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IV 対象微生物による消毒薬の選択

8 感染症法の類別における微生物

4)三類感染症

三類感染症には腸管出血性大腸菌感染症のほか、二類感染症から移行したコレラ、細菌性赤痢、腸チフス、パラチフスが指定されている。感染症例への入院勧告規定はないが、飲食物にかかわる就業が制限される。

三類感染症では糞便由来の接触伝播に対する対策が重要である。また、後節で述べるその他の糞便-経口感染においても、これらに準じた対策が必要となる場合がある。糞便を念頭に置いた消毒例を表Ⅳ-22に示す。

(1)コレラ(三類)

病原体: コレラ菌(Vibrio choleraeO1)および新型コレラ菌(Vibrio cholerae O139)-ビブリオ科、グラム陰性桿
感染対策: 標準予防策および接触予防策
消毒法: 一般細菌を対象とする方法

Vibrio choleraeには多数の血清型があり、狭義のコレラはVibrio cholerae O1により発生する。Vibrio cholerae O139もコレラに類似した症状をもたらすが比較的軽症となる。感染経路は汚染された水や食品を介した経口感染であり、小腸で増殖して毒素を産生し、激しい水様性下痢を生じさせて脱水症により死亡する場合もある。日本でも輸入感染症を中心に毎年数十例程度報告されている。
コレラ菌は水中で1日、海水中で数日から3週間、食品中では室温で1~3日、冷蔵庫中で3~7日程度生存するといわれている。

コレラ菌は保菌者・感染症例の糞便に排出され、ヒトからヒトへ接触伝播による糞便-経口感染(2次感染)を起こす。吐物を介することもある。感染症例には糞便を念頭においた接触予防策を行う。
消毒の対象物は患者の糞便、吐物、血液、体液などで汚染された箇所、患者に使用した器具・物品や病室等である。消毒は一般細菌を対象とする方法により行う。消毒例は表Ⅳ-22を参照。

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(2)細菌性赤痢(三類)

病原体: 赤痢菌(Genus Genus Shigella)-腸内細菌科、グラム陰性桿菌
感染対策: 標準予防策および接触予防策
消毒法: 一般細菌を対象とする方法

赤痢菌はShigella dysenteriae(A亜群)、Shigella flexneri(B亜群)、Shigella boydii(C亜群)、Shigella sonnei(D亜群)に分類される。Shigella dysenteriaeの一部は志賀毒素を産生して激症をもたらす。感染経路は経口感染であり、大腸で潰瘍を形成し、腹痛や粘血便を症状とする。赤痢菌はサルおよびヒトが保菌するが、保菌者・感染症例の糞便に排出され、それらで汚染された水や食品を介して伝播する。日本における報告の7~8割は輸入感染症だが、国内発生例もあり、双方合わせて毎年数百例程度が報告されている。抗菌薬耐性も報告されている。

少ない菌量(千から十万個)で感染が成立し262、263)、ヒトからヒトへ接触伝播による糞便-経口感染(2次感染)を起こすことがある。感染症例には糞便を念頭においた接触予防策を行う。
消毒の対象物は患者の糞便、血液、体液などで汚染された箇所、患者に使用した器具・物品や病室等である。消毒は一般細菌を対象とする方法により行う。消毒例は表Ⅳ-22を参照。

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(3)腸管出血性大腸菌感染症(三類)264)

病原体: Escherichia coli O157など腸管出血性大腸菌-腸内細菌科、グラム陰性桿菌
感染対策: 標準予防策および接触予防策
消毒法: 一般細菌を対象とする方法

腸管出血性大腸菌はベロ毒素(またはサイトトキシン、志賀毒素)を産生する大腸菌である。大腸菌は菌体のO抗原、莢膜のK抗原、鞭毛のH抗原により多くの血清型に分類されるが、代表的な腸管出血性大腸菌はO157:H7で、またO1、O26、O111、O128、O145などの場合もある。症状は無症状、軽い下痢から粘血便、鮮血に近い便、嘔吐,腹痛まで様々であるが、重症の場合、出血性大腸炎に合併して溶血性尿毒症症候群や脳症を発症し致命的となる場合がある。腸管出血性大腸菌の多くは、家畜牛の腸管に存在する。主な感染経路はそれら家畜の糞便で汚染された食品や飲料水による経口感染である。2011年、国内では牛肉の生食が原因と考えられるO111などによる食中毒、欧州では有機スプラウト(もやしなど新芽野菜)が原因と考えられるO104による食中毒が相次いで報告された。

極めて少ない菌量(約100個)で感染が成立するので262、263)、ヒトからヒトへ接触伝播による糞便-経口感染(2次感染)を起こすことが多い。施設内での2次感染による集団発生が報告されている。感染症例には標準予防策を基本とし、失禁がある場合などには糞便を念頭においた接触予防策を行う。

消毒例は表Ⅳ-22を参照し、消毒は一般細菌を対象とする方法により行う(Ⅳ-2-1)グラム陽性菌を参照)。日本で繁用されている消毒薬や70℃の熱水は大腸菌O157:H7に有効と確認されている265)

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(4)腸チフス、パラチフス(三類)

病原体: 腸チフス菌(Salmonella enterica subsp. enterica serovar Typhi)、パラチフスA菌(Salmonella enterica subsp. enterica serovar ParatyphiA)-腸内細菌科、グラム陰性桿菌
感染対策: 標準予防策および接触予防策
消毒法: 一般細菌を対象とする方法

腸チフス菌は腸チフス、パラチフスA菌はパラチフスの原因である。感染経路は経口感染であり、腸管リンパなどで増殖し、高熱、下痢、バラ疹、敗血症などをもたらす。治癒後も菌が胆嚢に残り、慢性保菌者となることがある。菌は保菌者・感染症例の糞便、尿、胆汁に排出され、それらで汚染された水や食品を介して伝播する。日本でも輸入感染症を中心に毎年数十例程度報告されている。抗菌薬耐性も報告されている。

比較的少ない菌量(十万個)で感染が成立し266)、ヒトからヒトへ接触伝播による糞便-経口感染(2次感染)を起こすことがある。感染症例には糞便を念頭においた接触予防策を行う。
消毒の対象物は患者の糞便、尿、血液、体液などで汚染された箇所、患者に使用した器具・物品や病室等である。消毒は一般細菌を対象とする方法により行う。消毒例は表Ⅳ-22を参照。

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