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Carlisle
医療関連感染情報季刊誌より
Vol.14 No.1 Spring 2009

中国における高病原性鳥インフルエンザA(H5N1型)ウイルスの
ヒト-ヒト感染は限定的

Wang H, Feng Z, Shu Y, et al.
Probable limited person-to-person transmission of highly pathogenic avian influenza A (H5N1) virus in China.
Lancet 2008;371(9622):1427-1434.

2007年12月、中国において高病原性鳥インフルエンザA(H5N1)ウイルスに感染した家族2名が確認された。2003年より世界各国で報告されてきた高病原性インフルエンザ症例の大半は散発例であったが、その一方で、全体の約25%は2名以上の疫学的な関連を持つ症例であり、限定的なヒト-ヒト感染の可能性が強く示唆されてきた。

今回、H5N1ウイルスに感染した家族2名とその接触者について、疫学的、臨床的およびウイルス学的データを収集、分析した。さらに、患者の呼吸器からの検体は、逆転写PCR(RT-PCR)およびウイルス培養を行った。また、接触者については、症状の発現を10日間にわたり追跡調査し、症状が出た接触者からは検体を採取してRT-PCRにより検査した。さらに、接触者から血清も採取し、血清学的な検査を行った。

24歳の初発症例は死亡し、52歳の父である2例目は、早期の抗ウイルス剤投与およびH5N1型鳥インフルエンザに対応する予防接種を既に受けた人から提供されたプラズマ細胞の投与などにより生存した。初発患者において、唯一H5N1ウイルスへの曝露の機会があったのは、症状発現6日前に訪れた家禽(ニワトリ等)を扱う市場であり、2例目の父においては、防護具なしでの息子への接触であった。接触者として追跡調査の対象となったのは、感染患者2名の双方もしくは片方へ、十分な防護具なしで接触した100名であり、91名が血清学的調査に同意し、そのうち78名(86%)はオセルタミビルの予防投与を受けた。接触者のうち2名は軽い症状を呈したが、ともにRT-PCRよりH5N1は陰性であった。接触者91名の血清については、全てH5N1抗体陰性であることが判明した。また、感染者2名から分離されたH5N1ウイルスは、一つの非同義ヌクレオチド置換を除き遺伝学的に同一であり、完全にトリ型の配列を維持したもので、ヒトへの感染に適応した変異は認められなかった。

今回、非耐性H5N1ウイルスの家庭内感染の可能性が確認されたが、これはH5N1ウイルスがヒト-ヒト間での感染力を獲得したことを直接的に意味するものではなく、限定的なものと考えられる。しかし、H5N1ウイルスがヒト-ヒト間でより容易に伝播する能力を得た可能性も否定できないことから、さらなる調査が待たれる。

(訳:橋倉万由子、木津純子)

Carlisle Vol.14 No.1 p8-10 Spring 2009

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