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I 感染対策における滅菌・消毒の役割

2 感染経路別の対策

感染症例を感染源とする感染経路の遮断策については、CDCが1996年に発行した隔離予防策ガイドラインが包括的な体系を示している。このガイドラインは2007年に改訂され、急性期の病院感染対策から長期療養施設等も含めた医療関連感染対策に拡大されている。以下、その概要を紹介する2、3、12、13)

隔離予防策は、標準予防策(スタンダードプリコーション)と感染経路別対策の2段構えの対策で構成されている。標準予防策はすべての患者に関して普遍的に適用されるが、感染経路別の対策は、特定の感染起因菌が検出された、または疑われた場合においてのみ、標準予防策に加えて適用される。

1996年のガイドラインの標準予防策は、主に血中ウイルスによる職業感染を防止する目的で普及したユニバーサルプリコーション(普遍的予防策)の対象微生物および防御対象物を広げてさらに発展させたものであり、すべての血液、体液、分泌物(汗を除く)、排泄物、汚染物を感染性ありとして取り扱うもので、手袋など保護具の使用、手指衛生、使用済み器具などの処理、環境清掃、針刺し防止などの労働衛生、環境を汚染する患者の配置などからなる。ユニバーサルプリコーションがもっぱらB型肝炎ウイルス、エイズウイルスなど血中ウイルスを考慮して考案された体系であるのに対し、この標準予防策は、多剤耐性菌などその他の微生物も視野に入れて考案された感染経路の遮断策であり、主に医療従事者を守るためのものであった。2007年のガイドラインでは、患者の感染防御の概念が加わり、標準予防策に「呼吸器衛生/咳エチケット」、「安全な注射手技」および「特別な腰椎穿刺手技での感染制御策」が追加された。

感染経路別の対策としては、開放性肺結核などの空気感染、インフルエンザなどの飛沫感染、MRSAなどの接触感染の3つの感染経路について予防策が規定されている。

空気感染は5ミクロン以下の飛沫核に乗って空気中を長時間浮遊し伝播する微生物によるもので、陰圧の個室など空調管理やろ過マスクの使用による空気予防策がポイントとなる注1)

注1)
ここでいう空気感染とはヒトからヒトへの空気感染のことを指している。レジオネラやアスペルギルスも空気感染するが、それは主に水や空調など環境からの感染でありヒトからヒトへの感染ではないため、ここでいう空気予防策は適用されない。なお、結核は飛沫核による空気感染にほぼ限定されるが、麻しんや水痘には空気感染以外の感染経路もある。また、最近、痘そう、重症急性呼吸器症候群(SARS)、高病原性鳥インフルエンザ、ノロウイルス感染症など、空気を介しての感染の危険性が指摘されている。

また、飛沫感染は5ミクロンを超える飛沫に乗って伝播する微生物によるもので、この飛沫は約1メートル以内に落下するので、患者との距離を基本としたベッド配置や通常のマスクの使用による飛沫予防策がポイントとなる。
これに対して、接触感染は、患者との直接接触や周辺の物品・環境表面を経由した間接接触により伝播する微生物によるもので、個室隔離、手袋の使用、消毒薬による手指消毒、ガウンの着用、聴診器などノンクリティカルな器具の共用禁止や消毒など、さまざまな接触伝播経路における予防策が必要となる。

大きな観点から整理すれば、接触予防策は標準予防策の範囲をより拡大し、厳格化したものであるといえる。遮断の対象として、血液、体液などへの接触のみならず、患者の皮膚、衣服、周辺環境への接触も伝播経路としてとらえ遮断するとともに、医療従事者の手指やノンクリティカル器具、物品を消毒して接触伝播のリスクを減少させることが意図されている。

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