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Carlisle
医療関連感染情報季刊誌より
Vol.10 No.2 Summer 2005

病院環境表面の重症急性呼吸器症候群コロナウイルス

Dowell, S.F., Simmerman, J.M., Erdman, D.D., et al.
Severe acute respiratory syndrome coronavirus on hospital surfaces.
CID 39:652-657, 2004.

2003年に重症急性呼吸器症候群(SARS)が発生し、発症者の21%が病院関係者であった。SARS コロナウイルス(SARS CoV)感染は接触感染か飛沫感染と考えられていたが、防御予防策の履行にもかかわらず、多くの病院従事者が感染した。そこで、空気感染やSARS CoVにより汚染された環境からの感染の可能性が考えられ、タイバンコクのA病院と台湾タイペイのB病院の環境汚染調査を行った。

A病院では、数人のSARS疑い患者を治療し、1人の患者がSARS CoV感染のため死亡した。死後2時間以内に、彼の病室とナースステーションの環境と剖検清拭前に拭き取り検査を行った。18検体のうち、患者の鼻咽腔の1検体で、SARS CoVのRT-PCR結果が陽性であった。 B病院は、2003年4月24日に医療従事者や患者にSARSが蔓延し、病院が閉鎖され、24人以上のSARS患者は2つの階に隔離された。4月28日と5月1日に、これら2つの階、患者がいた集中治療室、患者受け入れを行った1階ロビー等の表面から拭き取り検体が採取された。病院Bから4月28日に採取された28検体のうち16検体(ナースステーションのコンピュータマウスと電話、休憩室のドアノブとトイレの取っ手、患者病室のベッド柵、ドアノブ、点滴棒、換気調節パネル、気管内チューブ、聴診器、エレベータの取っ手)がRT-PCR陽性で、5月1日に採取した48検体のうち9検体(救急部の机、窓枠、空調器、患者病室の水飲み器、シーツ、ファン、ソファ、尿瓶)が陽性であった。

全体では、94検体のうち26検体がウイルスRNA陽性であり、この調査期間に採取された4患者の呼吸器分泌物も陽性であった。また、患者病室から採取された43検体中12検体が陽性で(28%)、病院の他の場所から採取された47検体中10検体(21%)が陽性であった。感染期(発症後5~15日)のSARS患者付近からの検体は、他の場所よりRNA陽性率が高かった(63検体中24検体 vs 31検体中2検体、p=0.001)。すべての培養で、生育はみられなかった。検出されたウイルスの感染性はないかもしれないが、医療従事者はSARS CoVが病院の環境表面に付着し、SARS感染の可能性があることを認識すべきである。

(訳:豊口禎子)

Carlisle Vol.10 No.2 p8-11 Summer 2005

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