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Carlisle
医療関連感染情報季刊誌より
Vol.14 No.2 Summer 2009

傷口の洗浄法のための水道水と滅菌生理食塩水の多施設比較

Moscati RM, Mayrose J, Reardon RF, et al.
A Multicenter Comparison of Tap Water versus Sterile Saline for Wound Irrigation.
Acad Emerg Med 2007;14:404-410.

アメリカ合衆国では、緊急手術部において毎年約8万人の一次的な縫合が要求される外傷性の傷口が処置される。なお、稀ではあるが、傷口感染はこれら裂傷の処置で最も頻繁に発生する合併症であり、3~5%の発生が認められている。

本研究では、緊急手術部における傷口縫合の前の水道水あるいは滅菌生理食塩水での洗浄での傷口の感染率を比較した。2ヵ所のレベル1である都市の病院および近郊の共同体の病院で、多重集中での予期したランダム化試験を実施した。被験者を、水道水または滅菌シリンジに使用する通常の生理食塩水を使用し、洗浄実験にランダムに割り付けた。傷口は標準的な処置で閉じられた。被験者は、縫合の除去のため緊急手術部に戻ることを尋ねられた。戻って来なかった人々には電話で対応した。傷口は、もし縫合またはつぼ針の早期の除去がある場合、洗浄および傷口からの排出がある場合、または被験者が抗生物質を使用する必要がある場合は、感染があると判断された。もし、感染率の倍加以上がないならば、グループの同等性が認められたと判断した。

715人の被験者すべてが本研究で登録された。検討した被験者のうちの634人(88%)でフォローアップデータが得られた。水道水使用群における300人の被験者のうち12人(4%)は傷口感染を有していた。一方、滅菌生理食塩水を使用した群においては、334人中11人(3.3%)であり、相対リスクは1.21(95%信頼区間は0.5-2.7)であった。傷口感染の同等率は、いずれの洗浄法を使用しても認められた。水道水での洗浄法で評価した多重集中トライアルでの諸結果は、以前の単一研究施設でのトライアルの結果とほぼ類似していた。

われわれの経験は、関連分野では特異的ではない。そして、以前の類似する研究と関連する。われわれはこの研究を転換の材料とし、エビデンスに基づく臨床実践のための一つの良い基礎になるかも知れないメタ分析法を含めることができると確信している。

滅菌生理食塩水と比較して、傷口の洗浄のための水道水使用は、価格的に良好であり、そして安全性も同等であり、かつ効果的であった。傷口の洗浄のための生理食塩水に対する理にかなった代替手段として、緊急手術部における水道水の使用は考慮すべきである。

(訳:坂上吉一)

Carlisle Vol.14 No.2 p8-10 Summer 2009

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