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Carlisle
医療関連感染情報季刊誌より
Vol.10 No.3 Autumn 2005

感染を起こしにくい処置での麻酔医から患者へのC型肝炎ウイルス感染例

Mawdsley, J., Teo, C.G., Kyi, M., Anderson, M.
Anesthetist to patient transmission of hepatitis C virus associated with non exposure-prone procedures.
J. Med. Virol., 75:399-401, 2005.

44歳女性が黄疸を伴う発熱で来院した。彼女は8週間前、腺筋症と子宮筋腫のため、両卵管卵巣切除とともに子宮切除術を受けていた。来院時検査で、ビリルビン値138μmol/L(正常値:0~17)、AST 724 IU/L(正常値:11~55)、γ-GTP 372 IU/L(正常値:6~51)、ALP 937 IU/L(正常値:110~300)で、血清抗HCV IgG、HBV、HAVは陰性であった。しかし、4週間後、肝機能検査値は正常域となったが、血清抗HCV IgGがEIA法で検出された。6ヵ月後も2つの方法(EIA法、RIA法)で抗HCV IgGが検出され、急性C型肺炎と診断された。

彼女の手術時の麻酔医は以前より抗HCV IgG陽性とHCV RNA陽性であることが知られていた。彼は20年前、エジプトから英国に移住し、エジプトで感染したことが推測されていた。他の手術従事者は全員抗HCV血清陰性であった。本手術は高リスクの麻酔処置は行わず、輸血もしなかった。その麻酔医は気管内挿管、間欠的陽圧換気と末梢血管確保を行った。麻酔医には術前に開放創は無く、処置中に傷害も受けず、術前に手を洗い、術中手袋をしていた。麻酔医から患者への感染を証明するために、両者から二度にわたり血液を採取し、ヌクレオチドシークエンス分析を行った。5’non-coding region断片は両者で一致し、genotype 4と診断された。Genotype 4は英国の白人ではまれであり、中東では一般的である。また、non structural protein 5の185塩基対分析でも、両者は99.9%一致した。また、英国保健保護機関のシークエンスデータベースでの系統発生比較においても同一と判定され、麻酔医から患者へのHCV感染が示唆された。急性HCV感染の2年後、患者は抗HCV IgG陽性ではあるが、HCV RNA陰性であった。麻酔医はその後まもなく退職した。

Codyら(2002年)も、気管内挿管や末梢血管確保のみの処置による麻酔科医から患者へのHCV感染を報告している。しかし、その症例では、麻酔医はHCV感染を知らなかった。本症例では、麻酔医はHCV感染を知っており、感染の危険性を最小にする感染プロトコールを遵守していた。気管内挿管と末梢血管確保は感染を起こしやすい処置とはみなされておらず、感染プロトコールが遵守されたにもかかわらず、HCV感染が起こった。HCV陽性麻酔従事者の手術室でのガイドラインの見直しと、感染を起こしやすい処置の定義の見直しが必要であろう。

(訳:豊口禎子)

Carlisle Vol.10 No.3 p8-11 Autumn 2005

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