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Carlisle
医療関連感染情報季刊誌より
Vol.10 No.1 Spring 2005

医師における手指衛生:実施状況、意見、認識

Pittet, D., Simon, A., Hugonnet, S., et al.
Hand hygiene among physicians:performance, beliefs, and perceptions.
Ann. Intern. Med., 141:1-8, 2004.

手指衛生は、交差感染を防ぎ、病院感染を減少させる重要な手段であると認識されている。しかし、このような単純な操作であるにもかかわらず、十分に遵守されておらず、特に多くの病院において医師の遵守率の低さが問題となっている。本研究では、手指衛生を遵守できない要因を明らかにするとともに、医師の手指衛生に対する意見、認識を評価することを目的とした。

ジュネーブ大学病院において、163人の医師を対象に、日常業務における手指衛生の実施状況を観察し、さらに、自己報告質問書で手指衛生に関する認識について調査し、ロジスティック回帰分析を実施した。調査期間中、573人の患者治療中に887回の手指衛生を実施していた。全遵守率は57%であり、専門分野によって有意な差があり、内科の87%が最も高く、次いで、老人科、小児科であり、麻酔科が23%と最も低かった。また、免許のある医師と比べて、医学生のほうが遵守率は高い傾向であった。また、ハンドスクラブ液の小型台車がある場合などハンドスクラブ液を簡単に使用できる環境にある時には遵守率が有意に高かった。自己報告質問書(回答率94%)において、73%の医師は観察されていたことを知っていたと回答しており、観察されていると認識している時には遵守率が有意に高いことが認められた。また、仕事量の多さは有意に遵守率を低下させていた。85%の医師が手指衛生の不履行により患者に交差感染のリスクがあることを知っており、手指衛生を遵守しようと心がけ(77%)、遵守率の改善に意欲的であった(74%)。患者皮膚への接触、点滴装置の取扱い、同一患者における異なる身体部位への接触の前後では高い遵守率を示したが、手袋を外した後では30%以下になった。手指衛生に対して、65%の医師は質問内容に対する知識を有していたが、67%は手指衛生を難しい操作だと考えていた。

手指衛生に対する医師の意見と認識、調査の変数の解析により、医師の遵守率は、観察されているという自覚、他の同僚に対して手本になろうという信念、患者と接触後の手指衛生に対する積極的な態度、ハンドスクラブ液が容易に使用できる環境に関連していることが認められた。一方、仕事量の多さ、交差感染の危険性が高い手指衛生、特定の医学技術分野(外科、麻酔科、救急医学、集中治療室)は、遵守率を下げる危険因子であった。

以上より、医師の手指衛生の遵守率は知識因子、認識因子のみならず、仕事と施設の制約にも関連することが認められた。個々のレベルでは、手指衛生に対する積極的な態度を強化し、各医師が集団行動に影響を与えることができるという確信を補強していくことにより、医師の遵守率を改善させる可能性があることが認められた。また、特殊な医学技術の仕事に従事する医師は手指衛生改善の対象とするべきであることが示された。

(訳:元永伸也、木津純子)

Carlisle Vol.10 No.1 p8-11 Spring 2005

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