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感染対策情報レター
2010/06/17

血液培養時の皮膚消毒について


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Y’s Letter Vol.3 No.10
Published online 2010.06.17
2012.10.4 修正:
文中の「0.5%以上のクロルヘキシジン…」を「0.5%を超える(>0.5%)クロルヘキシジン…」に

はじめに

皮膚上には表皮ブドウ球菌など多くの常在菌が存在するため、血液培養時にはこれら皮膚常在菌による汚染によって偽陽性を示す場合があります。血液培養時に偽陽性を示すことで不適切な抗菌薬による治療、入院期間の延長および医療費増大などの問題を生じることが指摘されています。そのため血液培養時には厳密な皮膚消毒が必要になります。今回は血液培養時の皮膚消毒に使用する消毒薬の選択について述べます。

血液培養時の皮膚消毒について

血液培養時の皮膚消毒に使用される消毒薬としてはポビドンヨード製剤、ヨードチンキ、クロルヘキシジン製剤やアルコール製剤などが使用されています。これらの消毒薬を使用した場合の血液培養時の汚染率を比較評価している多くの報告があります(表)。
ヨードチンキは10%ポビドンヨードと比較して有意に血液培養時の汚染率が低いと評価されている2つの報告1)2)がある一方で、両者の消毒薬に有意差はなかった報告3)もあります。また、クロルヘキシジンアルコールと10%ポビドンヨードの比較においてはクロルヘキシジンアルコールの方が有意に血液培養時の汚染率が低いと評価された2つの報告4)5)があります。クロルヘキシジンアルコールとヨードチンキの比較では、2つの報告において両者に有意差は認められなかったと評価されています6)7)。70%イソプロパノールやポビドンヨードアルコールを使用した研究3)では、これら2つの消毒薬に加えて10%ポビドンヨードおよびヨードチンキについて血液培養時の汚染率を比較したところ、4つの消毒薬に有意差は認められなかったと評価されています。

表.血液培養時の皮膚消毒における各種消毒薬の汚染率の比較
報告者(報告年) 使用消毒薬 汚染率 統計解析
Strand CL et al.
(1993)1)
10%ポビドンヨード 259/4,139(6.25%) p<0.00001
ヨードチンキ 162/4,328(3.74%)
Little JR et al.
(1999)2)
10%ポビドンヨード 74/1,947(3.8%) オッズ比:1.6
(95%CI:1.1-2.4)、p=0.01
ヨードチンキ 46/1,904(2.4%)
Mimoz et al.
(1999)4)
0.5%クロルヘキシジン
アルコール
14/1,019(1.4%) オッズ比:0.40
(95%CI:0.21-0.75)、p=0.004
10%ポビドンヨード 34/1,022(3.3%)
Calfee DP et al.
(2002)3)
10%ポビドンヨード 99/3,378(2.93%) p=0.62
ヨードチンキ 81/3,138(2.58%)
70%イソプロパノール 78/3,125(2.50%)
ポビドンヨードアルコール 75/3,051(2.46%)
Trautner BW et al.
(2002)6)
2%クロルヘキシジンアルコール 1/215(0.5%) p=0.62
ヨードチンキ 3/215(1.4%)
Barenfanger J et al.
(2004)7)
2%クロルヘキシジンアルコール 186/5,936(3.13%) p=0.188
ヨードチンキ 158/5,802(2.72%)
Suwanpimolkul G et al.
(2008)5)
2%クロルヘキシジンアルコール 34/1,068(3.2%) オッズ比:0.45
(95%CI:0.30-0.68)、p<0.001
10%ポビドンヨード 74/1,078(6.9%)

各種ガイドラインおよび文献レビューなどによる評価

Malaniらによる4つの研究2)3)4)6)の文献レビュー評価8)として、血液培養時の汚染を予防するための消毒薬について明確なエビデンスは見出せなかったが、パッケージ化された皮膚消毒薬キットおよびアルコール含有の消毒薬の使用が有益である可能性があると結論づけています。
CUMITECH血液培養検査ガイドライン9)では既知のデータからヨードチンキ製剤とクロルヘキシジン製剤はほぼ同等の効果があり、そして、どちらもポビドンヨード製剤より効果的に汚染率を下げることができる可能性が示唆されていると述べられています。
米国感染症学会(Infectious Diseases Society of America:IDSA)のガイドライン10)では血液培養時の皮膚消毒にポビドンヨードよりもアルコール、ヨードチンキまたは0.5%を超える(>0.5%)クロルヘキシジンを配合したアルコール製剤の使用を推奨しています。これらの消毒薬はポビドンヨードより適切な皮膚への接触時間・乾燥時間を担保でき、血液培養時の汚染を軽減することが認められると述べられています。
英国保健省(Department of health;DH)が公表している英国版のケア・バンドルにおいては血液培養時の皮膚消毒に2%クロルヘキシジン70%イソプロパノールの使用を推奨しています。11)

CUMITECHとはCumulative Techniques and Procedures in Clinical Microbiology(臨床微生物学的検査における技術と手順の蓄積)にちなんで名付けられた米国微生物学会出版部の刊行する技術叢書のこと9)

おわりに

血液培養時の皮膚消毒に使用する消毒薬についてはメタアナリシスなどで、どの消毒薬が最も汚染率が低いのか結論は付けられていません。しかしながらアルコールを含有する製剤が10%ポビドンヨードに比べて汚染率が低いことがいくつかの研究で明らかになっています。現在のところ様々な消毒薬が血液培養時の皮膚消毒に使用可能ですが、何れの消毒薬を使用する場合でも十分な接触時間を担保するなど適切な方法によって消毒することが必要になります。

<参考文献>

  1. Strand CL, Wajsbort RR, Sturmann K.:
    Effect of iodophor vs iodine tincture skin preparation on blood culture contamination rate.
    JAMA 1993;269:1004-1006.
    http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/8429580
  2. Little JR, Murray PR, Traynor PS, et al:
    A randomized trial of povidone-iodine compared with iodine tincture for venipuncture site disinfection: effects on rates of blood culture contamination.
    Am J Med 1999;107:119-125.
    http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/10460041
  3. Calfee DP, Farr BM.:
    Comparison of four antiseptic preparations for skin in the prevention of contamination of percutaneously drawn blood cultures: a randomized trial.
    J Clin Microbiol 2002;40:1660-1665.
    http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC130950/pdf/1534.pdf
  4. Mimoz O, Karim A, Mercat A, et al:
    Chlorhexidine compared with povidone-iodine as skin preparation before blood culture. A randomized, controlled trial.
    Ann Intern Med 1999;131:834-837.
    http://www.annals.org/content/131/11/834.1.full.pdf
  5. Suwanpimolkul G, Pongkumpai M, Suankratay C.:
    A randomized trial of 2% chlorhexidine tincture compared with 10% aqueous povidone-iodine for venipuncture site disinfection: Effects on blood culture contamination rates. J Infect 2008;56:354-359.
    http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18407355
  6. Trautner BW, Clarridge JE, Darouiche RO.:
    Skin antisepsis kits containing alcohol and chlorhexidine gluconate or tincture of iodine are associated with low rates of blood culture contamination.
    Infect Control Hosp Epidemiol 2002;23:397-401.
    http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12138980
  7. Barenfanger J, Drake C, Lawhorn J, et al:
    Comparison of chlorhexidine and tincture of iodine for skin antisepsis in preparation for blood sample collection.
    J Clin Microbiol 2004;42:2216-2217.
    http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC404630/pdf/1680-03.pdf
  8. Malani A, Trimble K, Parekh V, et al:
    Review of clinical trials of skin antiseptic agents used to reduce blood culture contamination.
    Infect Control Hosp Epidemiol 2007;28:892-895.
    http://www.journals.uchicago.edu/doi/pdf/10.1086/518456
  9. 松本哲哉、満田年宏訳:
    CUMITECH血液培養検査ガイドライン.医歯薬出版株式会社,東京,2007
  10. Mermel LA, Allon M, Bouza E, et al:
    Clinical practice guidelines for the diagnosis and management of intravascular catheter-related infection: 2009 Update by the Infectious Diseases Society of America.
    Clin Infect Dis 2009;49:1-45.
    http://www.journals.uchicago.edu/doi/pdf/10.1086/599376
  11. Department of Health:Taking blood cultures.
    Saving Lives-High impact interventions 2007. internet publication at
    http://www.clean-safe-care.nhs.uk/index.php?pid=4
2010.06.17 Yoshida Pharmaceutical Co.,Ltd.

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