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V 各種消毒薬の特性

2 中水準消毒薬

2)ヨードホール・ヨード系

(1)ポビドンヨード1、2、7、8、12~14、34)

①特徴

広い抗微生物スペクトルを持ち、生体への刺激性が低く、比較的副作用も少ない優れた生体消毒薬である。手術部位の皮膚や皮膚の創傷部位をはじめ、口腔、腟などの粘膜にも適用が可能で、HIVやHBVにも有効である。皮膚に適用し被膜を形成させた場合、持続的な殺菌効果を発揮するが、比較的短時間のうちに揮発し失活するため、持続効果においてはクロルヘキシジンよりも劣る。この被膜は褐色であり、さまざまな理由によりハイポアルコールを用いて脱色する場合があるが、脱色は化学的な不活性化であるので、この場合には持続効果を期待できない。

試験管内においてはむしろ低濃度(0.1%付近)において速効的な殺菌力を発揮するが、有機物によって大きく不活性化されるため、臨床においては7.5~10%の製剤が繁用されている。繁用されている10%水溶液製剤はあまり速効的ではなく、黄色ブドウ球菌や腸球菌を殺滅するには数分を要するため35)、塗布後乾燥まで十分に時間を取る必要がある。ポビドンヨードの速効性を示した報告の多くは低濃度における実験であるため、その解釈は慎重に行う必要がある。米国においては低濃度のポビドンヨードを非生体に用いることが認可されているが、高濃度のポビドンヨードを非生体に用いることは適切でないとされている5、36)

②抗微生物スペクトル

グラム陽性菌、グラム陰性菌、結核菌、真菌、ウイルス、クロストリジウム属など一部の芽胞に有効であるが、バチルス属などの芽胞には無効である。HBVについては低濃度における10分間20℃の接触でチンパンジーへの感染性を不活性化したという報告がある30)。市販ポビドンヨード液中で、製造設備から混入したBurkholderia cepaciaの菌塊が生存し続けたという報告もある37)

③作用機序

ポビドンヨードはヨウ素をキャリアであるポリビニルピロリドン(PVP)に結合させた水溶性の複合体である。ポビドンヨード1g中に含まれる有効ヨウ素は100mgであるので、例えば10%ポビドンヨード液は有効ヨウ素1%(10,000ppm:チオ硫酸ナトリウム定量)の液である。ポビドンヨードは水溶液中で平衡状態を保ち、水中の遊離ヨウ素濃度が減少するにつれて、徐々に遊離ヨウ素を放出する。この遊離ヨウ素が殺菌作用を発揮するため、殺菌力は遊離ヨウ素濃度が高いほど強くなる。10%ポビドンヨード液中での遊離ヨウ素濃度は約1ppmであるが、0.1%付近の液では、キャリアの保持力が最も弱くなり、遊離ヨウ素濃度が最大(約25ppm)となる。さらに希釈すると、遊離ヨウ素濃度は低下し、0.001%の水溶液では約1ppmとなる(表Ⅴ-1、図Ⅴ-1)。

表V-1 有効ヨウ素1%のポビドンヨード2)(10%ポビドンヨード液)

希釈 有効ヨウ素
(チオ硫酸ナトリウムで定量)
遊離ヨウ素
原液 10,000ppm 1ppm
1/10 1,000ppm 10ppm
1/100 100ppm 25ppm
1/1,000 10ppm 8~9ppm
1/10,000 1ppm 1ppm

図Ⅴ-1 ヨードホールの遊離ヨウ素濃度(文献2より改変)

図Ⅴ-1 ヨードホールの遊離ヨウ素濃度(文献2より改変)

ヨウ素の作用機序に関する仮説は以下のとおりである2)

  1. アミノ酸、ヌクレオチドのN-H結合に作用してN-I誘導体を作り、重要な水素結合を阻害することにより蛋白構造を障害する。
  2. アミノ酸のS-H群を酸化して、蛋白合成の重要な要素である2硫化(S-S)結合による架橋を阻害する。
  3. アミノ酸のフェノール群に対し、1または2個のヨウ素誘導体を作り、そのオルト位置に結合したヨウ素により、フェノールの-OH基による結合を阻害する。
  4. 不飽和脂肪酸のC=C結合に作用して、脂質を変成させる。

④適用範囲

(承認に基づく効能・効果。推奨されるものについては下線。)

10%ポビドンヨード液 手術部位の皮膚、手術部位の粘膜、皮膚・粘膜の創傷部位、熱傷皮膚面、感染皮膚面
7.5%ポビドンヨードスクラブ 手指・皮膚、手術部位の皮膚
10%ポビドンヨードエタノール液 手術部位の皮膚
0.5%ポビドンヨードエタノール擦式製剤 手指
10%ポビドンヨードゲル 皮膚・粘膜の創傷部位、熱傷皮膚面
5%ポビドンヨードクリーム 外陰、外陰周辺、腟
7%ポビドンヨードガーグル 口腔創傷、口腔内

⑤主な副作用

熱傷部位、腟、口腔粘膜などでは吸収されやすいために、長期間または広範囲に使用すると、血中ヨウ素濃度が上昇し、甲状腺代謝異常などの副作用が現れることがある。したがって、重症の熱傷患者、甲状腺機能に異常のある患者などには慎重に使用する。胎児や乳汁への移行も報告されているため、妊婦や授乳中の婦人に長期にわたり広範囲に使用することは避ける。また、新生児では皮膚からもよく吸収されるので、長期間または広範囲に使用することは望ましくない。腹腔、胸腔など体腔には使用しない。

大量かつ長時間の接触で皮膚変色、接触皮膚炎があらわれることがある。また、過敏症(発疹)があらわれた場合には使用を中止する。

ショック、アナフィラキシー様症状(呼吸困難、潮紅、蕁麻しん等)があらわれることがあるので、観察を十分に行い異常が認められた場合には直ちに使用を中止し、適切な処置を行う。

⑥その他の注意

  • 石けん類によって殺菌作用が弱まる。
  • 電気的な絶縁性を持っているので、電気メスを使用する場合には、本剤が対極板と皮膚の間に入らないように注意する。
  • 眼に入らないようにする。

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(2)ヨードチンキ2、7、8、12~14、34)

①特徴

ヨードチンキはヨウ素(I)にヨウ化カリウム(KI)を加えて可溶化しエタノール液とした製剤で、5~10倍希釈して使用する(希ヨードチンキは原液または2~5倍希釈で使用する)。ヨードチンキは速効的な殺菌力と広い抗微生物スペクトルを持ち、さらに適用後皮膚にヨウ素の被膜を形成して持続効果をもたらす。採血時の皮膚消毒において2%ヨードチンキ使用群は10%ポビドンヨード液使用群よりも菌偽陽性率が低い(2.4% vs 3.8%、p=0.01)、つまり皮膚表面細菌による血液検体のコンタミネーションが少ないとの報告があり38)、また、経静脈栄養カテーテルの挿入部位やルート接合部の消毒においても0.5~2%ヨードチンキ使用時は10%ポビドンヨード液使用時と比較して敗血症発生率が低かった(0.25~0.28 vs 0.58/catheter year)と報告されている39)。ヨードチンキは健常皮膚のほか創傷、潰瘍、口腔粘膜などにも使用されるが、刺激性があり皮膚炎の原因ともなる。口腔内専用のヨウ素製剤として複方ヨード・グリセリン(ルゴール液)がある。

②抗微生物スペクトル

グラム陽性菌、グラム陰性菌、結核菌、真菌、一部の芽胞に有効であるが、一部の芽胞には無効である。HBVについてチンパンジー感染実験によるデータはない。

③作用機序

ヨードチンキ(および希ヨードチンキ)においては、もっぱらポビドンヨードと同様に遊離ヨウ素が殺菌作用を発揮し、また希釈濃度によりエタノール成分も多少の殺菌作用を追加していると思われる。

④適用範囲

(承認に基づく効能・効果。推奨されるものについては下線。)

ヨードチンキ ④適用範囲

⑤主な副作用

ヨード過敏症の患者には使用しない。過敏症(ヨード疹)、皮膚に刺激症状を起こすことがある。このような症状があらわれた場合には使用を中止する。また、同一部位に反復使用した場合には、表皮の剥離を伴う急性の皮膚炎を起こすことがある。

⑥その他の注意

  • 眼に入らないように注意する。入った場合には水でよく洗い流すこと。
  • 刺激性があるので粘膜、創傷面または炎症部位に長期または広範囲に使用しない。
  • 深い創傷に使用する場合の希釈液としては注射用水か滅菌精製水を用いる。
  • 口腔内に使用するときには患部を乾燥させて塗布する。
  • エタノールを含有するので火気に注意する。

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