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IV 対象微生物による消毒薬の選択

6  芽胞

グラム陽性桿菌であるBacillus spp.とClostridium spp.は芽胞を形成する。栄養型の分裂増殖が困難となった環境で芽胞を形成するが、環境が改善すると発芽し再び細菌に復元して増殖する。芽胞は熱、乾燥、消毒薬に強い抵抗性を示し、乾燥環境表面で長期間生存するが、発芽して栄養型細菌となった場合の抵抗性は一般細菌と同じである。

2)クロストリジウム(Genus Clostridium190)

クロストリジウムは嫌気性で、土壌中に広く生息しているが、ヒトや動物の腸管内に常在しているものもある。

ディフィシル菌(Clostridium difficile)はヒトの腸管の常在菌である。ただし抗菌薬の投与による菌交代症を起こした場合、腸管内で菌が増殖して毒素を産生し、偽膜性大腸炎や出血性腸炎を引き起こすため、特に病院内で問題となる191)

ディフィシル菌は糞便中に排泄されるが、感染症例の周辺環境が芽胞によって汚染されることが多く、医療従事者の手指や機器を介して他の患者に伝播するため、感染対策上重要な芽胞形成菌である。手袋着用が重要であり、感染症例には糞便を念頭においた接触予防策を行う。

ウェルシュ菌(Clostridium perfringens)、Clostridium novyiClostridium histolycumはガス壊疽の原因菌である。深い創傷から芽胞が侵入した筋肉内など嫌気的条件下で増殖し、毒素を産生して病因となる。また、ウェルシュ菌にはエンテロトキシンを産生する株があり、深鍋で調理されるスープなどで増殖し、食中毒の原因となる。どちらの場合も症例には標準予防策を行う。

【破傷風菌については IV-8-5)-(7) 破傷風 を参照】

【ボツリヌス菌については IV-8-5)-(7) ボツリヌス を参照】

〈感染対策および消毒〉

芽胞は熱抵抗性および消毒薬抵抗性が強い39)。芽胞に有効な消毒薬は過酢酸、グルタラール、高濃度の次亜塩素酸ナトリウムなど毒性、刺激性、または腐食性の強いものであり、これらを広範囲の環境に用いるべきではない。したがって、ディフィシル菌のように接触伝播が問題となる芽胞については、綿密な湿式清掃を行い、物理的に除去することが基本となる。おむつ交換などで感染症例に触れる場合や患者周囲に接触する場合に手袋やガウンを着用することが重要であり、手袋をはずした後には、石けんと流水による十分な手洗いを行う。

消毒薬が芽胞を殺滅する速度は緩慢であり、試験評価する際の菌量、温度、試験法により殺滅に必要な時間が大きく変化する。一般に2%グルタラールは芽胞を殺滅するのに3時間以上を要するといわれるが、米国FDAの試験条件下では20~25℃で10時間を要する154)。クロストリジウムの芽胞はバチルスの芽胞よりも消毒薬抵抗性が弱く、2%グルタラールはディフィシル菌の芽胞を20分間以内で殺滅すると評価されている5)

過酢酸はグルタラールより殺芽胞速度が速く、フタラールはグルタラールよりも遅い192)。次亜塩素酸ナトリウムが実使用において十分な殺芽胞力を発揮するには、少なくとも1,000ppm(0.1%)、できれば5,000ppm(0.5%)が必要と思われる139、140、193)。ただし、これらの濃度では金属腐食性が強く広範な使用には適さない。低濃度のポビドンヨード液はクロストリジウムの芽胞を減少させることができる。アルコールに殺芽胞力は期待できない。

芽胞を対象とするノンクリティカル表面の処理法を表Ⅳ-16に示す。

表Ⅳ-16 芽胞を対象とする処理法

ノンクリティカル表面
(特に処理が必要な場合)
徹底的な洗浄・清拭
特別な場合には5,000ppm次亜塩素酸ナトリウム液

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