Y's Square:病院感染、院内感染対策学術情報 > 感染対策学術情報 > 感染対策情報レター(Y’s Letter) > 2006 > 感染症法改正について 東京医療保健大学 学長 小林 寛伊(特別寄稿)
Y's Letter
感染対策情報レター
2006/03/09

感染症法改正について 東京医療保健大学 学長 小林 寛伊(特別寄稿)


Download
(84kb)

Y’s Letter Vol.2 No.11
Published online 2006.03.09
Revised on 2006.12.13


(2011.04.19追記)
*2011年1月14日に感染症法の一部改正が公布され、2月1日に施行されました。詳しくはこちらを参照ください。
(2008.10.14追記)
*感染症法については本稿の内容を反映した2006年の改訂後、更に2008年5月2日に感染症法の一部改正が公布され、5月12日に施行されました。詳しくはこちらを参照ください。
(2006.12.13追記)
*2006年12月8日、改正感染症法が公布されました。詳しくはこちらを参照ください。

はじめに

現在、感染症法改正の原案が出来上がり、改正に向けての準備が進行中とのことで、2006年10月施行を目指して作業が進んでいるそうである。厚生労働省担当者の了解が得られたので、入手した現在進行形の案を簡単に説明する。

I. 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律等の一部を改正する法律案の概要

主たる改正事項は、

  1. 生物テロや事故による感染症の発生・まん延を防止するための病原体等の管理体制の確立
  2. 最近の医学的知見に基づく感染症の分類の見直し
  3. 結核を感染症法に位置付けて総合的な対策を実施

の3点であり、基本的理念として、国際的動向を踏まえた施策、人権尊重、責務規定として、医師等の責務規定の充実、病原体等の検査を行っている機関の責務、基本指針として、病原体等を適正に取り扱う体制の確保に関する事項、を挙げている。主たる改正点は、以下の4点であり、下線部分が改正事項である。

1. 病原体等の規制

  • 病原性、国民の生命及び健康に対する影響に応じて一種病原体等から四種病原体等まで四分類
  • 所持、輸入等の禁止、許可、届出、基準の遵守等の規則

2. 感染症に関する情報収集・公開

  • 医師、獣医師の届出
  • 積極的疫学調査
  • 慢性感染症に関する情報の収集
  • 発生状況等の情報の公開

3. 健康診断、就業制限、入院及び医療

  • 健康診断、就業制限
  • 入院勧告、入院措置(必要最小限の原則、手続の整備
  • 入院患者(結核を含む)の医療
  • 結核患者の通院医療

4. その他

  • 消毒、交通規制、遮断等
  • 指定動物の輸入禁止、輸入検疫
  • 結核感染動物の対処
  • コレラ及び黄熱を検疫対象から除外
  • 結核の定期の予防接種を予防接種法に位置付け

II. 病原体等の適正な管理を含めた総合的な感染症対策の概要

一類~五類感染症とは別に、一種~四種病原体等の四分類を導入して、病原体の適正な安全管理を義務付けた。

1. 一種病原体等:所持等の禁止

エボラウイルス、クリミア・コンゴ出血熱ウイルス、痘そうウイルス、南米出血熱ウイルス、マールブルグウイルス、ラッサウイルス

以上6病原体

  • 国又は政令で定める法人のみ所持(施設を特定)、輸入、譲渡し及び譲受けが可能
  • 運搬の届出
  • 発散行為の処罰

2. 二種病原体等:所持等の許可

SARSコロナウイルス、炭疽菌、野兎病菌、ペスト菌、ボツリヌス菌、ボツリヌス毒素

以上6病原体

  • 試験研究等の目的で厚生労働大臣の許可を受けた場合に、所持、輸入、譲渡し及び譲受けが可能
  • 運搬の届出

3. 三種病原体等:所持等の届出

Q熱コクシエラ、狂犬病ウイルス、多剤耐性結核菌

政令で定めるもの:
コクシジオイデス真菌、サル痘ウイルス、腎症候性出血熱ウイルス、西部馬脳炎ウイルス、ダニ媒介性脳炎ウイルス群、東部馬脳炎ウイルス、ニパウイルス、日本紅斑熱リケッチア、発疹チフスリケッチア、ハンタウイルス肺症候群ウイルス、Bウイルス、鼻疽菌、ブルセラ属菌、ベネズエラ馬脳炎ウイルス、ヘンドラウイルス、リフトバレーウイルス、類鼻疽菌、ロッキー山紅斑熱リケッチア

以上21病原体等

  • 病原体等の種類等について厚生労働大臣へ事後届出
  • 運搬の届出

4. 四種病原体等:基準の遵守

インフルエンザウイルス(H2N2)、黄熱ウイルス、クリプトスポリジウム、結核菌(多剤耐性結核菌を除く)、コレラ菌、志賀毒素、赤痢菌属、チフス菌、腸管出血性大腸菌、鳥インフルエンザウイルス、パラチフスA菌、ポリオウイルス

政令で定めるもの:
ウエストナイルウイルス、オウム病クラミジア、デングウイルス、日本脳炎ウイルス

以上16病原体等

5. 一種~四種病原体等

  • 病原体等に応じた施設基準、保管、使用、運搬、滅菌等の基準(厚生労働省令)遵守
  • 厚生労働大臣等による報告徴収、立入検査
  • 厚生労働大臣による改善命令
  • 改善命令違反等に対する罰則

現場で検体検査に関わる担当者からは、疑わしい症例で、診断確定以前の検体、あるいは、再検査時の検体、などに対して厳し過ぎる対応を規制されることに対する不安が強く表明されており、今後の適正な行政的対応が望まれている。

III. 感染症法上の感染症類型について

以下のような改正が行われている。

  1. 重症急性呼吸器症候群(SARSコロナウイルスに限る)が一類感染症から二類感染症に移行
  2. 二類感染症に、結核が新たに追加
  3. コレラ、細菌性赤痢、腸チフス、パラチフスが二類感染症から三類感染症に移行
  4. オムスク出血熱、キャサヌル森林熱、西部馬脳炎、ダニ媒介性脳炎、東部馬脳炎、鼻疽、ベネズエラ馬脳炎、ヘンドラウイルス感染症、リフトバレー熱、類鼻疽、ロッキー山紅斑熱の11疾患が、従前の四類感染症30疾患に追加され、四類感染症は計41疾患となった。
  5. 五類感染症には変更なし

Ⅳ.改正後の感染症法と現行の結核予防法及び予防接種法との関係

原則として、すべての感染症法の規定が結核に適用される。その上で、結核独自の新たな規定が、感染症法に設けられる。また、予防接種法では、定期予防接種としてBCG等9疾患が規定されている。結核に関しては、約50程度の政令、省令が必要とのことで、全面的改正は、感染症法より遅れて、2007年4月施行となるとのことであるが、主要部分は感染症法に含まれて改正され、2006年10月施行の予定とのことである。

以上

(2006.09.29追記)
*この解説記事に関連する感染症予防法等の改正は、2006年6月18日に終了した第164通常国会では審議されませんでしたので、現在は白紙の段階に戻っています。

2006.03.09 Yoshida Pharmaceutical Co.,Ltd.

関連サイト