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Carlisle
医療関連感染情報季刊誌より
Vol.9 No.4 Winter 2005

重症急性呼吸器症候群ウイルスの空気伝播の科学的根拠

Yu, I.T.S., Li, Y., Wong, T.W., et al.
Evidence of airborne transmission of the severe acute respiratory syndrome virus.
N. Engl. J. Med., 350:1731-1739, 2004.

 重症急性呼吸器症候群(SARS)ウイルスの伝播の仕方については不明確な部分が非常に多い。われわれは香港におけるSARSの集団発生の場合における時間的および空間的分布状況を分析し、そして空気の流れの検討に使用するモデルで、ウイルスを含んだエアロゾルの水柱の三次元拡散をシミュレーションし、これらのデータの相関性を検討した。

 2003年アモイガーデン集合住宅におけるSARSの最初の187例の分布状況を、発現日および存在場所について特定した。さらに、理論式を使用し、位置(建物、階およびアパートの向いている方向)と感染率との間の関連性について検討した。指標となった患者から発生するウイルスを含んだエアロゾルの空気中での拡散を、コンピュータを用いた流体力学および多数室計算モデルからなる気流力学の手法を使用し、調査した。

 流行曲線から、疾病の突発(流行)の発生源が示唆された。発生源となった全て(5人のみ)の患者は7つの建物(A棟からG棟まで)に住んでいた。そして、指標となる患者およびSARSである他の患者の半数以上(99人の患者)はE棟に住んでいた。E棟の中層階(14~23階)および高層階(24~36階)の住民は、低層階(4~13階)に住む住民よりもSARSに対して有意に高リスクであった(中層階および高層階での発生数がそれぞれ320人中46人および416人中41人に対して、低層階では320人中12人、オッズ比では5.15および3.12に対して1.00であった)。すなわち、この見解は標準的な住宅から発生する空気の流れ中における汚染した暖かい空気の上昇気流のパターンと一致した。異なった棟におけるリスクは多数室計算モデルを使用して提唱されるウイルス濃度に相関した。すなわち、B棟、C棟およびD棟におけるリスク分布は、コンピュータを用いた流体力学モデルの使用で提唱されるウイルスを含んだエアロゾルの三次元的拡散パターンとよく一致した。

 ウイルスの空気中での拡散はSARSの大集団内での流行を説明していると考えられ、そしてSARSの予防と制御のための将来的な努力は、このウイルスの空気中での拡散の可能性を考慮に入れなければならない。

(訳:坂上吉一)

Carlisle Vol.9 No.4 p8-11 Winter 2005

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