳:坂上吉一)

Carlisle Vol.9 No.3 p8-11 Autumn 2004

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