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Y's Letter
感染対策情報レター
2008/06/19

薬事的な観点から見た消毒薬の選択方法


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Y’s Letter Vol.2 No.36
Published online 2008.06.19

はじめに

消毒を目的として市販されている製剤には、医薬品、医薬部外品があり、さまざまな種類の消毒薬が販売されています。また、除菌を目的として雑品(雑貨)も販売されています。今回は薬事的な観点から消毒薬の選択方法について述べます。

市販されている消毒薬の分類

消毒薬には、薬事法により承認されている医薬品及び医薬部外品があります1)。医薬品は医療用医薬品と一般用医薬品に分けられ、医療用医薬品は「医師もしくは歯科医師によって使用されまたはこれらの者の処方せんもしくは指示によって使用されることを目的とした医薬品」をいい、一般用医薬品は「医療用医薬品として取り扱われる医薬品以外の医薬品」をいいます2)。薬事法ではこれらの各区分ごとに品質、有効性、安全性を確保するための規定が設けられており、承認区分によって審査事項のレベルが異なります2)3)4)。すべての面において、最も厳格な審査を受けているのは医療用医薬品であり、次が一般用医薬品、最も緩やかな審査を受けているものが医薬部外品です。また、消毒ではなく除菌を目的とした製品として、薬事法による承認を受けていない雑品(雑貨)も販売されています。

表.医薬品、医薬部外品、化粧品、雑品の薬事的な相違点
  医薬品 医薬部外品 化粧品 雑品
医療用 一般用
薬事法による承認 あり※1 あり※1 あり※1 あり※3 なし
規格及び試験方法 承認規格※2 承認規格※2 承認規格※2 社内規格※3 社内規格※4
生物学的同等性の審査 あり なし なし なし なし
安定性の審査 あり あり なし※5 なし なし
消毒の効能表示 不可 不可
副作用被害救済制度※6 対象 対象 対象外 対象外 対象外

※11薬事当局へ製造販売承認申請を行い、承認を受ける必要性
※2承認により定められる規格で、変更時には再承認が必要
※3原則として承認は必要なく、製造販売を行う品目について品目ごとに届出を行う。化粧品基準に定められている配合禁止の成分・配合制限のある成分を除き、化粧品基準において使用可能な成分を企業責任のもとに安全性を確認して選択し配合できる。非開示成分を含む化粧品の場合は承認が必要。
※4社内の独自基準によるもので、いつでも独自に変更可能
※5必須ではないが当局により審査されることもある
※6入院が必要な程度の副作用が生じた際の公的救済制度

使用目的に応じた消毒薬の選択

上述のように消毒薬にはさまざまな区分、種類の製品が市販されており、これらを使用目的などに応じて選択します。

患者の患部や処置部位の消毒に使用する消毒薬、セミクリティカル器具などの消毒に使用される高水準消毒薬、手術時手指消毒に使用する手指消毒薬など、有効性の確保がきわめて重要な場面においては、有効性、品質などについて厳格な審査を受けた医療用医薬品を選択することが望ましいと考えられます。医療用医薬品においては添付文書の記載内容やその他副作用報告を含む医薬情報の収集、フィードバック体制が充実しており、また適正に使用した際の副作用による重大な健康被害が生じた際には医薬品副作用被害救済制度が適用されます(人体に直接使用されないものは適用外5))

病棟での注射処置などに用いるアルコール綿、患者周辺のノンクリティカル表面などに用いられる消毒薬など、あまり感染リスクの高くない用途においては、基本的には医療用医薬品を選択することが望ましいものの、一般用医薬品を選択することも妥当な選択のひとつと思われます。一般用医薬品は医療用医薬品ほどではありませんが医薬部外品とくらべ厳格に品質が審査されています。使用目的によっては一般用医薬品も選択肢にいれることで、臨床現場のニーズにより適合した製剤、剤型の選択が可能となる場合も多いと考えられます。また、一般用医薬品も医療用医薬品と同様に副作用報告の対象となっており、副作用被害救済制度が適用されます(人体に直接使用されないものは対象外5))。

院内売店やコンビニエンスストアなどでも販売されている医薬部外品は、患者が自ら購入し使用する場合に最も入手しやすい製剤と言えます。ただし、副作用による重大な健康被害が生じた場合であっても医薬品副作用被害救済制度が適用されません。そのため医療従事者が、医療処置を行う目的で消毒薬を選択する場合には、医薬品の中のから選択することが望ましく、医薬品の中に選択肢がない場合に限り、リスクを考慮した上で医薬部外品を選択すべきと思われます。

雑品の使用について

除菌を目的とした製品として、薬事上の承認を受けていない雑品も数多く市販されています。雑品においては、品質が社内規格によって定められているだけで、成分や含量の変更などもメーカーの独自な判断に委ねられています()。医療機関において雑品が採用される場合も見受けられますが、その際は、使用する目的、付随するリスクなどを十分考慮しなくてはなりません。同じ目的で使用できる医薬品が市販されているにもかかわらず、敢えて雑品を選択することは基本的には避けるべきと思われます。雑品を使用し消毒効果が不十分であった結果による病院感染や副作用による健康被害などの問題が発生した場合、医療施設の責任は大きいと思われ、また健康被害に対する医薬品副作用被害救済制度も適用されません。
しかし、すべての場合おいて雑品が不適ということではなく、使用目的によっては、リスクを考慮した上で、医療施設の責任において使用することもできます。例えば、床の通常清掃などに用いる洗浄剤としては、洗浄力のある消毒薬を用いることも可能ですが、消毒薬を使用する必要があるわけではなく、雑品である洗浄剤を使用することで十分です。

衛生的手洗いに使用する製剤について

医療施設における病棟、外来などでの衛生的手洗いの徹底は、感染対策上とても重要な項目のひとつと考えられています。この衛生的手洗いに用いる製剤も、製品の区分を考慮して選択する必要があります。衛生的手洗いの基本としては、手が目に見えて汚れていない場合は速乾性手指消毒薬を使用し、手が汚れている場合は流水と抗菌性または非抗菌性石けんでの手洗いを行います。

速乾性手指消毒薬は、医薬品、医薬部外品の区分で数多くの種類が市販されていますが、基本的には医療施設においては医療用医薬品または一般用医薬品を選択することが望ましいと考えられます。医療施設での手指衛生において、除菌を効能としている雑品の使用は、消毒効果の確実性などを考慮すると病院感染の防止を目的として使用することは、なるべく避けるべきと思われます。

流水による手洗いに使用する製剤も、医薬品(消毒薬配合スクラブ剤)、医薬部外品(薬用石けん)、化粧品(液体石けん、化粧石けんなどの非抗菌性石けん)の区分で数多くの製品が市販されています。この場合も同様に、消毒の確実性が強く求められる場合には消毒薬が配合された医薬品を選択するべきと考えられます。しかし、通常の衛生的手洗いであれば、念入りに手洗いをする限り、非抗菌性石けんを使用してもよく6)7)、いずれの区分の製品を選択しても良いと考えられています。

終わりに

医療施設においては医療関連感染防止のための適切な対策が求められており、消毒効果、副作用、使いやすさ、コストなどを総合的に勘案して消毒薬を選択することが望ましいと言えますが、薬事法上の区分も考慮して、種々のリスクを勘案し、選択を行なうことも必要と思われます。

<参考文献>

  1. 厚生労働省:
    薬事法
  2. 厚生労働省医薬食品局長:
    医薬品の承認申請について;
    薬食発第0331015号.平成17年3月31日.
  3. 厚生労働省医薬食品局審査管理課長:
    医薬品の承認申請の際に留意すべき事項について.
    薬食審査発第0331009号.平成17年3月31日.
  4. 厚生省薬務局長:
    医薬部外品等の製造又は輸入の承認申請に際し添付すべき資料について.
    薬発第700号.昭和55年5月30日.
  5. 厚生労働省:
    独立行政法人医薬品医療機器総合機構法
  6. CDC:
    Guideline for Hand Hygiene in Health-Care Settings.
    MMWR 2002;51(RR-16):1-45. http://www.cdc.gov/mmwr/PDF/rr/rr5116.pdf
  7. 小林寬伊,大久保憲,尾家重治:
    消毒・滅菌の実際.小林寬伊編集.[改訂]消毒と滅菌のガイドライン.
    へるす出版,東京,2004;8-35.
2008.06.19 Yoshida Pharmaceutical Co.,Ltd.

関連サイト