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Y's Letter
感染対策情報レター
2009/01/07

医療現場における消毒・滅菌のためのCDCガイドライン 2008


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Y’s Letter Vol.2 No.40
Published online 2009.01.07

はじめに

本ガイドラインは手洗い・病院環境管理のためのガイドライン(1985)における該当部分について改訂したものであり、「患者ケアに使用する医療器具の洗浄・消毒・滅菌」及び「環境の洗浄と消毒」についてエビデンスに基づき勧告したものです。今回は医療器具および医療環境の消毒など、本ガイドラインにて消毒薬に関連した勧告(勧告2~12)の要約を紹介します。
なお、勧告部分にはその勧告の強さがランキングされています。実際の勧告のランキングについてはガイドライン本文をご参照下さい。

ガイドラインの勧告(要約)

2. 患者ケア用器具の洗浄

病院での患者ケア用器具の洗浄、消毒、滅菌は中央材料室で行うことが推奨されている。患者ケア用器具を高水準消毒または滅菌する前には、汚れが乾燥しないよう、ただちに洗剤または酵素洗剤を使用して洗浄し、洗浄後は十分にリンスする。使用する洗剤または酵素洗剤は医療器具の材質との適合性を確認する。このときの洗浄は用手洗浄もしくは機械洗浄のどちらかで行う。器具の表面を点検し、洗浄または消毒/滅菌を損なう可能性のある場合には器具を廃棄または修理する。

3. 滅菌、高水準消毒および低水準消毒の適応

各患者の使用前にクリティカル医療器具(通常無菌の組織または血管内に挿入する器具あるいは無菌の体液が流れる器具、手術器具など)を滅菌する。粘膜または健常でない皮膚に触れるセミクリティカル患者ケア用器具(例えば消化器内視鏡、気管チューブ、麻酔呼吸回路、呼吸療法器具)は高水準消毒を行う。ノンクリティカル患者ケア表面(ベッド柵、オーバーベッドテーブルなど)や健常な皮膚に触れる器具(血圧測定用カフなど)には低水準消毒を行う。

4. ノンクリティカル患者ケア用器具のための低水準消毒薬の選択と使用

表1(ガイドライン本文を参照)に記載のある消毒薬と濃度を用いてノンクリティカル患者ケア用器具を処理する。消毒薬を使用する時には説明書などに従って消毒する。多くの場合、説明書などに表記されている消毒時間は実際の科学的研究で示されている時間より長いが、法的には説明書に従わなければならない。説明書に記載された条件と異なる条件で消毒を行った場合、生じた有害事象について負担し、さらに法的措置を負わなければならない可能性がある。

ノンクリティカル患者ケア用器具が定期的に消毒されていること、および目に見える汚染がある場合に消毒されていることを確認する。ノンクリティカル患者ケア用器具を患者専用や使い捨てにできなければ、接触予防策下におかれている患者に使用した後の器具は他の患者に使用する前に消毒する。

5. 医療現場における環境表面の洗浄および消毒

ハウスキーピング表面(床やテーブルの上など)を定期的に洗浄し、目に見えて汚れている時なども洗浄する。また、環境表面を定期的に消毒(または洗浄)し、目に見えて汚れている場合にも消毒(または洗浄)する。また、病室の壁、ブラインド、窓カーテンにおいては目に見える汚染および汚れがある時に洗浄する。

消毒薬(または洗浄剤)を使用する場合には適正使用(希釈、材質適合性、保管、有効期限および安全使用と廃棄)のために製造元の説明書に従う。消毒薬は必要時に調製し、頻繁に新しい液と交換する。また、汚染を防ぐために定期的にモップヘッドとふきんを洗浄する。

患者ケア領域において、汚れの種類・存在が不明確な場合や多剤耐性菌の存在が不明確な場合には消毒と洗浄を兼ね備えた製品による処理法やハウスキーピングのために設計されたEPA登録病院用消毒薬(日本ではベンザルコニウム塩化物、両性界面活性剤など)を使用する。なお、患者ケア領域以外の表面には洗剤と水による洗浄が適している。ノンクリティカル表面を消毒する場合には高水準消毒薬や液体化学的滅菌剤を使用してはいけない。水平面にたまった湿性の塵は EPA登録病院用消毒薬(または洗剤)を浸した布で定期的に洗浄する。

幼児用ベッドや保育器の使用中に洗浄するときは消毒薬を使用しない。幼児用ベッドや保育器の最終的な洗浄に消毒薬を使用した場合には、ベッドや保育器を使用する前に水で表面を十分にすすぎ、乾燥させる注)

注):新生児室の洗浄にフェノール類含有洗浄剤を使用したことによって新生児に高ビリルビン血症を生じたとの報告があることから上記のような勧告となっています。しかしながら日本国内では新生児室や保育器の洗浄・消毒にフェノール類を使用することは一般的ではありません。

血液や他の感染性物質をこぼしたときには直ちに洗浄および除去をする。このとき、適切な保護手袋や他の個人防護具を使用する。消毒薬はEPA登録結核菌殺菌剤、EPAのリストDおよびEに登録された消毒薬(すなわちHIVまたはHBV用であることが明確にラベル表記された製品)または新しく希釈された次亜塩素酸溶液を用いて血液汚染された領域を消毒する。次亜塩素酸ナトリウム液を選択した場合、少量の血液または他の感染性物質であれば1:100の希釈液(例えば5.25~6.15%次亜塩素酸ナトリウムの1:100希釈液は525~615ppmの有効塩素濃度になる。)を使用する。大量の血液または他の感染性物質をこぼした時などには処理中に生じる感染リスクを低減させるために洗浄前に次亜塩素酸液1:10希釈液を最初に使用する。続いて次亜塩素酸ナトリウム1:100希釈液を用いて最終的に消毒処理する。大量の血液または体液が含まれるものをこぼした場合には適した保護手袋および他の個人防護具を使用し、使い捨ての吸収性素材で目に見える物質を洗浄し、汚染物質を適切に表示された容器に廃棄する。

クロストリジウム・ディフィシル感染が流行している場合には日常的な環境消毒に5.25~6.15%次亜塩素酸ナトリウムの希釈液(例えば家庭用ブリーチの1:10希釈液)を使用する。
塩素溶液が毎日調製できない場合には、栓付き遮光プラスチック容器中に室温保存で30日まで保管できる。30日間の保存で塩素濃度が50%低下する。

6. 消毒薬噴霧

患者ケア領域で習慣的な目的で消毒薬噴霧を行わない。

7. 内視鏡の高水準消毒

毎回の再処理の一環として各軟性内視鏡の液漏れテストをし、テストに逸脱した器具は臨床使用せず、修理をする。
内視鏡を使用した後直ちに、適した酵素洗剤を用いて内視鏡を洗浄する。さらに可能な限り内視鏡の部品(例えば吸引弁)を分解・取り外し、酵素洗剤にすべての部品を完全に浸漬する。使用する酵素洗剤(または洗浄剤)は細菌汚染防止のため使用ごとに廃棄する。熱に耐えられる場合は内視鏡の部品を高圧蒸気滅菌する。内視鏡は血液、体液などの有機物を取り除くためにチャンネル内をフラッシュおよびブラッシングする。外表面と装置はやわらかい布、スポンジまたはブラシを用いて洗浄する。ブラッシングはブラシに汚れが見えなくなるまで続ける。この時使用するブラシは内視鏡チャンネルまたはポートのサイズに適したものを使用する。またブラシや布などは使い捨てにすべきである。使い捨てにできない場合は洗浄し、高水準消毒または滅菌する。

内視鏡および付属品は粘膜に接触するためセミクリティカル器具として取り扱い、各患者使用後に少なくとも高水準消毒する。洗浄後、高水準消毒を達成するためにグルタルアルデヒド、オルトフタルアルデヒドなどを使用し、その後すすぎおよび乾燥する。消毒する時には消毒薬による内視鏡損傷を考慮して必要最小限の時間で浸漬する。高水準消毒薬に内視鏡を完全に浸漬し、すべてのチャンネルの環流を確実に行う。高水準消毒後、残留した消毒薬を滅菌水、ろ過水または水道水ですすぎ、チャンネルのフラッシュを行う。続いて70~90%エチルアルコールまたはイソプロピルアルコールでリンスする。アルコールリンス後にすべてのチャンネルをフラッシングした後、強制換気を行う。再処理過程の終了後、内視鏡は乾燥を促進させるために垂直に吊り下げ、損傷および汚染させないように内視鏡を保管する。

通常無菌の組織を通過する内視鏡(例えば関節鏡、膀胱鏡、腹腔鏡)の場合は使用ごとに滅菌処理する。これが実行できなければ少なくとも高水準消毒をする。高水準消毒後は滅菌水ですすぎをする。内視鏡に装着する再使用の付属品(例えば生検鉗子または他の切開器具)を機械的洗浄し(例えば生検鉗子の超音波洗浄)、その後これらの器具を滅菌する。
医療従事者と患者のために安全な環境で内視鏡が使用され、消毒される施設を設計する。グルタルアルデヒドなど毒性を示す可能性がある蒸気による曝露を最小限にするために空気交換機器(換気システム、外部排気ダクトなど)を使用する。化学的滅菌剤または高水準消毒薬の蒸気濃度の許容上限を超えてはならない。

液体滅菌剤/高水準消毒薬は有効成分の最小有効濃度が確保されていることを日常的に試験する。使用する日ごとに(またはそれ以上頻繁)化学的インジケータで溶液を確認し、試験結果を記録する。化学的インジケータが最小有効濃度を下回る濃度を示した場合には溶液を廃棄する。製造元の推奨する使用期限を越えて液体滅菌剤/高水準消毒薬を使用しない。

適切な内視鏡の洗浄および高水準消毒または滅菌の確保のために教育された内視鏡再処理担当者を配置する。内視鏡の再処理を行うすべての人材に対して定期的な能力試験を行う。消毒薬の危険性などについても教育する。

個人防護具(例えば手袋、ガウン、メガネ類、フェイスマスク・フェイスシールド、呼吸器防護具)を利用できる状態にし、化学物質および微生物の曝露から作業者を防御するために適切にこれらの用具を使用する。 内視鏡自動洗浄機を使用する場合には取り扱い説明書に従ってすべてのチャンネルコネクターを取り付ける。内視鏡自動洗浄機で効果的な再処理ができるように確保する。また、いくつかの必要な用手洗浄・消毒を行うことも確保する(内視鏡自動洗浄機では効果的な消毒ができない場合がある)。

8. 歯科領域における器具および表面の管理

軟部組織や骨を貫通する歯科器具(例えば抜歯用鉗子、外科用メスの刃、骨用ノミ、歯周歯石取り器、手術用バー)はクリティカルに分類され、各使用後は滅菌または廃棄すべきである。口腔の軟部組織や骨を貫通する目的でなく、口腔組織に接触するおそれがある歯科器具(例えばアマルガム凝縮装置、エアーウォーターシリンジ)はセミクリティカルに分類されるが熱に耐性のある場合は各使用後に滅菌する。熱に影響があるセミクリティカル器具は洗浄し、最低でも高水準消毒する。

カバーしていない治療室表面(例えばカウンター、スイッチ、ライトのハンドル部)の様なノンクリティカル表面は患者間でバリア保護するか中水準消毒薬または低水準消毒薬で消毒する。バリア保護カバーは患者ケアを提供する間に手袋をした手で頻繁に接触する表面や血液・体液で汚染される可能性のある表面、または洗浄が困難な表面に対して使用しても良い。バリア保護カバーは定期的(例えば患者間)に交換し、見た目が汚れている時、損傷を受けた時にも交換する。また1日の終わりまたは見た目に汚れている場合には保護した表面も消毒する。

9. 血液媒介病原体(HBV、HCV、HIV)、抗生物質耐性菌(例えばVRE、MRSA、多剤耐性結核菌)または新興病原体(例えばクリプトスポリジウム、ヘリコバクター・ピロリ、大腸菌O157:H7、クロストリジウム・ディフィシル、結核菌、SARSコロナウイルス)またはバイオテロ病原体で汚染された患者ケア用器具の再処理

患者ケア用器具に対して通常の滅菌および消毒法を使用する。(このガイドラインで推奨されている消毒法)これはプリオンを除いた血液媒介病原体や新興病原体などを念頭においた器具の滅菌・消毒において適切な消毒法である。従って洗浄、消毒または滅菌する際、プリオン以外の病原体を除去するためにこれらの消毒法を変更する必要はない。

10. 他のセミクリティカル器具のための消毒方策

プローブカバーが利用できる時には微生物汚染の水準を減少させるためにプローブカバーなどを使用する。プローブカバーが機能しなくなることがあるためにプローブカバーを使用する場合でも適切な消毒薬による消毒を行う。プローブカバーが使用された場合でも、スタッフ、患者などに毒性の無い製品で直腸プローブ、膣プローブなど他のセミクリティカル器具を洗浄および高水準消毒する。 高水準消毒後はすべての器具をすすぐ。上気道(例えば鼻、咽頭、食道)の粘膜に接触するおそれのあるセミクリティカル器具に対しては滅菌水、ろ過水または水道水後にアルコールリンスを使用する。直腸(例えば直腸プローブ、肛門鏡)または膣(例えば膣プローブ)の粘膜に接触するセミクリティカル器具をすすぐために水道水より滅菌水またはろ過水を使用することについては未解決問題である。

眼圧計チップはきれいに拭き取り、その後5000ppm塩素または70%エチルアルコールのどちらかで5~10分間の浸漬による消毒を行う。

11. 外来診療および在宅医療における医療提供者による消毒

病院内と同様に外来診療においても感染の危険性があるために外来診療でも病院と同様の消毒方法を行う。すなわちクリティカル器具は滅菌、セミクリティカル器具は高水準消毒、ノンクリティカル器具は低水準消毒が必要である。在宅環境ではヒト-ヒト伝播は生じ難いことから、医療行為を行う時には 5.25~6.15%次亜塩素酸ナトリウム(家庭用ブリーチ)1:50希釈液に3分間、70%イソプロピルアルコールに5分間または3%過酸化水素に30 分間浸漬によって粘膜に触れる再利用の物品(例えば気管チューブ)を洗浄・消毒する。在宅環境内の患者間で共用しないノンクリティカル器具(例えば松葉杖、血圧計のカフ)は洗浄剤または市販の家庭用消毒薬で洗浄する。

12. 消毒薬の微生物汚染

汚染された消毒薬の発生を減少するために製造元が推奨した使用時の希釈にて消毒薬を正確に調製し、殺菌剤の外部からの汚染(容器汚染または殺菌剤の調製時および使用時における環境表面からの汚染など)を防止する。

おわりに

ガイドラインはあくまで指針であり、実施すべき対策の方向性を示したものです。本ガイドラインは米国における医療機関で実施するいくつかの消毒方法などの方向性を示しています。実際に国内の医療機関に導入できるかおよびどの消毒方法を採用するかなどは各医療機関において検討する必要があると思われます。

<参考文献>

  1. CDC:
    Guideline for Disinfection and Sterilization in Healthcare Facilities, 2008.
    http://www.cdc.gov/ncidod/dhqp/pdf/guidelines/Disinfection_Nov_2008.pdf#search=’CDC sterilization 2008 guideline’
2008.12.18 Yoshida Pharmaceutical Co.,Ltd.

関連サイト