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V 各種消毒薬の特性

2 中水準消毒薬

1)アルコール系

(1)エタノール1~5、7、8、12~14、25)

①特徴

生体および非生体のいずれにも繁用される中水準消毒薬である。抗微生物スペクトルが広く、芽胞を除くほとんどすべての微生物に有効で、作用はおおむね速効的である。

生体消毒薬としては、ガーゼや脱脂綿に含ませ、注射部位の皮膚、手指などに塗布して適用する。非生体消毒薬としては、注射剤のアンプル、バイアルや輸液ルートの接合部など、また、聴診器、X線装置、外部モニター、床頭台、オーバーテーブルなど滑らかで固い表面のノンクリティカル器具や環境に清拭法で使用する。

使用濃度としては60~90w/w%が適当であるが、70w/w%(消毒用エタノールの濃度である76.9~81.4vol%にほぼ等しい)において一般細菌に対して最も効果が高い。ただし結核菌を含む細菌とエンベロープを有するウイルスに対して50vol%程度でも効果がある25~27)。揮発性が高いため、乾きが早く使用しやすい。
また、他のアルコール系消毒薬に比べて毒性が低い。ただし、価格に酒税相当の原価が上乗せされており、あまり経済的でない。酒税相当額が課されないよう消毒用エタノールに医薬品用香料を微量加え、経済性を改善した製品も市販されており、その効力と用法は消毒用エタノールと同様である28)
古くから用いられている消毒薬であるが、総合的にみて最も有用性の高い消毒薬のひとつである。消毒用エタノールにベンザルコニウム塩化物、クロルヘキシジンなどを添加した速乾性手指消毒薬も繁用されている。

②抗微生物スペクトル

グラム陽性菌、グラム陰性菌、結核菌、真菌、ウイルスに有効であるが、芽胞には無効である。一部の糸状菌を殺滅するには長時間の接触が必要である。エンベロープを有するウイルスを比較的短時間で不活性化するが、イソプロパノールよりも長い接触時間が必要な場合がある。HBVについては、80vol%エタノールが、11℃、2分間の接触でチンパンジーへの感染性を不活性化したという報告がある29)。HIVに対する有効性も確認されている。エンベロープのないウイルスを不活性化するには長時間の接触が必要である。

③作用機序

蛋白の変性、代謝障害、溶菌作用によるものである。

④適用範囲

(承認に基づく効能・効果。推奨されるものについては下線。)

76.9~81.4vol%エタノール(消毒用エタノール) 手指・皮膚、手術部位(手術野)の皮膚、医療機器(金属、非金属)
香料添加76.9~81.4vol%エタノール(消毒用エタノール、ユーカリ油添加) 同上

⑤主な副作用

  • 発疹等の過敏症状、皮膚への刺激症状があらわれることがあるので、このような場合は使用を中止する。
  • 粘膜や創傷部位へ使用すると刺激を生じるので、これらの部位には使用しない。

⑥その他の注意

  • 引火性があるので注意する。したがって、手術野の消毒後電気メスを用いる場合は、アルコール分が揮発していることを確認後に行う。また、室内、白衣など広範囲に散布しない。
  • 合成ゴム製品、合成樹脂製品、光学器具、鏡器具、塗装カテーテルなどにはエタノールで変質するものがある。
  • 血清、膿汁等の蛋白質を凝固させ、内部まで浸透しないことがあるので、これらを十分洗い落としてから使用する。

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(2)イソプロパノール1~5、7、8、12~14、25)

①特徴

生体および非生体のいずれにも繁用される中水準消毒薬である。抗微生物スペクトルが広く、芽胞を除くほとんどすべての微生物に有効で、作用はおおむね速効的である。

生体消毒薬としては、ガーゼや脱脂綿に含ませ、注射部位の皮膚、手指などに塗布して適用する。非生体消毒薬としては、注射剤のアンプル、バイアルや輸液ルートの接合部など、また、聴診器、X線装置、外部モニター、床頭台、オーバーテーブルなど滑らかで固い表面のノンクリティカル器具や環境に清拭法で使用する。

50~70vol%が一般的な濃度であるが、50vol%よりも70vol%のほうが効力は強い。低濃度においては同濃度のエタノールよりも効力が強い25~27)。揮発性が高いため、乾きが早く使用しやすい。
なお、手術部位の皮膚は適用範囲に含まれない。エタノールよりも脱脂作用が強く、また特異な臭気があるが、酒税相当額の課された消毒用エタノールより経済的である。

②抗微生物スペクトル

グラム陽性菌、グラム陰性菌、結核菌、真菌、ウイルスに有効であるが、芽胞には無効である。一部の糸状菌を殺滅するには長時間の接触が必要である。エンベロープを有するウイルスを比較的短時間で不活性化し、かつこれらに対しては消毒用エタノールよりも短い接触時間で有効な場合が多い。HBVについ ては、70vol%イソプロパノールが、20℃10分間の接触でチンパンジーへの感染性を不活化したという報告がある30)。HIVに対する有効性も確認されている。エンベロープのないウイルスを不活性化するには長時間の接触が必要であり、消毒用エタノールよりも長時間を要する場合がある。

③作用機序

蛋白の変性、代謝障害、溶菌作用によるものである。

④適用範囲

(承認に基づく効能・効果。推奨されるものについては下線。)

50~70vol%イソプロパノール 手指・皮膚、医療機器(金属、非金属)

⑤主な副作用

  • 発疹等の過敏症状、皮膚への刺激症状があらわれることがあるので、このような場合は使用を中止する。
  • 粘膜や創傷部位へ使用すると刺激を生じるので、これらの部位には使用しない。

⑥その他の注意

  • 引火性があるので注意する。また、室内、白衣など広範囲に散布しない。
  • 合成ゴム製品、合成樹脂製品、光学器具、鏡器具、塗装カテーテルなどにはイソプロパノールで変質するものがある。
  • 血清、膿汁等の蛋白質を凝固させ、内部まで浸透しないことがあるので、これらを十分洗い落としてから使用する。

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(3)イソプロパノール添加エタノール液7、8、26、28、31、32)

①特徴

エタノールとイソプロパノールの配合剤であり、生体および非生体のいずれにも繁用される中水準消毒薬である。抗微生物スペクトルが広く、芽胞を除くほとんどすべての微生物に有効で、作用はおおむね速効的である。市販品によりイソプロパノールとエタノールの配合比、メタノール添加の有無、アルコール総濃度が異なるが、本テキストでは20vol%イソプロパノール添加60vol%エタノール液について述べる。

生体消毒薬としては、ガーゼや脱脂綿に含ませ、注射部位の皮膚、手指などに塗布して適用する。非生体消毒薬としては、注射剤のアンプル、バイアルや輸液ルートの接合部など、また、聴診器、X線装置、外部モニター、床頭台、オーバーテーブルなど滑らかで固い表面のノンクリティカル器具や環境に清拭法で使用する。

従来はメタノール変性エタノールを原料としていたが、現在はイソプロパノールを添加することだけで酒税相当額の免除を受けることができるため、メタノールを含まない上記製剤が市販されている。誤飲を防止するための行政通知に基づき、従来より青色色素が添加されている。なお、手術部位の皮膚は適用範囲に含まれない。エタノールよりも脱脂作用が強く、またイソプロパノールの特異な臭気があるが、酒税相当額の課された消毒用エタノールより経済的である。

②抗微生物スペクトル

グラム陽性菌、グラム陰性菌、結核菌、真菌、ウイルスに有効であるが、芽胞には無効である。一部の糸状菌を殺滅するには長時間の接触が必要である。エンベロープを有するウイルスを比較的短時間で不活性化し、70vol%イソプロパノールとほぼ同等の効力を持つ。HBVについて、チンパンジー感染実験によるデータはないがHIVに対する有効性は確認されている33)。エンベロープのないウイルスを不活性化するには長時間の接触が必要であるが、消毒用エタノールとほぼ同等の効力を持つ。このように、消毒用エタノール、70vol%イソプロパノールの両者と比較して、遜色のない殺菌力を持つ26、28、31、32)

③作用機序

蛋白の変性、代謝障害、溶菌作用によるものである。

④適用範囲

(承認に基づく効能・効果。推奨されるものについては下線。)

原液(局方エタノール60w/w%+局方イソプロパノール18w/w%、つまり20vol%イソプロパノール添加60vol%エタノール液)* 手指・皮膚、医療機器(金属、非金属)

*局方エタノールは約95vol%エタノールである。

⑤主な副作用

  • 発疹などの過敏症状、皮膚への刺激症状があらわれることがあるので、このような場合は使用を中止する。
  • 粘膜や創傷部位へ使用すると刺激を生じるので、これらの部位には使用しない。

⑥その他の注意

  • 引火性があるので注意する。また、室内、白衣など広範囲に散布しない。
  • 合成ゴム製品、合成樹脂製品、光学器具、鏡器具、塗装カテーテルなどには本剤で変色するものがある。
  • 血清、膿汁などの蛋白質を凝固させ、内部まで浸透しないことがあるので、これらを十分洗い落としてから使用する。

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(4)アルコールを基剤とする消毒薬2、7、8、25)

消毒薬を水溶液ではなくエタノール液とすることで、消毒薬に速乾性を持たせた製剤が市販されている。このようなアルコールを基剤とする消毒薬としては以下のようなものがある。

0.5%クロルヘキシジングルコン酸塩エタノール液(手術部位の皮膚、医療器具)
1%クロルヘキシジングルコン酸塩エタノール液(手指・皮膚)
0.2%、0.5%クロルヘキシジングルコン酸塩エタノール擦式製剤(手指)
1%クロルヘキシジングルコン酸塩エタノール擦式製剤(手指・皮膚)
0.2%ベンザルコニウム塩化物エタノール擦式製剤(手指)
10%ポビドンヨードエタノール液(手術部位の皮膚)
0.5%ポビドンヨードエタノール擦式製剤(手指)

これらの消毒薬には、50~83vol%のエタノールが含まれており、したがって有効成分として配合されている殺菌成分の殺菌作用のみならず、エタノールによる殺菌作用も期待することができる25~27)。エタノールは速効的に作用し抗微生物スペクトルも広いので、その作用だけでも十分な効力が得られる場合が多いと思われ、配合されている殺菌成分は速効的な殺菌力の強化というよりもむしろ持続効果などの効果を目的として配合されていると考えられる。

これらのアルコールを基剤とする消毒薬は、発疹等の過敏症状、皮膚への刺激症状、引火性、消毒対象物の変色などに留意して用いる。また、粘膜や創傷部位へ使用すると刺激を生じるので、これらの部位には使用しない。

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