Y's Square:病院感染、院内感染対策学術情報 > 感染対策学術情報 > 消毒薬テキスト(Y’s Text) > III 消毒対象物による消毒薬の選択 > 1)器具
Y’s Text
III 消毒対象物による消毒薬の選択

2 器具および環境48、60、85~94)

器具および環境の滅菌・消毒においては、基本的にそれぞれの対象物に求められる清浄度に応じて滅菌・消毒方法を選択しなければならない88、89)。血液や体液の付着した器具に関して患者の感染症ごとに消毒方法を変更することは、スタンダードプリコーションの原則に反することとなる。また、滅菌・消毒の手順を明確に定め、常に必要な清浄度の水準が達成されるよう滅菌・消毒業務を確立することも重要である。個々の医療従事者により消毒の手順が異なる場合には、感染対策の質が保証されているとは思われない。一方、必要とされる以上のレベルで滅菌・消毒を行っても、それは労力や経費の無駄であり、かえって有害な対策となる場合もある。例えば病室の環境清掃において高水準消毒薬を使用することは無駄であり有害であるので、行うべきでない90、91)

1)器具48、60、87、92~94)

器具の消毒水準と消毒方法は、どのような感染症例に使用した器具であるかではなく、どのような用途に再使用する器具であるかを基準として決定するのが基本である。つまり、器具の使用用途に応じて必要な消毒水準を定めるべきであり、このような標準予防策的な対策が徹底している場合には、患者の感染症によって消毒方法を変更するべき場合は限られている。もっぱら感染症の種類により消毒マニュアルを定めている医療機関においては、標準予防策の原則に照らしてマニュアルに問題がないか再検討を加える必要がある。器具を使用用途ごとに分類した体系としては、Spauldingの提唱した体系が明解かつ合理的であるため、現在も多くのガイドラインがそれに準拠している。Spauldingの分類によると、患者ケアに用いられる器具や物品は、それらが関与する感染リスクの程度によって表Ⅲ-17の3つに分類される48、87、92)
また、Spauldingは消毒の水準についても分類を行ったが、それに基づいて表Ⅲ-18の4つの水準に分類される48)

表Ⅲ-17 Spauldingによる器具分類

器具分類 用途
クリティカル器具
(critical items)
無菌の組織や血管に挿入するもの 手術用器具、循環器または尿路カテーテル、移植埋め込み器具、針など
セミクリティカル器具
(semi-critical items)
粘膜または健常でない皮膚に接触するもの 呼吸器系療法の器具や麻酔器具、軟性内視鏡、喉頭鏡、気管内挿管チューブ、体温計など
ノンクリティカル器具
(non-critical items)
健常な皮膚とは接触するが、粘膜とは接触しないもの ベッドパン、血圧計のマンシェット(カフ)、松葉杖、聴診器など(ベッド柵、テーブルなど環境表面を含めてノンクリティカル表面と言う)

また、Spauldingは消毒の水準についても分類を行ったが、それに基づいて表Ⅲ-18の4つの水準に分類される42)

表Ⅲ-18 Spauldingによる消毒水準分類

滅菌
(sterilization)
いかなる形態の微生物の生命をも完全に排除または死滅させる。
高水準消毒
(high-level disinfection)
芽胞が多数存在する場合を除き、すべての微生物を死滅させる。
中水準消毒
(intermediate-level disinfection)
結核菌、栄養型細菌、ほとんどのウイルス、ほとんどの真菌を殺滅するが、必ずしも芽胞を殺滅しない。
低水準消毒
(low-level disinfection)
ほとんどの栄養型細菌、ある種のウイルス、ある種の真菌を殺滅する。

*現実には完全な排除または死滅を保証することはできず、無菌性保証水準を設定して運用する。詳しくはⅡ.1.滅菌・消毒とはを参照。なお、ここでプリオンは対象外であり、通常の滅菌条件では不活性化されない。

これらのことを総合して、器具の分類ごとに必要な消毒水準を表Ⅲ-19のようにまとめられる48)

表Ⅲ-19 器具分類と消毒水準48、93)

クリティカル器具 滅菌が必要。
セミクリティカル器具 高水準消毒が必要。ただし、一部のセミクリティカル器具(健常でない皮膚に接触する水治療タンク、粘膜に接触する体温計)は中水準消毒でよい。また、歯科用セミクリティカル器具は耐熱性であれば加熱滅菌する。(注)
ノンクリティカル器具 低水準~中水準消毒または洗浄、清拭を行う。

(注)ネブライザーなどの呼吸器関連器具はセミクリティカル器具に分類されるが、高水準消毒薬の器材への吸着95、96)やリンス不足による残留毒性の可能性があるため、安全に高水準消毒をすることが困難な場合が多く、熱水消毒もしくは次亜塩素酸ナトリウムなどの中水準消毒を適用することが多い97)

以上によると、ノンクリティカル器具を除くほとんどすべての器具について滅菌または高水準消毒を行うこととなる。したがって、HBV、HCV、HIV、MRSA、VREなどに感染した患者に使用した器具であっても、それらの感染起因微生物を十分に殺滅することができる水準であるため、患者により消毒方法を区別する必要性がない。ただし、結核菌など抗酸菌については高水準消毒薬を用いた場合でも比較的長い接触時間が必要であり、すべてのセミクリティカル器具について常にそれを確保することは実務的に容易でない。したがって気管支内視鏡や呼吸器系装置など気道分泌物が付着するセミクリティカル器具を消毒する場合に、結核菌にも十分有効な接触時間をとることが多い。

また、ノンクリティカル器具の消毒が必要となるのは、主に接触予防策が必要な場合であり、その他の場合には血液や体液が付着した場合などを除き特に必要性がない85、86)。接触予防策の主な対象であるMRSAやVREは低水準消毒を適切に行えば殺滅することができるので、接触感染するウイルスを対象とする場合などを除き、感染症の種類によって消毒水準を区別する必要性はない。ただし湿潤した器具・環境には低水準消毒薬に強い抵抗性を示すグラム陰性菌が存在するので、それらにはアルコールや次亜塩素酸ナトリウムなどを用いる。

(1)クリティカル器具48、60、87、93、94)

クリティカル器具とは、芽胞を含め、いかなる微生物で汚染された場合にも高い感染の危険性が生じるものであり、組織や血管、または血液が通過するものが含まれる。具体的には手術器具、循環器または尿路カテーテル、移植埋め込み器具、針などがある。クリティカル器具には無菌性が求められるため、可能であれば予め滅菌された単回使用を目的とした製品を使用し、これらの製品が使用できない場合には高圧蒸気法などにより滅菌を行った上で再利用する。なお、単回使用を目的とした製品の再利用は原則として認められていない98)。一方、関節鏡、腹腔鏡などは、滅菌ではなく2~3.5%グルタラ-ル製剤などによる高水準消毒を行うこともある。高水準消毒であることによって関節鏡などによる感染リスクが高まるという証拠は特にない48)

これらの器具を滅菌するときには、まず念入りな前洗浄を行う必要がある。日本では病棟などで一次処理し感染性を低めてから中央材料室へ搬入する方式が伝統的であるが、この方式では一次処理作業において医療従事者が血中ウイルスに曝露する危険性がある。そのため、最近は病棟での一次処理は行わず、そのまま専用コンテナなどに入れて中央材料室へ運び込む方式が基本とされ普及しつつある。しかし病棟で一次処理をせず時間が経過した場合、器具に付着している血液・体液などが乾燥・固着することが多いため、中央材料室では、超音波洗浄を組み込んだウォッシャーディスインフェクターを使用するのがよい。これは熱水噴射により固着した汚れを含めて洗浄が可能であり、また熱水の微生物殺滅力により問題となるような病原性微生物の感染性を消失させることができるので、その後の滅菌作業における感染の危険性をほとんどなくすことができる。このような専用の洗浄装置が利用できない場合には、手作業によりブラシと中性洗剤または酵素洗浄剤などを用いて血液などの汚れを機械的に除去しなければならない。

前洗浄の後、耐熱性の器具であれば高圧蒸気滅菌を行う。非耐熱性の器具の場合には酸化エチレンガス滅菌や過酸化水素低温ガスプラズマ滅菌を行う。また滅菌に準ずる方法として2~3.5%グルタラール製剤による処理を行う場合には芽胞による汚染を考慮に入れ6時間以上浸漬し60、99)、滅菌精製水を用いて消毒薬を洗い流す。

なお米国のFDA基準では、クリティカル器具などに使用して滅菌を行える消毒薬を化学滅菌剤(chemical sterilants)と呼び、2%以上のグルタラール製剤への20~25℃10時間浸漬、0.2%過酢酸への50~56℃12分浸漬、7.5%安定化過酸化水素への20℃6時間浸漬などを挙げることができる100)。しかしながら、化学滅菌剤は適切な前洗浄が行われたとき、かつ接触時間、温度、pHが適切であるときのみ信頼できるものであり、使用法に注意が必要である48)。また必ずしもSAL=10-6といった無菌性保証水準を達成するものではない。なお、医療用器具消毒薬としての安定化過酸化水素はまだ日本で市販されていない。

▲TOPへ戻る

(2)セミクリティカル器具48、60、87、93、94)

セミクリティカル器具とは、粘膜または健常でない皮膚に接触するものであり、これらの器具には少数の芽胞を除きいかなる微生物も存在してはならない。健常な粘膜は一般的な芽胞による感染に対して抵抗性があるが、抗酸菌やウイルスなどその他の微生物には感受性がある。セミクリティカル器具として具体的には呼吸器療法器具、麻酔器具、軟性内視鏡、喉頭鏡、気管内挿管チューブ、食道検圧プローブ、直腸肛門検圧カテーテル、避妊用リングなどが挙げられる。セミクリティカル器具の再利用には通常、熱水洗浄または消毒薬による高水準消毒が必要であるが、粘膜に触れる体温計(口腔用、直腸用)や健常でない皮膚をもつ患者の水治療タンクについては、中水準消毒でよいとされている。

代表的な高水準消毒薬としてはグルタラール、フタラール、過酢酸が挙げられるが、欧米では安定化過酸化水素も使用されている。高濃度(1,000ppm以上)の次亜塩素酸ナトリウムへの30分間浸漬も高水準消毒に分類されるが48)、この消毒薬は金属腐食性が強く、セミクリティカル器具の消毒に用いられる場合は限られている。いかなる消毒薬を用いる場合でも、血液や体液が付着した器具を消毒する場合には十分な効果を得られない可能性があるので、中性洗剤や酵素洗浄剤を用いて十分に前洗浄を行うことが肝要である。

ところで、これらの化学的消毒法は作用時間、濃度、温度、pH、有機物の除去など効力に影響を与える因子が十分に整った場合にのみ必要な消毒水準が確保されるものであり、消毒作業者に対する接触・吸入毒性や患者に対する残留薬剤の危険性などについて十分に留意すべき消毒法である。これらのことを考慮すると、セミクリティカル器具であっても熱に耐えるものである場合には、ウォッシャーディスインフェクターなどによる熱水洗浄を第一選択とすることが確実で安全である。100℃以下の熱水そのものは芽胞に対して無効であるが、洗浄作用を伴う場合には高水準消毒の代替法として十分な効果を発揮する。

消毒薬によって消毒されたセミクリティカル器具は、滅菌精製水ですすぐことが望ましい。すすぎに水道水を用いる場合には、水道水に含まれている危険性のある非結核性抗酸菌やレジオネラによる再汚染に注意が必要である。したがって水道水ですすいだ後はアルコールでリンスし、かつ強制乾燥することが望ましい。この強制乾燥には細菌の増殖しやすい湿潤環境を取り除き保管中の器具における細菌増殖を防ぐという意味もある。


①軟性内視鏡101、102)

軟性内視鏡は損傷した消化管や気管粘膜にも接触するため、できれば滅菌処理することが望ましい。しかしながら、耐熱性がなく高圧蒸気滅菌などでの処理が不可能であるため、高水準消毒薬であるグルタラール、フタラール、過酢酸による再処理を行う。この再処理は患者間でその都度行うことが原則であるが、その浸漬時間については議論がある。

2~3.5%グルタラールへの浸漬時間は、日本において承認されているグルタラール製剤の用法によると30分間以上(3%製剤では15分間以上)となっているが、日本消化器内視鏡学会のガイドライン(1998年)103)および日本消化器内視鏡技師会消毒委員会のガイドライン(2004年)では10分間と規定された104)。この10分間という浸漬時間は世界消化器病学会のMinimal standards for disinfections of endoscopic instrumentationにおいても推奨されている105)

米国においてもこのような薬事承認と学会見解の相違がみられ、FDAの承認した2.4%グルタラールの軟性内視鏡全般のための用法は25℃45分間となっているが、APICのガイドラインにおいては2%グルタラールで20℃20分間以上と推奨されている48、102)。APICは、FDAの審査基準においては高度の結核菌汚染があった場合の試験データに基づいて用法が設定されるため、現実に必要な時間よりも長い時間が設定されたとの見解をとっており、その論拠として用手による機械的な内視鏡洗浄が汚染微生物を約4log(すなわち99.99%)減少させることを確認した研究をあげ、前洗浄が確実にできていれば消毒時において高度な微生物汚染は存在しないという立場をとっている。

英国においては、内視鏡に2%グルタラールを用いる場合、通常は10分間以上、結核による感染がわかっているか疑わしい場合については20分間以上、芽胞については少なくとも3時間の浸漬が必要であると規定されている106)

以上のことから、消化器内視鏡による結核伝播の可能性が低いことも合わせて考慮すると、2%グルタラールを軟性内視鏡に用いる場合の浸漬時間は消化器内視鏡で10分間以上を基本とするのが妥当と思われ、この条件は2013年に公表された日本環境感染学会、日本消化器内視鏡学会、日本消化器内視鏡技師会のマルチソサエティ実践ガイドでも推奨されている107)。ただし、気管支内視鏡においては結核菌伝播のリスクがあるため108)、浸漬時間には注意が必要である。

なお、フタラールの浸漬時間については、日本において承認されているフタラール製剤の用法によると5分間以上となっているが、FDAは0.55%フタラールについて20℃12分間で高水準消毒と承認しており100)、日本のマルチソサエティ実践ガイドでは10分間としており107)、この条件は高度の結核菌汚染にも有効である。

グルタラールに対して比較的抵抗性を持つ結核菌やMycobacterium chelonaeなどの非結核性抗酸菌が多数存在する場合にはかなり長い接触時間が必要であること、また、チャンネル内にバイオフィルムなどが形成された場合には時間が経過しても消毒薬が十分浸透せず消毒が不完全になってしまうことを勘案すると、内視鏡を消毒するにあたっては前洗浄でのブラッシングは非常に重要な操作である。また内視鏡再処理の最後に乾燥を目的としてアルコールリンスを行うが、グルタラールに低感受性を示す抗酸菌であってもアルコールに対しては感受性を示すと報告されているため104、109、110)、アルコールリンスを行うことは、この意味でも重要な操作である。

軟性内視鏡の主な洗浄・消毒手順は表Ⅲ-20のとおりである。生体組織内に直接侵入する生検鉗子などの部品はなるべくディスポーザブル製品を用い、それができない場合には滅菌処理をした上で再利用する。なお、内視鏡は洗浄・消毒の均一化、および人体への消毒薬曝露防止、作業量の軽減などを考慮して、内視鏡自動洗浄装置を用いることが望ましい107)

【軟性内視鏡の消毒】
●2~3.5%グルタラール
●0.55%フタラール
●0.3%過酢酸

表Ⅲ-20 軟性内視鏡の洗浄・消毒・乾燥・保管の手順

1.ベッドサイドでの洗浄・消毒 (1)検査終了直後に、内視鏡外表面の清拭と吸引・鉗子チャンネルの吸引洗浄を行う。
(2)送気・送水チャンネルへの送水は、専用(air/water:A/W)チャンネル洗浄アダプターを装着して、送水チャンネルと送気チャンネルの両方に送水する。
(3)内視鏡に接続したケーブルおよび吸引チューブは、消毒用エタノール清拭により消毒すると共に、汚染が拡大しないように抜去する。
2.洗浄室での用手による洗浄 (1)漏水テストの実施:
検査終了後、症例ごとに漏水テストを行う。
(2)内視鏡外表面の洗浄:
鉗子起上装置を含め、内視鏡外表面の汚れを十分に落とす。
(3)送気・送水ボタン、吸引ボタン、鉗子栓などの洗浄は、それぞれの内視鏡から外して行う。
(4)吸引・鉗子チャンネルの洗浄:
チャンネル洗浄ブラシを用いて、全てのチャンネルをブラッシングする。
(5)洗浄液のすすぎ:
洗浄後、内視鏡外表面、チャンネル内のすすぎを十分に行う。
3.消毒 (1)内視鏡の消毒に用いる消毒薬:
高水準消毒薬である過酢酸、グルタラールおよびフタラールを用いる。
(2)過酢酸、グルタラールおよびフタラールは付着や蒸気曝露に注意して取り扱う。
(3)消毒薬の使用期限は、経時的な分解や水による希釈率などを考慮して決定する。
(4)消毒後の内視鏡はすすぎを十分に行う。
(5)すすぎ後は内視鏡の吸引・鉗子チャンネルにアルコールフラッシュを行い、送気や吸引を行ってすべての管路を乾燥
させる。
4.洗浄・消毒の履歴管理 洗浄・消毒の記録を残す。(実施年月日、時刻、患者氏名、内視鏡番号、担当者氏名、内視鏡自動洗浄・消毒装置番号、消毒薬濃度、内視鏡自動・洗浄装置の運転状況など)
5.保管 内視鏡は、送気・送水ボタン、吸引ボタン、鉗子栓などを外して保管庫に保管する。

(文献107より一部改変)

②呼吸器系装置

人工呼吸器、ネブライザー、吸入麻酔装置などの呼吸器系装置は、その回路を通過する空気や加湿水などの飛沫が呼吸器粘膜に触れるためセミクリティカル器具に分類され、患者間においては高水準消毒ないし滅菌を行うことが原則である111)。しかしながらその構造は複雑で高水準消毒や滅菌を行うことが困難な場合が多い。したがって呼吸器系装置においてはパスツーリゼーション(70℃を超える熱水による30分間処理)や熱水消毒(80℃10分間)が高水準消毒の代替として認められている111、112)。熱水や消毒薬を循環させることができない装置である場合には、蛇管ホースや加湿水タンクなどの部分を取り外して消毒を行うことになる。

湿熱に耐えない部分であってもグルタラールなどを使用すれば高水準消毒を達成できるが、残留薬の毒性を考慮するとかえって危険である場合が多い。また、これらの器具において実際に感染伝播の危険を生むのは緑膿菌などのグラム陰性菌である場合が多いので、揮発性があり残留の少ない低濃度の次亜塩素酸ナトリウム(100ppm、1時間)を用いて中水準消毒を行うことが多い97)

滅菌法、熱水消毒、パスツーリゼーション、高水準消毒薬やアルコール系消毒薬との十分な接触は結核菌など抗酸菌に有効であるが、次亜塩素酸ナトリウムは高濃度でなければ無効である。呼吸器系装置の消毒に低濃度の次亜塩素酸ナトリウムを用いている場合などには、結核の可能性によって消毒薬の濃度、接触時間、種類などを変更する 。

なおこれらの呼吸器系装置の加湿水中でグラム陰性菌が増殖することが多いので、加湿水には滅菌精製水を用い少なくとも24時間以内に交換する。

【呼吸器系装置の消毒】
●100ppm(0.01%)次亜塩素酸ナトリウム液

③気管カテーテル・経鼻カテーテル

これら気道粘膜に接触するカテーテルにはディスポーザブル製品を用いる。ただし喀痰の吸引カテーテルなど頻繁に使用するものは、同一の患者に使用するかぎりにおいて、高水準消毒をすることなく再使用する場合がある。この場合カテーテルの微生物汚染を最小限に止めることを目的として消毒用エタノールで清拭したり滅菌済みの0.1%ベンザルコニウム塩化物液や0.05~0.2%アルキルジアミノエチルグリシン塩酸塩液に浸漬することがあるが、少なくとも24時間以内にカテーテルと浸漬用薬液を交換する。なお0.1%ベンザルコニウム塩化物液に8~12%のエタノールを添加して細菌汚染の可能性を低下させる場合もある。カテーテルの吸引洗浄用水は汚染が甚だしいため、頻回に新しいものと交換する。なお、消毒薬に浸漬した吸引カテーテルは毎回滅菌精製水で洗浄するか、もしくはアルコール綿で外側を消毒してから再使用する。この場合、アルコール残留による気道刺激に注意が必要である。

【吸引カテーテルの消毒(同一患者に使用)】
●消毒用エタノール
●0.1%ベンザルコニウム塩化物液
●0.05~0.2%アルキルジアミノエチルグリシン塩酸塩液
● 8 ~12%エタノール添加0.1%ベンザルコニウム塩化物液

④体温計

体温計はアルコール系消毒薬で清拭して中水準消毒する。ただし、口腔用と直腸用は区別し兼用しない。また、隔離の必要なMRSA患者などに使用する体温計は他の患者と共用しない。

【体温計の消毒】
●消毒用エタノール
●70%イソプロパノール

▲TOPへ戻る

(3)ノンクリティカル器具48、60、85、86、93、94、113、114)

ノンクリティカル器具とは、健常な皮膚と接触するが粘膜や健常でない皮膚に接触しない器具であり、感染伝播には通常関与しない。したがって高度な汚染を受けないかぎり日常的な洗浄・清拭のみで十分であり、特に消毒の対象とはならない。ただし、接触予防策下においてはノンクリティカル器具について使い捨てもしくは患者専用にすることが望ましいが、複数の患者で共用する場合には他の患者の使用前に低水準消毒もしくは中水準消毒を行う。またMRSA、VREなどの多剤耐性菌による感染または保菌が判明している場合にはノンクリティカル器具であっても患者専用にすることがCDCの2006年多剤耐性菌対策ガイドラインで勧告されている115、116)。なお、ノンクリティカル器具が血液などで汚染された場合には、よく洗浄した後、1,000ppm(0.1%)次亜塩素酸ナトリウム、場合によりアルコールで消毒する。

ノンクリティカル器具として具体的には、聴診器、血圧計のマンシェット(カフ)、松葉杖、ベッドパン、水枕などがあげられる。本テキストでは、リネン、食器、浴槽、洗面台などを物品に分類し、またベッド枠、ベッドテーブル、ドアノブ、医療機器表面などをベッド周辺として環境に分類し、消毒法について後述する。

ノンクリティカル器具の洗浄・清拭は定期的に行うべきである。また上述のように血液などで汚染された場合に汚染の除去と消毒が必要なこと、および接触予防策においてノンクリティカル器具を共用する場合に患者毎に消毒が必要なことは広く合意されている85、86、112)。しかし、その他の場合について、どのような場合にどのような頻度で消毒が必要であるのかについては様々な議論がある114)

ノンクリティカル表面を消毒する場合には、通常下記のような消毒薬で清拭または30分間浸漬して消毒する。ただし、耐熱性・耐水性の器具の場合には、熱水消毒を選択することが望ましい。

・熱水(80℃10分間)
・0.1~0.2%ベンザルコニウム塩化物液
・0.1~0.2%ベンゼトニウム塩化物液
・0.1~0.2%アルキルジアミノエチルグリシン塩酸塩液
・アルコール系消毒薬(消毒用エタノール、70%イソプロパノール、イソプロパノール添加エタノール液)
・200~1,000ppm(0.02~0.1%)次亜塩素酸ナトリウム液

上記の方法はMRSA、VREなどを含む一般細菌、酵母菌に有効であり日常的な消毒法として十分であるが、その他特定の微生物を対象として消毒する必要がある場合には表Ⅲ-21の方法を選択する。

表Ⅲ-21 特定の微生物を対象とするノンクリティカル表面の消毒法

対象微生物 消毒薬と濃度
インフルエンザウイルスなどエンベロープのあるウイルス

低水準消毒薬に抵抗性を示すグラム陰性菌(湿潤した表面)

熱水(80℃10分間)
アルコール
200~1,000ppm次亜塩素酸ナトリウム液注1)
HBVなど血中ウイルス
(エンベロープあり)
熱水(98℃6分間、多くの場合は80℃での10分間洗浄でも可)
1,000ppm次亜塩素酸ナトリウム液(血液自体の消毒は5,000~10,000ppm)
アルコール
糸状菌 熱水(80℃10分間)
500~1,000ppm次亜塩素酸ナトリウム液
アルコール
結核菌 熱水(80℃10分間)
アルコール
0.5~1%クレゾール石ケン液注2)
0.2~0.5%アルキルジアミノエチルグリシン塩酸塩液
1,000ppm以上の次亜塩素酸ナトリウム液(低濃度では無効)
ポリオウイルスなどエンベロープのないウイルス 熱水(98℃15~20分間、多くの場合は80℃での10分間洗浄でも可)
500~1,000ppm(特別な場合には5,000ppm)次亜塩素酸ナトリウム液
場合によりアルコール
芽胞 徹底的な洗浄・清拭
特別な場合には5,000ppm次亜塩素酸ナトリウム液

注1)次亜塩素酸ナトリウムをノンクリティカル器具・物品・環境の清拭に用いる場合には、原則としてごく小範囲に使用し広範囲には使用しない。
注2)クレゾール石ケン液は水質汚濁防止法、下水道法によりフェノール類として5ppmの排水中濃度規制があるため現在ではあまり用いられない。0.5~1%という濃度はクレゾールとしての濃度。
(文献114より転載)

①聴診器など

聴診器は患者の皮膚や医療従事者の手指が頻繁に接触する器具であり、微生物の接触伝播が問題となる場合には、患者間の共用を避け、または患者間にまたがって使用する際にその先端部をアルコール系消毒薬で清拭して消毒する117)。血圧計のマンシェット(カフ)、松葉杖なども同様に扱い、適宜アルコール系消毒薬で清拭して消毒する。アルコールが使用できない器具の場合には、0.2%ベンザルコニウム塩化物液、0.2%ベンゼトニウム塩化物液、0.2%アルキルジアミノエチルグリシン塩酸塩液、または500ppm(0.05%)次亜塩素酸ナトリウム液で清拭して消毒する。

②ベッドパンなど

ベッドパンなど排泄物による汚染があるノンクリティカル器具は、フラッシャーディスインフェクター(ベッドパンウォッシャー)により、90℃1分間の蒸気による熱水消毒を行う。熱水消毒が行えない場合には、洗浄後に500ppm(0.05%)次亜塩素酸ナトリウム液に30分間浸漬する。下血、血便時などウイルスが問題となる場合には1,000ppm(0.1%)次亜塩素酸ナトリウム液に30分間浸漬する。また、赤痢菌や腸管出血性大腸菌、チフス菌・パラチフスA菌など細菌性胃腸炎患者に使用したベッドパンは洗浄後に0.1%ベンザルコニウム塩化物液、0.1%ベンゼトニウム塩化物液、0.1%アルキルジアミノエチルグリシン塩酸塩液に30分間浸漬する場合もある60)

③水枕

水枕は布などにくるんで使用する場合がほとんどであり、清拭により汚れを落とし清潔に保管することで通常は十分である。

【聴診器などの消毒】
●消毒用エタノール
●70%イソプロピルアルコール
●イソプロパノール添加エタノール液

【ベッドパンの消毒】
熱水消毒が第一選択。熱水消毒が行えない場合には
●0.1%ベンザルコニウム塩化物液
●0.1%ベンゼトニウム塩化物液
●0.1%アルキルジアミノエチルグリシン塩酸塩液
●500ppm(0.05%)次亜塩素酸ナトリウム液

▲TOPへ戻る

Prev | Return | Next

関連サイト