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IV 対象微生物による消毒薬の選択

8 感染症法の類別における微生物

1)感染症法概説201~210)

感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(感染症新法)が1999年4月1日より施行され、それまでの伝染病予防法、性病予防法、後天性免疫不全症候群の予防に関する法律が廃止された。これにより感染症法と結核予防法の2つの法律に基づいて、市井感染を含む感染症に対する国家的な措置が講じられるようになった。また、重症急性呼吸器感染症(SARS)などの発生を踏まえて、2003年11月5日感染症新法の改正が行われ、感染症法として施行された。2006年12月8日に公布された改正感染症法により結核予防法が廃止され、結核は感染症法の二類感染症に位置付けて総合的な対策が実施されることとなった。改正感染症法では届出疾患が追加され、また生物テロや事故による感染症の発生・まん延を防止するため、病原体等の管理体制を確立する目的で新規に「特定病原体等」に関する項目が制定された。さらに2008年5月2日に公布された改正感染症法により2006年6月より指定感染症に指定されていた鳥インフルエンザ(H5N1)が二類感染症に変更になり、新しい類型として「新型インフルエンザ等感染症」が制定された。この新型インフルエンザ等感染症には「新型インフルエンザ」及び「再興型インフルエンザ」が指定されている。

感染症法はその後2011年2月1日に改正され、四類感染症にチクングニア熱、五類感染症に薬剤耐性アシネトバクター感染症(定点)が追加され、2013年3月4日及び同年4月1日に実施された感染症予防法の一部改正では、重症熱性血小板減少症候群(病原体がフレボウイルス属SFTSウイルスであるものに限る)が四類感染症に追加され、フレボウイルス属SFTSウイルスが3種病原体等に追加された。また侵襲性インフルエンザ菌感染症、侵襲性髄膜炎菌感染症及び侵襲性肺炎球菌感染症が五類感染症(全数)に追加された。さらに2014年9月9日には感染症法施行規則の一部改正が公布・施行され、続いて同年11月21日に感染症予防法の一部を改正する法律が公布された。本改正および政令により、二類感染症に中東呼吸器症候群(Middle East Respiratory Syndrome;MERS)および鳥インフルエンザ(H7N9)が追加され、五類感染症に播種性クリプトコックス症(全数)、カルバペネム耐性腸内細菌科細菌感染症(全数)ならびに水痘(入院例に限る。;全数)が追加され、薬剤耐性アシネトバクター感染症が定点から全数に変更された。また2016年2月5日にはジカウイルス感染症が四類感染症に追加されるなど、国外で流行がみられる感染症および国内で注視する必要のある感染症を加え、その発生動向を報告する体制となった。

感染症法は、感染症の感染力や罹患した場合の重篤性等に基づいて、一類感染症から五類感染症の感染症を分類指定し、さらに指定感染症と新感染症の分類を設けている。指定感染症は既知の感染症において、法の規定の全部あるいは一部を準用しなければ、国民の生命および健康に重大な影響を与える恐れがあるものとして政令で定めるものであり、指定期間は1年以内である。新感染症は既知の感染性の疾病とその病状または治療の結果が明らかに異なるもので、罹患した場合の危険性が高い感染症である。

これら感染症に対しては対応措置がそれぞれ規定されている(表Ⅳ-20表Ⅳ-20別表)。また、一類から四類感染症の患者と無症状病原体保有者、五類感染症又は新型インフルエンザ等感染症の患者、および新感染症にかかっていると疑われる者を診断した医師は最寄りの保健所長を経由して都道府県知事へ届けるよう規定されている(表Ⅳ-21)。なお政令で定める動物については獣医師にも一定の届出義務がある。消毒に関しては、感染症法施行規則第十四条が次のように規定している。

対象となる場所の状況、感染症の病原体の性質その他の事情を勘案し、十分な消毒が行えるような方法により行うこと。
消毒を行う者の安全並びに対象となる場所の周囲の地域の住民の健康及び環境への影響に留意すること。

具体的な消毒方法に関しては、「新版 増補版 消毒と滅菌のガイドライン」157)が発行されている。

以下、感染症法の類別における微生物について、感染症毎に、病原体の種類、感染対策の種類、消毒法、伝播予防策の観点から見た概要を述べる158、175、176、201~214)※

表Ⅳ-20 感染症の分類・性格・対応・措置


感染症名等 性格 主な対応・措置




エボラ出血熱
クリミア・コンゴ出血熱
痘そう
南米出血熱
ペスト
マールブルグ病
ラッサ熱
感染力、罹患した場合の重篤性等に基づく総合的な観点からみた危険性が極めて高い感染症 原則入院
特定職種への就業制限
消毒等の対物措置
(例外的に、建物への措置、通行制限等の措置も適応対象とする)




急性灰白髄炎
結核
ジフテリア
重症急性呼吸器症候群(病原体がベータコロナウイルス属SARSコロナウイルスであるものに限る。)
中東呼吸器症候群(病原体がベータコロナウイルス属MERSコロナウイルスであるものに限る。)
鳥インフルエンザ(H5N1)
鳥インフルエンザ(H7N9)
感染力、罹患した場合の重篤性等に基づく総合的な観点からみた危険性が高い感染症 状況に応じて入院
消毒等の対物措置
特定職種への就業制限




コレラ
細菌性赤痢
腸管出血性大腸菌感染症
腸チフス
パラチフス
感染力、罹患した場合の重篤性等に基づく総合的な観点からみた危険性は高くないが、特定の職業への就業によって感染症の集団発生を起こし得る感染症 特定職種への就業制限
消毒等の対物措置




E型肝炎、ウエストナイル熱、A型肝炎、エキノコックス症、黄熱、オウム病、オムスク出血熱、回帰熱、キャサヌル森林病、Q熱、狂犬病、コクシジオイデス症、サル痘、ジカウイルス感染症、重症熱性血小板減少症候群(病原体がフレボウイルス属SFTSウイルスであるものに限る。)、腎症候性出血熱、西部ウマ脳炎、ダニ媒介脳炎、炭疽、チクングニア熱、つつが虫病、デング熱、東部ウマ脳炎、鳥インフルエンザ(H5N1及びH7N9を除く。)、ニパウイルス感染症、日本紅斑熱、日本脳炎、ハンタウイルス肺症候群、Bウイルス病、鼻疽、ブルセラ症、ベネズエラウマ脳炎、ヘンドラウイルス感染症、発しんチフス、ボツリヌス症、マラリア、野兎病、ライム病、リッサウイルス感染症、リフトバレー熱、類鼻疽、レジオネラ症、レプトスピラ症、ロッキー山紅斑熱 人から人への感染はほとんどないが、動物、飲食物等の物件を介して感染するため、動物や物件の消毒、廃棄などの措置が必要となる感染症 媒介動物の輸入規制
消毒等の対物措置
消毒、ねずみ等の駆除等の措置




別表 国が発生動向調査を行い、その結果等に基づいて必要な情報を一般国民や医療関係者に提供・公開していくことによって、発生・拡大を予防すべき感染症 感染症発生状況の収集、分析とその結果公開、提供












新型インフルエンザ 新たに人から人に伝染する能力を有することとなったウイルスを病原体とするインフルエンザであって、全国的かつ急速なまん延により国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがあると認められるもの 消毒
再興型インフルエンザ かつて世界規模で流行したインフルエンザであってその後流行することなく長期間が経過しているものが再興したものであって、全国的かつ急速なまん延により国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがあると認められるもの




政令で1年間以内の期間、指定される感染症 既知の感染症の中で上記一~三類に分類されない感染症において一~三類に準じた対応の必要が生じた感染症(政令で指定、1年限定) 厚生労働大臣が公衆衛生審議会の意見を聞いたうえで、必要な入院や消毒等の対物措置等を政令で規定



[当初]都道府県知事が厚生労働大臣の技術的指導・助言を得て個別に応急対応する感染症 人から人に伝染すると認められる疾病であって、既知の感染症と症状等が明らかに異なり、その伝染力及び罹患した場合の重篤度から判断した危険性が極めて高い感染症

厚生労働大臣が原則として公衆衛生審議会の意見を聞いたうえで、または緊急に、都道府県知事の事務に関し必要な指示をすることができる
[要件指定後]政令で症状等の要件指定をした後に一類感染症同様の扱いをする感染症 一類感染症に準じた対応を行う

表Ⅳ-20 別表

五類感染症(全数把握) 五類感染症(定点把握)
アメーバ赤痢、ウイルス性肝炎(E型肝炎及びA型肝炎を除く)、カルバペネム耐性腸内細菌科細菌感染症、急性脳炎(ウエストナイル脳炎、西部ウマ脳炎、ダニ媒介脳炎、東部ウマ脳炎、日本脳炎、ベネズエラウマ脳炎及びリフトバレー熱を除く)、クリプトスポリジウム症、クロイツフェルト・ヤコブ病、劇症型溶血性レンサ球菌感染症、後天性免疫不全症候群、ジアルジア症、侵襲性インフルエンザ菌感染症、侵襲性髄膜炎菌感染症、侵襲性肺炎球菌感染症、水痘(入院例に限る。)、先天性風しん症候群、梅毒、播種性クリプトコックス症、破傷風、バンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌感染症、バンコマイシン耐性腸球菌感染症、風しん、麻しん、薬剤耐性アシネトバクター感染症 RSウイルス感染症、咽頭結膜熱、A群溶血性レンサ球菌咽頭炎、感染性胃腸炎、水痘、手足口病、伝染性紅斑、突発性発しん、百日咳、ヘルパンギーナ、流行性耳下腺炎、インフルエンザ(鳥インフルエンザ及び新型インフルエンザ等感染症を除く。)、急性出血性結膜炎、流行性角結膜炎、性器クラミジア感染症、性器ヘルペスウイルス感染症、尖圭コンジローマ、淋菌感染症、感染性胃腸炎(病原体がロタウイルスであるものに限る。)、クラミジア肺炎(オウム病を除く)、細菌性髄膜炎(髄膜炎菌、肺炎球菌、インフルエンザ菌を原因として同定された場合を除く。)、マイコプラズマ肺炎、無菌性髄膜炎、ペニシリン耐性肺炎球菌感染症、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症、薬剤耐性緑膿菌感染症

表Ⅳ-21 医師の届出

感染症類型 届出義務 届出期限
一類~四類感染症§ 全ての医師 直ちに
五類感染症(全数把握) 全ての医師 7日以内#†
五類感染症(定点把握) 指定届出機関の管理者 翌週の月曜日あるいは翌月の初日
新型インフルエンザ等感染症(疑似症患者および無症状病原体保有者を含む) 全ての医師 直ちに
新感染症にかかっていると疑われる者 全ての医師 直ちに
疑似症(定点把握) 指定届出機関の管理者 直ちに

§:一類感染症および二類感染症のうち、結核、重症急性呼吸器症候群(病原体がベータコロナウイルス属SARSコロナウイルスであるものに限る。)、中東呼吸器症候群(病原体がベータコロナウイルス属MERSコロナウイルスであるものに限る。)、鳥インフルエンザ(病原体がインフルエンザウイルスA属インフルエンザAウイルスであってその血清亜型がH5N1又はH7N9であるものに限る。)については疑似症患者を患者とみなす(法第8条1項および施行令第4条1項)。
#:侵襲性髄膜炎菌感染症及び麻しんについては直ちに、風しんはできるだけ早く届出。
†:後天性免疫不全症候群及び梅毒については無症状病原体保有者を含む。
※:性器クラミジア感染症、性器ヘルペスウイルス感染症、尖圭コンジローマ、淋菌感染症、ペニシリン耐性肺炎球菌感染症、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症、薬剤耐性緑膿菌感染症については翌月の初日

法14条第1項に規定する厚生労働省令で定める疑似症
1)摂氏38度以上の発熱及び呼吸器症状(明らかな外傷又は器質的疾患に起因するものを除く。)若しくは2)発熱及び発しん又は水疱(ただし、当該疑似症が二類感染症、三類感染症、四類感染症又は五類感染症の患者の症状であることが明らかな場合及び感染症法の対象外の感染性疾患であることが明らかな場合を除く。)

以下、感染症法の類別における微生物について、感染症毎に、病原体の種類、
感染対策の種類、消毒法、伝播予防策の観点から見た概要を述べる157、173、174、199~208)

※消毒法についてはそれぞれ関連する前節を参照。

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