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Y's Letter
感染対策情報レター
2006/03/06

栄養サポートチームの導入効果


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Y’s Letter Vol.2 No.10
Published online 2006.03.06

はじめに

栄養サポートチーム(Nutrition Support Team: NST)は患者の栄養状態・栄養摂取環境などを多角的に検討・判断し、患者の栄養環境をサポートするチームであり、日本医療機能評価機構の病院機能評価Ver.5.0の評価項目に栄養管理組織の設置・栄養ケアの組織横断的実践の項目が定められたことや1)、日本静脈経腸栄養学会主導でNST導入などを支援する「NSTプロジェクト」が設立されたことなどを契機に全国的に導入がすすめられています。NST導入による効果として、カテーテル関連感染の減少や経済効果も報告されています。以下、NSTについて感染予防効果と経済効果を中心に述べます。

NSTの役割と導入効果

NSTは栄養サポートを職種の垣根を越えて実践するチームであり、本来は複数の職種からなる専任者チームを設置することが理想ですが、前述の「NSTプロジェクト」では日本の現状を鑑み、各部署からの兼任者でチームを運営する方式も推奨しています2)。NSTの主な役割として、(1)栄養上のリスクのある患者のスクリーニング、(2)栄養サポートを必要する患者の確認、(3)適切な栄養管理が施行されているかのチェック、(4)最もふさわしい栄養管理法の提言(適切な栄養ルートの選択)などが挙げられます3)

入院患者の多くは栄養不良状態にあり、かつ栄養不良患者の合併症併発リスクは高いと報告されています3)4)5)。この栄養不良をNSTの積極的介入により改善することで、治療結果が改善し、患者在院日数が短縮され、したがって医療費も減少すると期待されています6)

栄養不良患者における重大な合併症のひとつとして、病院感染があり、NSTの介入による適切な栄養管理は、患者の生体防御能の改善を通じて、感染リスクを低下させると期待されます。しかしながら、後述のように高カロリー輸液などの静脈栄養や経腸栄養などカテーテルを使用する栄養療法は、カテーテル関連感染リスクを増大する要因ともなります。
NST導入によるカテーテル関連敗血症発生率とコスト削減効果を検討した臨床研究では、NST活動により静脈栄養を実施した日数は増加したものの、専門的な判断により静脈栄養を実施した症例を減少させ、カテーテル関連敗血症の発生頻度を減少させた結果、コスト削減効果があったと報告されています7)。なお、中心静脈栄養は経腸栄養よりも費用がかかるため、可能なかぎり経腸栄養に移行することが、患者の予後の改善やコスト削減につながると言われています。いずれの場合でも栄養療法の実施には費用がかかりますが、合併症の減少、入院期間の短縮、予後の改善などを考慮すれば、十分なコスト削減効果があると期待されています8)

NSTによるカテーテル管理の効果

このように静脈栄養や経腸栄養は、栄養を経口摂取できない患者に有益な栄養療法です。しかし、生体にとって異物であるカテーテルが留置されること、特に静脈療法では無菌である血流と体外がカテーテルによって連絡されることなどにより、患者の感染リスクを高めます。カテーテル管理の質によりカテーテル関連感染の発生率は大きく変化し、感染した場合には患者在院日数の延長や医療費の増大にもつながります。これらのカテーテル管理をNSTなどの専門知識を有するチームが行うことで、カテーテル関連感染が減少するとの報告があり9)10)11)、NSTなどの専門チームによるカテーテル管理の実施が日本においても推奨されています12)

特に感染リスクの高い中心静脈栄養においては、挿入時にマキシマルバリアプリコーション(滅菌手袋、長い袖の滅菌ガウン、マスク、帽子と大きな滅菌覆布)を継続的に実行することで13)、カテーテル関連血流感染を減少させることができると報告されていることに注目が必要です14)15)。マキシマルバリアプリコーションなど感染対策プロトコルからの逸脱はカテーテル関連血流感染の重要な原因であり、常にプロトコルを遵守し質の高いカテーテル管理を保証するという目的のためにも、NSTなどの専門チームを設置することが望まれます。

おわりに

NSTの導入は患者栄養状態の改善をもたらして治療結果を改善するのみならず、病院感染をも減少させ、かつ経済効果をもたらすと期待されます。特に高カロリー輸液などによる中心静脈栄養においては、質の高いカテーテル管理や専門的な判断による比較的リスクの低い栄養療法への移行推進などによって、大きな効果をもたらすものと期待されます。NSTの導入は医療の質の向上に大きく資する有用な施策であると思われます。

<参考>

  1. 財団法人日本医療機能評価機構:
    病院機能評価について.評価体系(Ver.5.0)の評価項目について.
  2. 日本静脈経腸栄養学会・NSTプロジェクト実行委員会・東口髙志編:
    NSTプロジェクト・ガイドライン. 医歯薬出版, 東京,2001.
  3. Agostoni C, Axelson I, Colomb V,et al:
    The need for nutrition support teams in pediatric units: a commentary by the ESPGHAN committee on nutrition.
    J Pediatr Gastroenterol Nutr 2005;41:8-11.

    http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi?
    cmd=Retrieve&db=pubmed&dopt=Abstract&list_uids=15990621
    &query_hl=4&itool=pubmed_docsum

  4. Sullivan DH:
    The role of nutrition in increased morbidity and mortality.
    Clin Geriatr Med 1995;11:661-674.
    http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi?
    cmd=Retrieve&db=pubmed&dopt=Abstract&list_uids=8556694
    &query_hl=9&itool=pubmed_docsum
  5. 鞍田三貴, 今西健二, 辻仲利政:
    入院患者に占める低栄養患者の割合. 静脈経腸栄養 2002;17:77-82.
  6. 東口髙志, 五嶋博道, 清水克彦, 他:
    中核病院におけるNSTの経済効果.静脈経腸栄養 2002;17:7-13.
  7. Kennedy JF, Nightingale JM:
    Cost savings of an adult hospital nutrition support team.
    Nutrition 2005;21:1127-1133.
    http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi?
    cmd=Retrieve&db=pubmed&dopt=Abstract&list_uids=16308136
    &query_hl=11&itool=pubmed_docsum
  8. 竹山廣光,真辺忠夫,谷口正哲:
    栄養療法による経
    費節減効果.
    静脈経腸栄養 2002;17:23-27.
  9. Faubion WC, Wesley JR, Khalidi N,et al:
    Total parenteral nutrition catheter sepsis: impact of the team approach.
    J Parenter Enteral Nutr 1986;10:642-645.
    http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi?
    cmd=Retrieve&db=pubmed&dopt=Abstract&list_uids=3099011
    &query_hl=6&itool=pubmed_docsum
  10. Nehme AE:
    Nutritional support of the hospitalized patient. The team concept.
    JAMA 1980;243:1906-1908.
    http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi?
    cmd=Retrieve&db=pubmed&dopt=Abstract&list_uids=6767864
    &query_hl=10&itool=pubmed_docsum
  11. Soifer NE, Borzak S, Edlin BR, et al:
    Prevention of peripheral venous catheter complication with an intravenous therapy team: a randomized controlled study.
    Arch Intern Med 1998;158:473-477.

    http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi?
    cmd=Retrieve&db=pubmed&dopt=Abstract&list_uids=9508225
    &query_hl=4&itool=pubmed_docsum

  12. 武澤純,井上善文:
    カテーテル血流感染対策.小林寬伊,吉倉廣,荒川宜親編集.
    エビデンスに基づいた感染制御(改訂2版)-第1集-基礎編.
    メヂカルフレンド社, 東京, 2003:28-59.
    http://www.yoshida-pharm.com/information/
    guideline_japan/guideline/evidence.html
  13. 矢野邦夫訳.
    血管カテーテル由来感染予防のためのCDCガイドライン.
    メディカ出版,大阪,2003.
    http://www.yoshida-pharm.com/information/
    guideline_japan/guideline/evidence.html
  14. Maas A, Flament P, Pardou A, et al:
    Central venous catheter-related bacteraemia in critically ill neonates: risk factors and impact of a prevention program.
    J Hosp Infect 1998;40:211-224.
    http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi?
    cmd=Retrieve&db=pubmed&dopt=Abstract&list_uids=9830592
    &query_hl=8&itool=pubmed_docsum
  15. Sanders RA, Sheldon GF:
    Septic complication of total parenteral nutrition. A five year experience.
    Am J Surg 1976;132:214-220.
    http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi?
    cmd=Retrieve&db=pubmed&dopt=Abstract&list_uids=821351
    &query_hl=12&itool=pubmed_docsum
2006.03.06 Yoshida Pharmaceutical Co.,Ltd.

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