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IV 対象微生物による消毒薬の選択

4 抗酸菌

抗酸菌(Mycobacterium spp.)はグラム陽性桿菌で、細胞壁に多量の脂質を含有するため消毒薬抵抗性が強いが、熱、日光、紫外線により死滅する。抗酸菌は結核菌と非結核性抗酸菌に分類される。

1)結核菌(Mycobacterium tuberculosis147)

結核菌は結核の原因菌である。活動性肺結核患者の呼気から発散される飛沫核に含まれ、長期間室内空気中に浮遊してヒトに伝播する。初期結核は多くの場合不顕性であり、そのまま潜在性結核に移行し、その後2年以内に5%、2年以降にさらに5%が結核を発症すると言われる。近年でも多くの死者を出しており、先進国での罹患率上昇や多剤耐性結核(Multidrug-resistant tuberculosis:MDR-TB)や広範囲薬剤耐性結核菌(Extensively drug-resistant tuberculosis:XDR-TB)が問題となっている。

結核の感染予防策としては標準予防策に加え空気予防策が必要であり、患者を隔離するための個室病室は空気感染隔離室(airborne infection isolation room,AII室)と呼ばれる。2007年CDC隔離予防策ガイドラインによる空気感染隔離室の概要を表Ⅳ-7に示す148~150)。空気予防策に使用される米国の労働安全衛生機構(NIOSH)の性能基準に合致するマスクとして、空力学的質量径で直径0.3μm以上の粒子を95%以上ろ過するN95微粒子マスクが推奨されている。

表Ⅳ-7 空気感染隔離室の概要

  • 周囲の区域に対し陰圧に設定
  • 1時間に12回以上(新築・改修設備)または6回以上(既存設備)の換気がなされ、適切な戸外に排気されるか、もしくは、室内空気が他区域へ循環する前に超高性能ろ過を受けるように設定
  • 浴室とトイレが設置されている
  • 部屋のドアは閉めておく
入室するすべての医療従事者は少なくともN95マスクを着用する

呼吸器系装置や喀痰吸引から飛沫による伝播のほか148)、気管支内視鏡の消毒不良を介した結核伝播が報告されているので151、152)、呼吸器系のセミクリティカル器具は結核菌に対する十分な効力を念頭に高水準消毒を行うべきである。このことは高水準消毒の定義から当然のことであるが、セミクリティカル器具の種類によっては必ずしも結核菌に十分有効とはいえない方法を用いる場合がある。

III-2-1)-(2) 軟性内視鏡 参照】

III-2-1)-(2) 呼吸器系装置 参照】

なお、気道粘膜に触れる薬剤の汚染にも注意が必要である153)

ただし、ノンクリティカル器具や環境表面を介した伝播は特に報告がない。したがって、結核症例に使用した器具であっても、喀痰などによる特別な汚染がなければ、通常の洗浄・清拭・消毒を行えばよい。室内も通常の清掃でよい148)

結核菌を対象として消毒する場合には、表Ⅳ-8の消毒法を用いる5、26、38、154)。低水準消毒薬であるベンザルコニウム塩化物やクロルヘキシジングルコン酸塩は無効である。

表Ⅳ-8 結核菌を対象とする消毒法

セミクリティカル器具
(気管支内視鏡など)
2~3.5%グルタラール(前洗浄後20分間以上)
0.55%フタラール(12分間)
0.3%過酢酸(時間は温度による)
ノンクリティカル表面
(特に消毒が必要な場合)
熱水(80℃10分間)
アルコール
0.5~1%クレゾール石ケン液
0.2~0.5%アルキルジアミノエチルグリシン塩酸塩液
1,000ppm以上の次亜塩素酸ナトリウム液(低濃度では無効)

* 濃度はクレゾールとして

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