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Carlisle
医療関連感染情報季刊誌より
Vol.10 No.4 Winter 2005

重症急性呼吸器症候群(SARS)発症病棟におけるSARSコロナウイルスの空気感染と環境汚染

Booth, T.F., Kournikakis, B., Bastien, N., et al.
Detection of Airborne Severe Acute Respiratory Syndrome(SARS) Coronavirus and Environmental Contamination in SARS Outbreak Units.
JID, 191:1472-1477, 2005.

カナダでは2003年3月に初めて重症急性呼吸器症候群(SARS)が確認され、トロントの病院の医療従事者にも感染が拡大した。SARSコロナウイルス(CoV)の感染は、直接的接触や飛沫感染を介するとされていたが、航空機内感染や高層アパートでの感染伝播により、空気感染が示唆されている。しかし、SARS空気感染の危険性は不明である。我々は、トロントのSARS発症病棟において、空気と環境表面の汚染状況の調査を行った。

トロントの4病院(病院W、X、Y、Z)の15の病室とその他4箇所(ナースステーションや病室に隣接した廊下)で、環境や空気を調査した。調査病室の患者のうち11人はSARSの可能性あり、2人はSARSの疑い、1人は観察中であった。環境からの検体採取はSARS発症後13~33日(平均23日)に行われた。

病院Zの3病室で10回にわたりslit sampler systemにより空気のサンプリング(約540L/18分)を行った。患者には空気採取装置の1.5メートル以内に近づかないことと、咳を直接装置にかけないことを依頼した。10検体中2検体(1病室)でSARS-CoV PCR陽性であった。検出されなかった2人は、人工呼吸器をつけていた。また、病院X、Yにおいてはテフロンメンブランフィルター(孔径0.3μm)を用い、空気を検査したところ、28検体すべてがSARS-CoV PCR陰性であった。

病院W、X、Yにおいて、病室(手すり、電話、テーブル、トイレの取っ手等)や人工呼吸器等の85箇所の表面を綿棒で拭き取り検査を行ったところ、病院X、Yの3検体(集中治療室のベッドテーブル、ナースステーションの冷蔵庫の取っ手、患者病室のテレビのリモコン)でSARS-CoV PCR陽性であった。

本調査で、空気検体からSARS-CoV RNAが検出されたことにより、空気感染の可能性が示唆された。また、医療従事者の環境からもSARS-CoV RNAが検出されたことにより、病室を退出する際の手袋の除去と手指の衛生を含む感染制御手順の厳守の重要性が証明された。また、電気製品は濡らすことができないため、特別な注意が必要である。SARSを制御するためには、厳密な衛生管理とともに、建物の換気や空気清浄機の有効性を考慮しなければならない。

(訳:豊口禎子)

Carlisle Vol.10 No.4 p8-10 Winter 2005

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