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I 感染対策における滅菌・消毒の役割

3 滅菌と消毒の役割

前項の「2.感染経路別の対策」を滅菌、消毒の観点から整理すると、滅菌と消毒は、標準予防策と接触予防策において重要な役割を果たすことがわかる。

1)標準予防策において

器具や物品が再利用される場合、その利用用途により滅菌または消毒をしなければならない。メスなど組織内に侵襲するクリティカル器具には、すべての微生物を殺滅する滅菌が必要であり、内視鏡など粘膜や損傷皮膚に接触するセミクリティカル器具は、多数の芽胞を除きすべての微生物を殺滅する高水準消毒または滅菌をしなければならない。また、体温計など粘膜に接触する一部のセミクリティカル器具や、聴診器など健常皮膚に接触するノンクリティカル器具には、必要に応じて中水準消毒、低水準消毒を適用する。なお、消毒薬で完全な無菌を達成することは容易ではなく、滅菌は主に加熱などの方法で行われる14、15)。ただし、これらの消毒・滅菌処理にはいずれの器具・物品においても洗浄が不十分である場合、消毒・滅菌の効果が十分得られない可能性があるため、消毒・滅菌処理前に適切な洗浄を行うことが重要である12、13)

ところで、標準予防策において、ノンクリティカル器具、物品、環境については、血液、体液、分泌物、排泄物などとの接触やその可能性がない限り、原則的には滅菌や消毒を行う必要がなく、消毒薬を用いない清拭、洗浄および清掃方法で十分な場合が多い。

手指衛生は標準予防策において微生物伝播を減らす重要な要素であり、患者と接触する前、患者の皮膚や周辺の物品・環境に接触したとき、血液、体液、分泌物、排泄物などと接触したあと、手袋を外したあと、患者ケアにおいて汚染部位から清潔部位に移るときは手指衛生を行う。手指衛生の方法は、抗菌成分を含まない石けんによる手洗いを正しく行えば十分であるが、コンプライアンスを高める目的で、手指に目に見える汚れがない場合は、日常的に速乾性手指消毒薬の使用を推奨している2、3)

ノンクリティカル器具に血液などが付着した場合には、もっぱら洗浄や拭き取りによって血液自体を除去することが肝要であり、血中ウイルスに有効な消毒薬は補完的な意味で使用されるべきである。医療従事者の皮膚、粘膜、組織が血液などにさらされた場合も、徹底的な洗浄が肝要であり、血中ウイルスに有効な消毒薬は念のため用いてもよいとされているに過ぎない。生体に安全に適用可能で、血中ウイルスへの有効性が確認されている消毒薬は選択肢が限定されており、また、それらの消毒薬を血液にさらされた生体に適用することで感染の可能性を減少させたという積極的な証拠は未だない16~18)

以上のことを総合的に勘案すると、標準予防策において消毒薬が重要な役割を果たすのは、もっぱら、内視鏡などのセミクリティカル器具を消毒する場面と手指衛生である。

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