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V 各種消毒薬の特性

1 低水準消毒薬

2)クロルヘキシジン

(1)クロルヘキシジングルコン酸塩1、2、7、8、12~15)

①特徴

クロルヘキシジンをグルコン酸塩とすることによって水溶性としたビグアナイド系化合物である。皮膚に対する刺激が少なく、臭気がほとんどない生体消毒薬(antiseptics)であり、適用時に殺菌力を発揮するのみならず、皮膚に残留して持続的な抗菌作用を発揮する。したがって皮膚における持続効果が期待される場合、すなわち、手術時手洗い、手術部位の皮膚、創傷部位(創傷周辺皮膚)、血管内留置カテーテル挿入部位の皮膚などにおいて優れた特性を発揮する。日本では、結膜嚢以外の粘膜への適用は禁忌であり、また結膜嚢の洗浄後も滅菌精製水での洗浄が必要とされている。
金属製品、繊維製品に対する腐食性も少なく、非生体への適用も認められているが、器具、環境などにはあまり使用されない。

②抗微生物スペクトル

グラム陽性菌、グラム陰性菌、真菌の一部、エンベロープを有するウイルスの一部に有効であるが、結核菌、多くのウイルス、芽胞には無効である。グラム陰性桿菌であるBurkholderia cepacia、セラチア、Chryseobacterium meningosepticum、Achromobacter xylosoxidansなどが抵抗性を示す場合がある。

ブドウ球菌に対するクロルヘキシジンの抗菌作用に関しては諸説がある。速効的な殺菌力においてはあまり優れていないが、持続効果や静菌力においては優れていると理解することが妥当と思われる。したがって、黄色ブドウ球菌などに対する速効的な殺菌力が必要な場合には、なるべくスクラブ製剤やアルコール製剤など、物理的な除菌作用やアルコールの殺菌作用などを付加した製剤を用いることが望ましいと思われる。(詳細は<参考>ブドウ球菌に対するクロルヘキシジンの抗菌作用を参照)

③作用機序

100mg/L未満(0.01w/v%)で静菌的に、100~500mg/L(0.01~0.05w/v%)で殺菌的に作用する。
・静菌的な濃度(100mg/L未満)では、細菌表面のリン酸基部位に吸着し、細胞壁を透過し、細胞膜透過性を障害する。その後、カリウムイオンのような低分子成分の漏出を引き起こし、また、ATPaseのような膜結合酵素を阻害する。
・殺菌的な濃度(100~500mg/L)では、細胞内に急速に侵入し、ATPや核酸を凝固し沈殿を生成する。

④適用範囲

(承認に基づく効能・効果。推奨されるものについては下線。)

0.1~0.5%クロルヘキシジングルコン酸塩液 手指・皮膚、手術部位の皮膚、医療機器
0.05%クロルヘキシジングルコン酸塩液 皮膚の創傷部位、手術室・家具・器具・物品
0.05%以下のクロルヘキシジングルコン酸塩液 結膜嚢(界面活性剤配合製剤の場合は適用不可)
0.02%クロルヘキシジングルコン酸塩液 外陰・外性器の皮膚(界面活性剤配合製剤の場合は適用不可)
4%クロルヘキシジングルコン酸塩スクラブ 手指
0.5%クロルヘキシジングルコン酸塩エタノール液 手術部位の皮膚、医療機器(金属、非金属)
1%クロルヘキシジングルコン酸塩エタノール液 手指・皮膚
0.2、0.5%クロルヘキシジングルコン酸塩エタノール擦式製剤 手指
1%クロルヘキシジングルコン酸塩エタノール擦式製剤 手指・皮膚

⑤主な副作用

皮膚に対する毒性、経口毒性は低いが、ショック、発疹・蕁麻疹等過敏症がみられることがあり、このような場合は直ちに使用を中止し適切な処置を行う。膀胱・腟・口腔などの粘膜や創傷部位に使用してショックが発現したとの報告が十数症例報告され、第24次薬効再評価(昭和60年7月30日公示:薬発第755号)において、結膜嚢以外の粘膜(膀胱・腟・口腔など)への適用や創傷、熱傷への適用の一部(広範囲、高濃度)が禁忌となった。これらのショックの例のほとんどは適正濃度を超えた0.2~1%での使用によるものであった。
なお、中枢神経、聴覚神経への適用は障害を引き起こすので禁忌である。
高濃度(0.1%以上)のクロルヘキシジングルコン酸塩が眼に混入すると角膜障害を起こす。

⑥その他の注意

  • 天然繊維や有機物に吸着されやすく、殺菌力が低下する。
  • 水道水(特に硫酸イオンを含むもの)や生理食塩水で希釈すると沈殿を起こし、殺菌力が低下する。
  • 陰イオン界面活性剤(石けん)や次亜塩素酸ナトリウムと反応して着色沈殿し、また、塩素イオンと沈殿物を生じることがある。
  • クロルヘキシジンによる着色の漂白には過炭酸ナトリウム等の酸素系漂白剤が適当である。
  • 日光により着色するので遮光容器にて保存する。
  • 創傷部位、結膜嚢に使用する場合は、滅菌済みのものを使用する。
  • 微生物汚染を受けやすいので、開封後は汚染に注意して使用する。

<参考> ブドウ球菌に対するクロルヘキシジンの抗菌作用

◆殺菌作用
クロルヘキシジンは比較的長時間接触しなければ試験管内で黄色ブドウ球菌に対して有効性を示さない、または、黄色ブドウ球菌を死滅させないと解釈されるデータが存在する15、16)。クロルヘキシジンが黄色ブドウ球菌を試験管内で短時間に殺菌するとした報告の中には、不十分な中和操作などによる過大評価と思われるものもある17)。本テキストは、クロルヘキシジン水溶液が黄色ブドウ球菌を殺菌するためには比較的長い接触時間が必要な場合が多いと解釈する。

また、クロルヘキシジンの殺菌作用に対して、MRSAの感受性がMSSAの感受性よりも低かったとする報告もあるが18)、多くの報告では両者の間に感受性の差を認めていない19~21)。クロルヘキシジンの殺菌作用に対するMRSAの低感受性を報告する研究の多くは、抗菌薬耐性と消毒薬低感受性の関連を示すものではなく、上述のような黄色ブドウ球菌全般への速効性に関する過大評価を修正するものとして理解することが妥当と思われる。

◆静菌作用
クロルヘキシジンはMRSAを含む黄色ブドウ球菌、CNSなどのグラム陽性菌に対しごく低濃度で優れた静菌作用を発揮する13)。逆性石けんやクロルヘキシジンなど消毒薬のMIC(最小発育阻止濃度)を上昇させる遺伝子がプラスミドを介して黄色ブドウ球菌に散在するという報告もあるが22)、消毒薬の実用濃度よりも非常に低い濃度における感受性の変化であるため、これらの遺伝子が重要な臨床的意義を持つとは認められていない5)

IV-2-1)-(1) ブドウ球菌を参照】

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