Y's Square:病院感染、院内感染対策学術情報 > 感染対策学術情報 > 感染対策情報レター(Y’s Letter) > 2012 > 血管カテーテル関連感染予防のためのCDC ガイドライン, 2011
~カテーテル挿入部位の皮膚消毒にクロルヘキシジン濃度が0.5%を超えるアルコール製剤を推奨する理由~
Y's Letter
感染対策情報レター
2012/01/05

血管カテーテル関連感染予防のためのCDC ガイドライン, 2011
~カテーテル挿入部位の皮膚消毒にクロルヘキシジン濃度が0.5%を超えるアルコール製剤を推奨する理由~


Download
(162kb)

Y’s Letter Vol.3 No.23
Published online 2012.01.05

はじめに

CDCは2011年4月1日、「血管カテーテル関連感染予防のためのガイドライン, 2011」1)を公表しました。その中の皮膚消毒の項目で「中心静脈カテーテルや末梢動脈カテーテル挿入前およびドレッシング交換時の皮膚消毒にクロルヘキシジン濃度が0.5%を超える(>0.5%)アルコール製剤で皮膚消毒する」ことが最も推奨度の高いカテゴリーIAとして推奨されています。一方で、本勧告のクロルヘキシジン濃度が0.5%を超えることに対して異論を唱えるコメントが出されました。これに対し、CDCガイドラインの著者らが勧告内容の背景に言及しており、そのコメントから0.5%を超える濃度のクロルヘキシジンを推奨している理由を推測することができます。今回はその内容の要約を以下に示します。

CDCガイドラインに対する異論(要約)2)

CDCガイドラインの勧告に対する意見として、クロルヘキシジンアルコールを中心静脈カテーテル挿入部位の皮膚消毒に使用すべきであるというガイドラインの勧告は賛成するが、クロルヘキシジン濃度が0.5%を超えるという濃度の点については賛同できないとしています。その理由として次のように述べています。
「CDCガイドラインに引用されているメタアナリシス3)では、クロルヘキシジンがポビドンヨードに比べカテーテル関連血流感染のリスクを低減できると評価されている。このメタアナリシスではいくつかのタイプのクロルヘキシジン製剤が用いられているが、クロルヘキシジンの水溶液とアルコール液を適用した群におけるサブセット解析(臨床研究に参加した患者全員ではなく、そのうちの一部についての結果を評価すること)では、クロルヘキシジンアルコールを使用した5つの研究(クロルヘキシジン濃度0.5%が4研究、1%が1研究)においてのみ、カテーテル関連血流感染の有意な減少がみられている。また10%ポビドンヨード水溶液と2%クロルヘキシジン水溶液、0.5%クロルヘキシジンアルコールをそれぞれ皮膚消毒に使用した場合の中心静脈および動脈カテーテルにおける菌定着を評価した研究4)によると、2つのクロルヘキシジン製剤はポビドンヨード液よりも菌定着を有意に減少するが、両クロルヘキシジン製剤間には有意差を認めていない。しかしながら、CDCガイドラインはこの研究を引用していない。
その他、中心静脈カテーテル関連血流感染予防のための皮膚消毒の研究で0.5%クロルヘキシジンアルコールと10%ポビドンヨードで差が無かった報告は1つだけである5)
以上のような理由から0.5%クロルヘキシジンアルコール製剤は中心静脈カテーテル関連血流感染を予防するための適切な皮膚消毒薬であると考えている。」

前述の異論に対するCDCガイドライン著者らのコメント(要約)2)

前述の異論に対してCDCガイドラインの著者らは次のように述べています。
「CDCガイドラインに引用されているメタアナリシス3)では、クロルヘキシジンはポビドンヨードよりカテーテル関連血流感染のリスクが低下することを示している。しかしながらクロルヘキシジンの下限濃度については示されていない。また0.5%クロルヘキシジンがポビドンヨードに比べてカテーテル関連血流感染を有意に低下させたことを示す研究はない。ガイドラインの勧告に対しての異論では、メタアナリシスでのクロルヘキシジンアルコールのサブセット解析において、カテーテル関連血流感染を有意に低下していることを挙げているが、これらは研究の多様性を評価していないため、濃度について結論づけるには限界がある。さらにメタアナリシスで引用されている1%クロルヘキシジンの研究は抄録であり、CDCガイドラインで使用するには限界がある。また0.5%クロルヘキシジンが適切な消毒方法であることの理由として、0.5%クロルヘキシジンアルコール液と2%クロルヘキシジン水溶液は共に10%ポビドンヨード液よりもカテーテルへの菌定着が低く、両クロルヘキシジン製剤間には有意差を認めていない報告4)があることも挙げている。しかしながら、別の研究5)では、10%ポビドンヨードと0.5%クロルヘキシジンアルコールを比較してカテーテル関連血流感染の発生に有意差を認めておらず、これは0.5%クロルヘキシジン使用の反対論を支持するデータである。それゆえ、0.5%クロルヘキシジンを推奨することのより強力なエビデンスが出るまでは、我々は0.5%を超える(>0.5%)クロルヘキシジン濃度を推奨する立場をとる。
加えて、消毒薬抵抗性に関与しているqac遺伝子を有しクロルヘキシジンの最小殺菌濃度が従来より高いMRSAが分離された報告がある6)7)。この事は生体消毒により高い濃度のクロルヘキシジンを使用することが賢明であることを示唆している。また米国ではクロルヘキシジン濃度が2%を下回る製品は現在のところ市場にはない。」

まとめ

カテーテル挿入部位の皮膚消毒にクロルヘキシジン製剤を使用した研究は数多くありますが、対象が中心静脈カテーテルの場合や末梢静脈カテーテルの場合、あるいは評価に感染率を用いた場合やカテーテル菌定着を用いた場合など様々です。また論文として掲載されているものや学会の抄録など、報告様式も様々です。このように数多くある報告の中でCDCガイドラインでは論文として投稿された質の高い研究でかつ中心静脈カテーテルにおける感染率で評価した論文を引用しています。その中の論文で2%クロルヘキシジン水溶液が10%ポビドンヨード、70%アルコールより有意にカテーテル関連血流感染を低下させることが認められています8)。またメタアナリシスにおいてもクロルヘキシジンはポビドンヨードに比べてカテーテル関連血流感染のリスクを低減させることが認められています3)。一方、他の論文で0.5%クロルヘキシジンアルコールでは10%ポビドンヨード水溶液と比較してカテーテル関連血流感染に差が認められませんでした5)。つまり、クロルヘキシジン製剤を使用することで10%ポビドンヨードより感染率の低下は認められていますが、0.5%クロルヘキシジンアルコールでは感染率の低下が認められないのならば、0.5%を超える濃度が良いという判断で「クロルヘキシジン濃度が0.5%を超える(>0.5%)アルコール製剤」が推奨されたものと考えられます。
今後、新たな知見が報告されることでガイドラインが変更される可能性もありますが、現時点では中心静脈カテーテル挿入前およびドレッシング交換時の皮膚消毒にはクロルヘキシジン濃度が0.5%を超える(>0.5%)アルコール製剤が最も推奨できる消毒薬であると考えられます。

<参考文献>

  1. CDC:
    Guidelines for the Prevention of Intravascular Catheter-Related Infections, 2011.
    http://www.cdc.gov/hicpac/pdf/guidelines/bsi-guidelines-2011.pdf
  2. H Renes S, C Pompe J, H Renes:
    Prevention of intravascular central venous catheter-related infections: 0.5% concentration of chlorhexidine preparation with alcohol for skin preparation and femoral vein for renal replacement therapy.
    Clin Infect Dis 2011;53:745-746, author reply 746-748.
    http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21890780
  3. Chaiyakunapruk N, Veenstra DL, Lipsky BA, et al:
    Chlorhexidine compared with povidone-iodine solution for vascular catheter-site care: a meta-analysis.
    Ann Intern Med 2002;136:792-801.
    http://www.annals.org/content/136/11/792.full.pdf
  4. Valles J, Fernandez I, Alcaraz D, et al:
    Prospective randomized trial of 3 antiseptic solutions for prevention of catheter colonization in an intensive care unit for adult patients.
    Infect Control Hosp Epidemiol 2008;29:847-853.
    http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18665819
  5. Humar A, Ostromecki A, Direnfeld J, et al:
    Prospective randomized trial of 10% povidone-iodine versus 0.5% tincture of chlorhexidine as cutaneous antisepsis for prevention of central venous catheter infection.
    Clin Infect Dis 2000;31:1001-1007.
    http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/11049783
  6. Longtin J, Seah C, Siebert K, et al:
    Distribution of antiseptic resistance genes qacA, qacB, and smr in methicillin-resistant Staphylococcus aureus isolated in Toronto, Canada, from 2005 to 2009.
    Antimicrob Agents Chemother 2011;55:2999-3001.
    http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21402848
  7. Batra R, Cooper BS, Whiteley C, et al:
    Efficacy and limitation of a chlorhexidine-based decolonization strategy in preventing transmission of methicillin-resistant Staphylococcus aureus in an intensive care unit.
    Clin Infect Dis 2010;50:210-217.
    http://cid.oxfordjournals.org/content/50/2/210.full.pdf
  8. Maki DG, Ringer M, Alvarado CJ.:
    Prospective randomised trial of povidone-iodine, alcohol, and chlorhexidine for prevention of infection associated with central venous and arterial catheters.
    Lancet 1991;338:339-343.
    http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/1677698
2012.01.05 Yoshida Pharmaceutical Co., Ltd

関連サイト