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II 滅菌法・消毒法概説

2 主な滅菌法

3)ガス法

高圧蒸気などの熱に耐えない被滅菌物の滅菌法として、ガス法は医療機関においても重要な滅菌法である。

(1)酸化エチレンガス法2、14)

酸化エチレンガスを用いて微生物を殺滅する方法である。酸化エチレンガスの殺滅作用は、生体を構成する蛋白質のアルキル化によるものであるが、その沸点は12.5℃で、非常に高い爆発性、引火性を有しており、通常は引火性を低める目的で炭酸ガスやフレオン等の不活性ガスと混合して使用されている。このガスの殺菌力は、濃度、温度、湿度、時間、減圧または加圧条件、分散の均一性などによって変動するが、被滅菌物と処理条件を十分検討した上で実施すれば、多くの物品の滅菌に利用できる。

この方法で問題となることは、酸化エチレンガスおよびそのガスの二次生成物(エチレンクロルヒドリン等)の毒性である。したがって、滅菌処理後のエアレーションにより残留ガスを徹底的に除去し、被滅菌物にガスなどが残留しないようにすることが肝要であり、また同時に滅菌作業者が作業環境においてガスに曝露する可能性を極力減少させることが必要である。1971年米国で、酸化エチレンガスは変異原性と発癌性のおそれがあるとして使用が禁止されたが、適当な代替滅菌法がないことから、やむを得ない場合に限り使用が許されているというのが現状である。日本では2001年5月より、労働安全衛生法上の作業環境評価基準として、酸化エチレンガス濃度を1ppm以下とする規制が適用されている15)

また、酸化エチレンガスによる滅菌に必要な時間は2ないし4時間であり、また滅菌後のエアレーションには温度条件により8ないし12時間もの長時間がかかるため、医療機関での使用には難点がある。酸化エチレンガス滅菌法評価の指標菌にはBacillus atrophaeus(ATCC 9372、NBRC 13721)などを用いる3)

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(2)過酸化水素低温ガスプラズマ法2、4、16~18)

酸化エチレンガスに代わる代替法としていくつかのガス滅菌法が開発されつつある。その中ですでに実用に供された方法として、過酸化水素低温ガスプラズマ法がある。この方法は、過酸化水素ガスに高真空下で高周波やマイクロ波のエネルギーを付与し、100%電離(イオン化)、すなわちプラズマ化したものを利用する滅菌法である。このプラズマは反応性が高いラジカルで、これを微生物と反応させて死滅させることが滅菌の原理である。

過酸化水素ガスプラズマは他の滅菌用ガスと比べて毒性が低く、低温・低湿度条件下(50℃以下、50%RH以下)で滅菌することができ、またガスの最終生成物は水と酸素であるため、滅菌後のエアレーションは必要ない。しかし浸透性がないため、長狭の管腔の内部まで滅菌が十分に行われているかに注意を払う必要がある。長狭の管腔を有する器材には内部にまでガスが到達できるように器材の管の入り口に装着する過酸化水素入りの小容器も附属品で販売されている。真空に耐えられないもの、水分や空気を多く含むもの、過酸化水素が吸着するセルロースなどには適用できない。近年、過酸化水素ガスの漏洩による生体毒性が問題となっている。

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(3)過酸化水素蒸気滅菌法(過酸化水素ガス低温滅菌)2、4、17、18)

過酸化水素の蒸気を使用して、微生物を殺滅する方法である。過酸化水素は加熱気化器で蒸気化された後、滅菌チャンバ内に蒸気が送られる。システムは真空システムと大気システムがある。真空システムは医療器材の滅菌に適用されており、大気システムは広い空間や狭い空間における汚染除去に適用されている。長所としては、サイクルが短時間であること(30~45分間等)、低温であること、材質適合性が良いこと、操作・設置・モニタリングが簡易であることが挙げられる。短所としては、セルロースの処理が不可能であること、ナイロンを劣化させること、浸透能がエチレンオキサイドよりも劣ることが挙げられる。リネン、綿布、ガーゼ、紙製品、脱脂綿等は過酸化水素を吸着するため、滅菌は不可能である。また液体も滅菌が不可能である。

日本においては、従来から産業用として使用されてはいたが、医療施設向けに販売されていなかった。2009年10月、医療施設向きに医療機器滅菌用として製造販売承認された4)

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