Y's Square:病院感染、院内感染対策学術情報 > 感染対策学術情報 > 消毒薬テキスト(Y’s Text) > V 各種消毒薬の特性 > 4)フェノール系
Y’s Text
V 各種消毒薬の特性

2 中水準消毒薬

4)フェノール系

(1)クレゾール1~5、7、8、55)

①特徴

クレゾールはタールから得られるo、m、p-クレゾールの混合物からなるフェノール系の消毒薬である。水に溶けにくいため石けん液に可溶化し、クレゾール石ケン液として用いる。結核菌に有効であるため中水準消毒薬に分類されるが、同じ中水準消毒薬であるフェノールより低毒性でかつ低濃度で微生物を殺 滅することができるため広く公衆衛生において使用されてきた。一般細菌を対象とする病院環境消毒薬として逆性石けんなどと比較した場合、有機物による不活性化が少ないという長所があるが、特異な臭気があること、高濃度液の付着により化学熱傷を生じることなどの短所があるため、近年、病院環境消毒にはクレゾール石ケン液よりも逆性石けんや両性界面活性剤などの消毒薬が選択されるようになった。人体適用も認められているが、生体消毒薬としてクレゾールを選択することが適切な場合はほとんどない。水質汚濁防止法、下水道法によりフェノール類として5ppmの排水規制が定められている。以上のことから病院では、もっぱら排泄物の消毒や特に結核菌の消毒が必要な場合の環境消毒などに限定して用いるのが適切である。

②抗微生物スペクトル

グラム陽性菌、グラム陰性菌、結核菌、真菌、一部のウイルスに有効であるが、一部のウイルスと芽胞には無効である。糸状菌に対しては長時間の接触が必要な場合がある。エンベロープのないウイルスであるコクサッキーB4型、エコーウイルス11型、ポリオウイルス1型などには無効である56)

③作用機序

フェノール類は、高濃度において細胞の原形質に毒性を示す。つまり、浸透して細胞壁を破壊し、細胞質内の蛋白を沈殿させる。また、低濃度において酵素活性の不活性化、酵素の漏出を起こし作用する。

④適用範囲

(承認に基づく効能・効果。推奨されるものについては下線。)
クレゾール石ケン液(クレゾールを50vol%含有)を、クレゾールとして下記の濃度に希釈して使用。

1.5%クレゾール石ケン液(約30倍希釈) 排泄物
0.5~1%クレゾール石ケン液(50~100倍希釈) 手指・皮膚、手術部位の皮膚、医療機器、手術室・病室・家具・器具・物品
0.1%クレゾール石ケン液(500倍希釈) 腟洗浄

⑤副作用

紅斑などの過敏症状があらわれることがあるので、このような場合には使用を中止する。新生児室の消毒にクレゾール類似化合物であるフェノールを使用したところ、新生児に高ビリルビン血症が生じたという報告があるため、新生児室への使用は避ける。また、損傷皮膚などから吸収されやすいため、損傷皮膚に使用してはならない。なお、高濃度のクレゾールが付着すると化学熱傷を 生じるので取り扱い時には手袋、保護メガネを着用することが望ましい。

⑥その他の注意

  • 眼に入らないように注意する。入った場合には水でよく洗い流す。
  • 原液が付着した場合は直ちに拭き取り石けん水と水でよく洗い流す。
  • 希釈する水にアルカリ土類金属塩、重金属塩、第二鉄塩、酸類が存在する場合変化することがある。
  • クレゾール石ケン液を常水で希釈すると次第に混濁して沈殿することがあるが、このような場合には上澄み液を使用する。

▲TOPへ戻る

(2)フェノール1~5、7、8、55)

①特徴

1865年Listerが初めて無菌的手術を成功させたときに使用した消毒薬であり、石炭酸ともいう。欧米では数多くのフェノール誘導体が病院で消毒薬として使用されているが、日本ではフェノールそのものとクレゾールのみが使用されて いる。フェノールは結核菌に有効であるため中水準消毒薬に分類されるが、同じ中水準消毒薬であるクレゾールのほうが低毒性でかつ低濃度で微生物を殺滅することができるため、あまり繁用されていない。一般細菌を対象とする病院環境消毒薬として逆性石けんなどと比較した場合、有機物による不活性化が少ないという長所があるが、特異な臭気があること、高濃度液の付着により化学熱傷を生じることなどの短所がある。人体適用も認められているが、麻しんの鎮痒など皮膚科的な適用以外には、生体消毒薬としてフェノールを選択することが適切な場合はほとんどない。水質汚濁防止法、下水道法によりフェノール類として5ppmの排水規制が定められている。以上のことから病院での使用が適切なのは排泄物の消毒などの場合に限定されるが、古くから効力の確認されている消毒薬であるため消毒薬評価上の指標として重要な意味を持つ。

②抗微生物スペクトル

グラム陽性菌、グラム陰性菌、結核菌、真菌、一部のウイルスに有効であるが、一部のウイルスと芽胞には無効である。糸状菌に対しては長時間の接触が必要な場合がある。5%フェノール液はエンベロープのないウイルスであるコクサッキーB1型、エコーウイルス6型、ポリオウイルス1型、アデノウイルス2型を、1~2%フェノール液はエンベロープのある単純ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルス、インフルエンザウイルスを、10分間で殺滅するとの報告がある57)

③作用機序

フェノール類は、高濃度において細胞の原形質に毒性を示す。つまり、浸透して細胞壁を破壊し、細胞質内の蛋白を沈殿させる。また、低濃度において酵素活性の不活性化、酵素の漏出を起こし作用する。

④適用範囲

(承認に基づく効能・効果。推奨されるものについては下線。)

製剤としてフェノール(98%以上)、消毒用フェノール(95%以上)、液状フェノール(88%以上)、フェノール水(1.8~2.3w/v%)、消毒用フェノール水(2.8~3.3w/v%)がある。フェノール、液状フェノールは以下のように希釈して使用。

3~5%フェノール液 排泄物
2~5%フェノール液 手術室・病室・家具・器具・物品
1.5~2%フェノール液 手指・皮膚
消毒用フェノール水(2.8~3.3w/v%) 医療機器、手術室・病室・家具・器具・物品、排泄物
フェノール水(1.8~2.3w/v%) 手指・皮膚、医療機器、手術室・病室・家具・器具・物品

⑤主な副作用

発疹などの過敏症状があらわれることがあるので、このような場合には使用を中止する。新生児室の消毒にフェノールを使用したところ、新生児に高ビリルビン血症が生じたという報告があるため、新生児室への使用は避ける。また、損傷皮膚から吸収されやすいため、損傷皮膚に使用してはならない。なお、高濃度のフェノールが付着すると化学熱傷を生じるので取り扱い時には手袋、保護メガネを着用することが望ましい。

⑥その他の注意

  • 眼に入らないように注意する。入った場合には水でよく洗い流す。
  • 高濃度のフェノールが付着した場合は直ちに拭き取りエタノールまたは多量の水でよく洗い流す。
  • 刺激が強いので、粘膜には使用しない
  • 金属器具を長時間浸漬する必要がある場合には、腐食を防止するために0.5~1.0%の亜硝酸ナトリウムを添加する。
  • 合成ゴム製品、合成樹脂製品、光学器具、鏡器具、塗装カテーテルなどは変質するものがあるので、このような器具は長時間浸漬しない。
  • ▲TOPへ戻る

Prev | Return | Next

関連サイト