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Y's Letter
感染対策情報レター
2007/07/05

改正医療法施行に伴う感染制御体制の整備について


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Y’s Letter Vol.2 No.26
Published online 2007.07.05

はじめに

平成18年6月に医療法が改正され1)、平成19年4月1日より施行されました。この改正により、病院、診療所又は助産所の管理者は、医療の安全を確保するための指針の策定、従業者に対する研修の実施など、医療安全確保が義務付けられ、医療施設内における感染制御体制の整備が必要となります。この感染制御体制の整備については施行から3ヶ月以内での対応が必要とされるため2)、院内感染対策のための指針などの整備が不十分な病院等については、早急な対応が求められます。以下、改正医療法において示された院内感染対策に関連する項目を中心に述べます。

医療施設内における感染制御体制の確保

今回の改正医療法では医療施設内における医療安全管理の義務化が示されており、それに伴い医療法施行規則の一部が改正され、医療機関等の管理者に院内感染対策のための体制確保が義務付けられました1)2)3)。院内感染対策体制の整備を行うために、[1]院内感染対策のための指針の策定、[2]院内感染対策のための委員会の開催(病院、入院設備のある診療所および助産所のみ)、[3]従業者に対する院内感染対策のための研修の実施、[4]感染症の発生状況の報告その他の院内感染対策の推進を目的とした改善のための方策の実施、の4項目が示されました。そのため、4月1日より各医療施設では上記の項目について徹底をはかる必要があります。
改正医療法の施行に伴い、各医療施設において院内感染予防指針の策定を行うに当たり、厚生労働省の院内感染対策中央会議から、各医療施設の規模に応じて採用すべき感染制御策を示した「医療関連感染制御策指針(案)2006」と、小規模病院、有床診療所、無床診療所における安全性の高い療養環境および作業環境の管理の一例について示した「施設内指針(案)2006」が作成されました4)5)6)7)

「中小病院/診療所を対象にした医療関連感染制御指針(案)2006」の概要

「医療関連感染制御策指針(案)2006」4)では、業務内容を、Ⅰ:各施設共、可能な限り採用すべき感染制御策、Ⅱ:各施設の条件を考慮して、できれば採用すべき感染制御策、NB:無床診療所でもⅠ、Ⅱの基準に従って採用すべき感染制御策、の3つの推奨基準により示しています。本指針は全施設を対象とした共通の道標と位置づけられており、各施設において日常の感染制御業務手順について状況に応じた指針を策定することを求めています。主な概要を以下に述べます。

1)感染制御策のための指針の作成

各医療施設において、患者や医療従事者への感染制御策を効率よく実施するために、施設全体で活用できる総合的な感染制御指針の作成が必要となります。指針の内容は出来る限り科学的根拠に基づいた制御策を採用し、必要に応じて部門ごとの特異的対策を盛り込み、定期的に指針の見直し・更新を行うことが求められています。作成した指針には感染制御委員会などの感染制御関連組織の役割分担や、従業者に対する研修、感染症発生状況の把握・分析・報告などに関する基本指針を記載することとしています。

2)感染制御委員会の開催

病院、入院設備のある診療所および助産所においては、感染制御委員会の開催が義務付けられます。各施設において病院長または診療所の管理者が積極的に感染制御に関わり、感染制御委員会(infection control committee:ICC)、感染制御チーム(infection control team:ICT)などが中心となって、感染対策に取り組むことが求められます。ICCは院長を議長とした各専門職代表を構成員とした職種横断的な組織であり、1ヶ月に1回程度の定期的会議を持つことが望ましいとしています。
ICTは院長直属のチームとし、専任の院内感染管理者としては、認定インフェクション・コントロール・ドクター、感染制御関連大学院修了者、感染管理認定看護師、インフェクション・コントロール・スタッフ養成講習会修了者、認定感染制御専門薬剤師、感染制御認定臨床微生物検査技師、その他の適格者から院長が適任と判断した者を中心に組織し、週に1回程度の定期的全棟ラウンドを行い、現場の改善、教育・啓発などを行うこととしています。
院内感染が発生した場合は、これらの組織において速やかに発生原因を分析し、改善策の立案・実施と従業者への周知を図ることとしています。小規模病院、診療所においては、これらの活動を各施設にあった形で簡略化して行います。

3)従業者に対する研修

従業者に対する研修については、施設内研修として就職時の初期研修、就職後の継続研修、ラウンド等による個別研修の3つの研修があり、さらに学会、研究会などの施設外研修があります。従業者の院内感染に対する知識を高めるために、院内感染対策のための基本的考え方や具体的方策についての研修を行い、従業者に周知徹底を行うことはとても重要と考えられます。
就職時の初期研修は、ICTまたはそれにかかわる十分な実務経験を有する指導者が適切に行うこととしています。
就職後の継続研修は年2回程度の開催が望ましいとされ、必要に応じて臨時の研修を行います。各施設の実情に則した内容で、職種横断的に開催することとされています。また、研修の開催結果や参加状況については記録を残します。

4)感染症の発生状況の報告その他に基づいた改善方策等

各医療機関内において、院内感染の発生状況把握のため、感染症の発生動向の情報を共有し、院内感染発生の防止と蔓延を防ぐことを目的とした方策となります。
方策としては、対象限定のサーベイランスを必要に応じて実施し、感染症発症状況を把握し、適切な対応が出来る体制を整えることが求められます。
本指針では、サーベイランスのほか、感染対策の基本である手指衛生の遵守や、標準予防策・感染経路別対策の実施の必要性が述べられています。さらに従来の感染経路別対策に加えて易感染患者を病原性微生物から保護することを目的とした防御環境(protective environment)という概念が加えられ、易感染患者に用いる器具類を患者専用にすることなどが述べられています。消毒薬適正使用については、適用対象と対象微生物とを考慮することが肝要であるとし、生体消毒薬と環境用消毒薬は区別して使用すること(アルコールを除く)、環境の汚染除去は清掃を基本とし、消毒を行う場合は局所的に行うこと、その際は高水準消毒薬(グルタラール、過酢酸、フタラール)を環境消毒に用いないことなどが推奨業務として示されています。
その他、抗菌薬の適正使用や予防接種、職業感染防止などについても記載されています。

施設規模による施設内指針

施設規模に応じて作成する施設内指針の一例として、「小規模病院/有床診療所施設内指針(案)2006」および「無床診療所施設内指針(案)2006」が示されています5)6)7)。手指衛生、リネン類の処理や、血管内留置カテーテル関連感染対策、尿路カテーテル関連感染対策などについて、感染対策として行う業務内容について具体的に示されており、各施設で指針を作成する上で、大変参考になると思われます。

終わりに

改正医療法の施行により、各医療施設における感染対策に対する体制の整備・徹底が求められ、感染対策が不十分な医療機関においては早急な対応が求められています。今回示された「医療関連感染制御策指針(案)2006」、「施設内指針(案)2006」は、現在パブリックコメントを募集している段階ですが 8)、各医療機関において感染対策の体制整備を行う上ではとても有用なものと考えられます。各施設の状況に応じた感染対策の指針・マニュアルを作成し、日常的に全職員に指導・徹底することが肝要です。

<参考文献>

  1. 厚生労働省:
    良質な医療を提供する体制の確立を図るための医療法等の一部を改正する法律(法律第八十四号)
  2. 厚生労働省:
    医療法施行規則の一部を改正する省令 厚生労働省令第二十七号(平成十九年三月二十六日)
  3. 厚生労働省医政局長:
    良質な医療を提供する体制の確立を図るための医療法等の一部を改正する法律の一部の施行について.医政発第0330010号.平成19年3月30日.
    http://www.hospital.or.jp/pdf/15_20070330_08.pdf
  4. 安全性の高い療養環境及び作業環境の確立に関する研究班:
    中小病院/診療所を対象にした医療関連感染制御策指針(案)2006.(070330 Ver.1.0)
  5. 安全性の高い療養環境及び作業環境の確立に関する研究班:
    小規模病院/有床診療所施設内指針(案)2006―単純且つ効果的指針の1例―.(070330 Ver.1)
  6. 安全性の高い療養環境及び作業環境の確立に関する研究班:
    無床診療所施設内指針(案)2006―単純且つ効果的指針の1例―.(070330 Ver.1)
  7. JANIS 院内感染サーベイランス ホームページ
    https://janis.mhlw.go.jp
  8. 東京医療保健大学大学院ホームページ
    http://thcu.ac.jp/services/kansen-guide/index.html
2007.07.05 Yoshida Pharmaceutical Co.,Ltd.

関連サイト