Y's Square:病院感染、院内感染対策学術情報 > 感染対策学術情報 > 医療関連感染情報季刊誌より(Carlisle) > Review > 感染起因菌 > その他の微生物 > 一人のSARS患者に接した香港の医学生の間でのSARS集団
Carlisle
医療関連感染情報季刊誌より
Vol.9 No.3 Autumn 2004

一人のSARS患者に接した香港の医学生の間でのSARS集団

Wong, T.W., Lee, C.K., Tam, W., et al.
Cluster of SARS among medical students exposed to single patient, Hong Kong.
Emerging Infectious Diseases, 10:269-276,2004.

 われわれは香港のプリンスウエールズ病院での最初の重症急性呼吸器症候群(SARS)患者(2003年2月27日に入院し一旦退院したが、3月4日に再入院した)に対して、SARSであることを認識する以前に、対象患者に接していた学生間におけるSARSの伝播パターンを研究した。SARSである16人の学生および50人の健康な学生を含めて、2003年3月4日から10日の間に指標となった患者の収容棟を訪れた66人の医学生について回顧的なコホート研究を実施した。

 SARSに感染するリスクは、指標となった患者の病室を訪れていた医学生では、訪れていない医学生に比べて7倍高かった〔相対リスクは比較対照が20人中の1人(5%)に対して27人中10人(41%)で、7.4であった。95%信頼区間は1.0対53.3であった〕。SARSの罹患率は指標となった患者に接触した接近度に比例して増大した。けれども、同じ病室に居た8人の医学生のうち4人は指標となった患者の1m以内には居なかったが、SARSに感染した。指標となった患者への接近度はSARSの伝播に深く関連し、これはSARSの原因であるコロナウイルスを含んだ小滴の拡散と一致した。

 結論として、このSARSの集団(クラスター)は特別な感染制御手段を講じないときには、健康な人々の中にSARSを拡散させる能力を有することが示唆された。SARSは主として直接的な接触や吸い込んだ飛沫を通して伝播するようであり、この伝播過程をふまえた特別な感染制御対策が伝播防止に効果的であると考えられる。けれども、われわれはこのSARSの流行において、ウイルスが伝播する際の汚染媒介物または小さなエアゾールの役割を排除することはできない。

 いずれにせよ、この大きな集団が異なった伝播メカニズムに由来するのか、あるいは患者からの膨大なウイルスの排出または不適切な感染制御手段に基づくのかは明らかではないが、SARSは非常に速やかに拡散することは明白な事実である。明らかに独特なパターンを持つ集団を含めて、多くの感染伝播が発生した事例をより良く理解することが、SARSの流行の可能性および制御手段の効果を評価するカギである。

(訳:坂上吉一)

Carlisle Vol.9 No.3 p8-11 Autumn 2004

関連サイト